涼しいオフィスにずっといるのに食欲がなくて、いつもグッタリ。夏バテって、暑いからバテるんじゃないの?
いまどきの夏バテはやや複雑
かつて、夏バテといえば暑さで体力を消耗し、食欲が落ちてグッタリする状態をいいました。でも、いまどきの夏バテは同じグッタリでも、その原因は昔のものとは違うことが。しかも、人によって原因は様々。自分がどうして夏バテしているかを知らないと、まちがった対策でさらに体調を崩してしまうこともあります。現代ならではの夏バテについて知り、しっかり対応しましょう。
自律神経が乱れる「冷房バテ」
人の体は「暑熱順化」といって、徐々に暑さに慣れていくようにできています。かつては3月~7月頃にかけて、少しずつ体が暑さに慣れ、夏を迎えていました。ところが最近は気候の変動もあり、まだ暑さに体が慣れない5月くらいで猛暑日になることも。
しかも猛暑ゆえに、電車やお店、オフィスでは、かなり冷房の設定温度が低めに。屋内は寒いほどなのに、外に出れば激烈な暑さ。気温差の大きい屋内と屋外を一日に何度も行き来することで、自律神経が乱れ、内臓の働きが鈍り、疲れがたまりやすくなってしまうのです。
また、屋内と屋外の行き来はなくても、冷房の効いた屋内に一日中いるという人も問題。体が冷えきって血行が悪くなり、やはり内臓の働きが落ちたり、肩こりなどを引き起こしがちです。屋内にいるときは、羽織り物や膝掛けなどで冷えすぎないようにすることが大切です。
冷たい食べ物で「食冷えバテ」
キンキンに冷えたビールや、氷たっぷりのジュースにアイス、かき氷など、夏になるとつい手が伸びてしまう冷たい食べ物や飲み物。炎天下では涼が取れ、ホッとするかもしれません。でも、現代のように冷房漬けの人たちがこうした食べ物ばかり食べていると、胃腸が冷えすぎて機能が低下し、胃もたれや下痢を起こすことにも。暑い夏でも体のためには、冷えた飲食物は避けたほうがベターです。常温の食べ物や温かい汁物などを取り、内臓を冷やさないようにしてください。
それ「いまどき夏バテ」かも
夏場、どんな過ごし方をしていますか? また、夏にこんな症状が増えることはありませんか? チェックがつく項目が多いほど「いまどき夏バテ」にかかっている可能性が。また、チェックがついた項目で、どのタイプの夏バテかがわかります。
- 1 屋外と屋内の出入りが日中に3回以上ある
- 2 エアコンの設定は25℃以下である
- 3 夜、なかなか眠れない
- 4 一日の大半を、冷房が効いた場所にいる
- 5 イライラしがち
- 6 生理痛がひどくなる
- 7 頭痛や肩こり、むくみがひどくなる
- 8 お腹を下しがち
- 9 温かい食べ物より、そうめんなどの冷たいものを食べることが多い
- 10 飲み物は、ほとんど冷たいものを飲む
1、2、3、4、5…冷房バテ
6、7、8…冷房バテ、食冷えバテ
9、10…食冷えバテ
暑い屋外と寒い屋内の出入りが多いと、自律神経が乱れます。その結果、夜なかなか寝つけなかったり、ホルモンバランスが崩れて生理痛やイライラがひどくなることも。また、ずっと寒い屋内にいると血行が悪くなり、肩がこったりむくんだりします。以下のような点に注意し、くれぐれも体や内臓を冷やしすぎないよう心がけてください。
薄着すぎるのは禁物
猛暑からつい薄着をしがちですが、一日のほとんどを過ごすのが冷房の効いた屋内や電車内である場合、体を冷やしすぎている恐れがあります。すぐに羽織れるカーディガン等を常備して。室内での服装は、春物、秋物くらいの感じに。
また、オフィスで大半を過ごす人は腹巻きやレッグウォーマー、リストウォーマーなどを使っても。デスク下に湯たんぽを置いておくのもオススメです。
