
季節のテーマ
“逆タイパ”生活で心身をリラックス!自律神経のバランスを整える時間の使い方
監修/精神科医 Tomy先生

概要・目次※クリックで移動できます。
タイパ重視生活が引き起こす脳の疲れ
次のような行動に心当たりはありませんか?
いずれもタイパを重視する人に多く見られる行動の一例です。タイパは日本語で「時間対効果」を意味します。費やした時間に対して得られる効果や満足度を表しています。多忙な毎日の中で多様なツールを使いこなし、仕事を効率化して生産性を高めることは大切です。
一方で、スマートフォンが日常生活の必需品の一つとなった昨今では、仕事以外でも常にインターネットやSNSにアクセスし、効率よく情報を収集しようとする人が少なくありません。
結果的に、次のようなことが起こりやすくなります。
インターネットがなかった時代に比べると、現代は脳に詰め込む情報量の密度がはるかに高くなっています。その分、脳が疲弊しやすい状態にあると考えられます。近年はスマートフォンの使い過ぎやマルチタスクによる情報過多が引き起こす「脳過労(脳疲労)」も注目されています。
●こちらの記事もご参照ください
原因はスマートフォンの使い過ぎ!?「脳過労」を防ぐデジタルデトックス術別ウィンドウで開きます
自律神経のバランスが乱れる理由
タイパ重視の生活は、自律神経の働きにも影響するおそれがあります。自律神経は意思とは関係なく自動的に働いて、心臓や血管の動き、呼吸・消化の働き、体温調節といった全身の機能を調整する役割を担っています。例えば、暑い時に汗をかいて体温を下げるのも、自律神経の働きの一つです。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があります。
【交感神経】
仕事に向かう、トラブルに対処する、といった活動的な時に優位になる。緊張や興奮により、脈拍が速くなる、呼吸が浅く速くなる、血管が収縮して血圧が上がる、といった体の変化が起こります。
【副交感神経】
休息時や睡眠時、入浴時などリラックスしている時に優位になる。脈拍や呼吸がゆっくりになる、血管が拡張して血圧が下がる、といった体の変化により、心身を休息へと導きます。
このように相反する働きを持つ交感神経と副交感神経が互いにバランスを取り合うことで、体は最適な状態に保たれています。朝起きると交感神経が優位になり、午前中は活動モードに入ります。午後から夕方にかけては次第に副交感神経が優位になって休息モードに入り、夜はリラックスした状態で睡眠に入るというリズムも生まれます。
しかし、常にせわしく動き回るタイパ重視の生活では、脳の緊張や興奮が長く続きます。そのため交感神経が過剰に働き、副交感神経の働きが弱くなるおそれがあります。つまり、本来は副交感神経が優位になり、リラックスするはずの時間に十分休めない状態になってしまうのです。
こうした自律神経のバランスの乱れは、次のような不調の要因となる場合があります。
■身体面
■精神面
スマートフォンに触れない時間をつくる
寝ても疲れが取れない、以前に比べてせっかちになったなど、心身の不調や自分自身の変化を感じるなら、タイパを重視し過ぎる生活になっていないか振り返ってみましょう。まず見直したいのが、スマートフォンとの付き合い方です。
一日の中でどのくらいスマートフォンを使っているのか、ノートやスケジュール帳に書き出してみましょう。使用時間を客観的に把握すると、タイパ重視のはずがかえって時間を無駄遣いしているなど、反省すべき点が見えやすくなります。
スマートフォンの使い過ぎを自覚したら、スマートフォンから離れる時間を設けましょう。サウナや銭湯に行く、シャワーを浴びてぼーっとする、好きな音楽を聴くなど、自分がリラックスできる選択肢をいくつか持ち、ポジティブに「スマートフォンに触れない」時間を楽しむようにすると習慣化しやすくなります。
また、1泊2日程度の旅行が可能なら、旅先ではあえて何の予定も立てず、宿泊施設に”おこもり”するのも、タイパ重視生活のリセット効果が期待できます。
滞在中は次のような過ごし方を意識してみましょう。
こうしたリゾート感覚の休日を過ごすと、常にタイパを求めて情報収集し続けるせわしさから解放され、心身ともにリフレッシュできる可能性が高くなります。
“今”に集中する時間を持つ
一方、ただぼーっと過ごしている時でも、いつのまにかあれこれ考えてしまう人もいるかもしれません。考え過ぎると、「将来の自分はどうなるのだろう」「お金をやりくりできなくなったらどうしよう」「どうして自分は生まれてきたのだろう」などと、答えの出ない心配ごとや不安に駆られやすくなります。この原因の多くは、「”今”に集中していない」ことにあります。「頭がお暇」になっているせいで、つい余計なことを考えてしまう状態だともいえます。
不安や悩みといったネガティブな思考は、頭が暇になった時に浮かびやすくなるものです。ストレスの大元はこうしたネガティブ思考にあります。不安が不安を呼び、抑うつ状態などのメンタル不調を招く要因となっていきます。
そこで取り入れたいのが、タイパ重視に逆行する”逆タイパ”生活です。「今のことに集中する」、すなわち「頭を暇にしない」ことが大きな秘訣となります。スマートフォンで次から次へとSNSや動画にアクセスしている時は一見、頭が暇ではない状態に思えるかもしれません。しかし、一つのことに集中できない状態にあることは間違いないでしょう。頭を暇にしないことの本質は、無心になることにあります。今のことに集中することが、脳の疲れやストレスの解消につながります。
例えば家の中をすみずみまできれいにすると目標を決めて丁寧に掃除するのも、頭を暇にしない方法の一つです。しかし掃除に飽きれば、また別の考えがいろいろ浮かんでくる可能性があります。そこで、集中力が途切れたと思ったら、散歩に出かけるなど「行動」と「環境」を変えてみましょう。気分が切り替わり、「景色がきれいだな」「風が心地よいな」と目の前のことに集中し、無心になりやすくなります。
心身の緊張を和らげる過ごし方のポイント
タイパ重視生活では前述のとおり、交感神経の働きが過剰になり、「本来はリラックスすべきなのに、リラックスできない」状態になっています。そこで取り入れたいのが、意識的に心身の緊張を和らげる過ごし方です。
ポイントは「五感」です。次のように五感を心地よく刺激すると副交感神経が優位になり、リラックスモードに入りやすくなります。
- ■視覚 例)きれいな景色や癒やされる写真などを見る
- ■聴覚 例)好きな音楽や心地よい自然の音などを聴く
- ■触覚 例)親しい人とのハグやマッサージなどで人肌に触れる、ストレッチをする、ぬるめのお湯につかる
- ■味覚 例)美味しいものを味わう、水やお茶、コーヒー、紅茶などを飲む
- ■嗅覚 例)花や精油などの好きな香りを嗅ぐ
ゆっくり鼻から息を吸って、ゆっくり口から息を吐く呼吸法は、副交感神経を優位にしてリラックス状態に導く効果が期待できます。呼吸に集中することで、無心になりやすくなるメリットもあります。
心身を健やかに保つセルフケアの一つとして、時間の使い方を少しスピードダウンして、今のことに集中する時間を増やしていきましょう。ただし、過度の疲れやストレスなどで仕事や日常生活に支障が出る場合は、なるべく早く心療内科や精神科を受診することが大切です。
また、頭痛や肩こりで内科や脳神経内科、整形外科を受診しても異常が見つからない、でもなかなか治らなくてつらい場合は、うつ病などの精神疾患が隠れている可能性があります。こうした心配な症状がある時も、心療内科や精神科で相談してみるとよいでしょう。
監修者プロフィール
精神科医 Tomy先生
【精神科医 Tomy(せいしんかいとみー)先生プロフィール】
名古屋大学医学部卒業。医師免許取得後、名古屋大学精神科医局入局。日本精神神経学会専門医。精神保健指定医。X(旧Twitter)のフォロワー数39.5万超、テレビ・ラジオなどマスコミ出演多数。著書『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)をはじめとする「1秒シリーズ」のほか、近著に『うつ未満。「大丈夫」と言えない日の相談室』(秀和システム新社)。













短時間で効率よく満足感を得たい!こうした時代のニーズに伴って重視されているのが「タイムパフォーマンス(タイパ)」です。しかしタイパを重視すると、どうしても生活がせわしなくなります。自律神経のバランスを崩し、心身の不調を招くおそれもあります。オンとオフのメリハリをつけ、あえてゆっくり過ごすことで自律神経のバランスを整える”逆タイパ”生活のコツを、精神科医Tomy先生に伺いました。