夏でもしっかり湯船に浸かる
夏の入浴はシャワーで済ませがちですが、夏もしっかり湯船に浸かることが大切。屋外が暑いため自覚できない人も多いのですが、体は冷房で冷えきっていたりするのです。ただし、40℃を超える熱い湯に浸かると交感神経が優位になり、寝つきにくくなってしまいます。38℃程度のぬるめの湯に最低10分、できれば30分くらい浸かると副交感神経が優位になってリラックス。自律神経のバランスが整い、心身が元気になります。
寝る前は明かりを暗めに
寝る直前まで強い光を浴びていると、自律神経のバランスが崩れてしまいます。強い光には、自然な眠りへと誘う働きをもつメラトニンの分泌を抑える作用も。寝る一時間前くらいにはパソコンやスマホの作業は終え、部屋の明かりを暗めに。ブルーライトをカットする眼鏡や、スマホのブルーライト軽減モードなどを使っても。明かりを調節することで自律神経が整い、疲れが取れやすくなります。
味噌汁はパーフェクトドリンク
夏場のランチは、おにぎりやサンドイッチ、サラダだけという人も多いかもしれません。でも、一日中冷房漬けという人は、夏でもランチには温かい汁物を。特に味噌汁は、味噌やワカメなどから、汗で流れがちな塩分やミネラルも取れるパーフェクトドリンク。アサリやシジミなど貝類が入ったものなら、肝機能を高めるタウリンも豊富。弱った内臓を元気にしてくれます。
体を温める食材を
ビールや冷たい飲み物がおいしい時期ですが、それを飲むのはお店ならテラス席など、屋外に。冷房の効いた屋内ではホットのジンジャーティーなど、体を温める飲み物を。
また調味料は、砂糖なら黒砂糖、酢なら黒酢、塩なら天然塩がオススメ。精製されていないものほどビタミン、アミノ酸、ミネラルを豊富に含むため、代謝が上がり、体を温めてくれるからです。
トマトやきゅうりなどの夏野菜は、暑い時期に体にこもった熱を逃がす作用をもつ優れものですが、冷房がガンガンに効いた場所で食べると体が冷えすぎてしまうことも。食べるときは、火を通した温かい料理にしたり、体を温める効果のある天然塩をかけたりするとよいでしょう。
また、夏場は水分補給が大切ですが、取りすぎも問題。水には熱を奪う性質があり、冷えの原因にもなるので、適正量を心がけて。
スタミナ=肉ではない
食冷えバテなどで胃腸が弱っているときに、スタミナをつけようと、脂たっぷりの肉や鰻を食べると、よけいに胃腸に負担がかかり、逆効果です。疲労回復効果のあるビタミンB1は、豚肉に豊富とよく言われますが、ビタミンB1は、玄米やタイ、カツオ、マグロなどの魚にも入っています。豆類にも豊富なので、枝豆などもオススメ。
また、タマネギ、ニンニク、ネギなどにはアリシンという成分が含まれますが、アリシンがビタミンB1と結合すると体内への吸収がよくなり、疲労回復効果が高まります。ニンニクやネギなどを上記の食材に合わせると、スタミナアップに効果的です。
【石原新菜(いしはら にいな)先生プロフィール】
イシハラクリニック副院長。日本内科学会会員。
帝京大学医学部卒業。食事療法等も駆使した幅広いアプローチで、種々の病気の治療にあたっている。特に、冷えのもたらす症状やその対策に精通し、講演やテレビ・ラジオ等でも体を温めることの重要性を説いている。著書に、『「体を温める」と子どもは病気にならない』(PHP研究所)、『1週間で体が変わる「温め美人」生活』(三笠書房)、『やせる、不調が消える 読む 冷えとり』(主婦の友社)等多数。
冷えによって夏バテしていることもあるのね。暑さ対策だけでなく、冷え対策もしっかりしなくちゃ。