????

特集(季節のテーマ)

暑さ、ストレス、働きすぎ……自律神経の酷使による「脳のオーバーヒート」にご用心!

印刷する

監修/梶本 修身先生(東京疲労・睡眠クリニック院長)

だんだんと気温が高くなるこれからの時期は熱中症が心配ですが、実は体だけではなく、脳も熱を持つことをご存じでしょうか。気温による影響に加えて、集中して頭を使う時や、ストレスがかかる時などは、脳が「オーバーヒート」して、のぼせや疲労などにつながりやすくなるのです。脳のオーバーヒートの原因や予防法について、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生に伺いました。

暑さで脳にも熱がこもり、「オーバーヒート」の原因に

暑さで脳にも熱がこもり、「オーバーヒート」の原因に

体を動かすと、全身がポカポカと温かくなるのを感じます。これは、筋肉が熱を産生するからです。しかし、熱を発するのは筋肉だけではありません。実は体の中で最も活発に動き、最も発熱しやすい部位は「脳」です。

脳は、自律神経を通して、筋肉や臓器など体内のすべての器官の動きをコントロールする司令塔です。自律神経の働きは生命活動の維持に不可欠なため、休息することなく24時間365日働き続け、常に発熱している状態です。自律神経に負荷がかかれば、それだけ脳の発熱量も増えます。

しかも、頭蓋骨の中で大切に守られている脳は、外気にさらして熱を放散させることができません。特に、視床下部と前帯状回にある自律神経中枢は、鼻腔の奥に位置し、脳の深部にあります。熱を冷ますためには、熱中症にかかった時のように首やわきの太い血管を冷やして冷たい血液を循環させるか、あるいは鼻から冷たい空気を吸い込むしかありません。発熱が抑えきれないと、頭の中に熱がこもってしまい、脳が疲れて「オーバーヒート」を起こし、のぼせや疲労感、頭痛などが生じます。

足底腱膜

自律神経の負荷を増やし、脳を疲れさせてしまう原因は、大きく分けて二つあります。一つは、環境の要因により、脳の発熱を抑えられない場合です。これからの季節のように暑くなると、体温調節のために自律神経が酷使されるため、脳の温度が上がりやすくなります。さらに、コロナ禍の今は、感染予防のためのマスクが手放せないことから、マスクの中で温まった湿気の多い空気を吸ってしまうので、脳に熱がこもったまま冷えにくくなります。脳がオーバーヒートを起こしやすい環境にあるといえるでしょう。

もう一つは、自律神経中枢の消耗です。悩みや不安による精神的なストレスや、過労や肉体疲労による身体的なストレスが増すと、自律神経中枢の負荷が大きくなることから、脳が発熱しやすくなります。脳は体のすべての器官の動きを司っているので、脳がオーバーヒートして働きが鈍くなると、体内のコントロールが乱れます。体温や心拍、呼吸、血圧の調節などがうまくいかなくなれば、体のあらゆる臓器の働きが低下するため、頭痛や発熱、だるさ、めまいなど、体に不調が表れます。集中力の低下にもつながり、パフォーマンスが低下します。体を安定した状態に戻そうと、自律神経中枢に負荷がかかり続けることになるので、脳のオーバーヒートが悪化して、さらに脳が疲労するという悪循環が生まれるのです。

脳にとって快適な環境づくりが大切

脳にとって快適な環境づくりが大切

脳のオーバーヒートを予防する上で最も大切なのは、自律神経に負荷をかけすぎないことです。暑い季節は、脳に合わせた環境づくりも重要です。脳にとっての最適温度、つまり脳の負荷にならずに機能を発揮しやすい室内環境は22~24度といわれています。「少し涼しい」くらいの温度が理想的です。電気代の節約を目的とした省エネ推奨温度は28度とされていますが、脳にとっていい環境とはいえません。室温と作業効率を調べる研究では、気温が25度以上になると、1度上がるごとにパフォーマンスが2%下がるという報告もあります。

日本人は、欧米諸国に比べて筋肉量の少ない人が多く、体が発熱しにくいことから寒がりだといわれています。特に女性にその傾向が強く、エアコンが苦手だという人も多いようです。しかし、体に合わせてエアコンの設定温度を上げるよりも、脳に合わせて室温は涼しくしておき、寒さを感じたら着る服を増やして体を温めるようにしたほうが、脳のオーバーヒートは予防できます。

さらに、暑くなり始める6月頃から、脱水症状を起こしやすくなります。発汗で体から水分や塩分は抜けていても、じっとりとした湿気があるために汗が蒸発せず、喉の渇きを感じにくいので、水分の補給をおろそかにしやすいのです。その結果、血液の流れが悪くなって体に熱がこもりやすくなり、熱中症や脳梗塞などを引き起こすリスクが高まります。喉が渇いていなくても、意識的に水分を補給するように心がけましょう。

適度に体を動かし、早めに脳をクールダウン

適度に体を動かし、早めに脳をクールダウン

長時間同じ姿勢を続けると、血液の流れが悪くなり、自律神経に負荷がかかります。1時間に1回程度は動くようにしましょう。水分をこまめに補給して血液の流れを促進し、いつもよりトイレに行く頻度を上げて立ち上がる機会を増やすことは、脳のためにもいい方法です。

特に運動不足を感じている方は注意したいところですが、身体的な疲れを感じるような激しい運動は、自律神経を酷使することになるため、脳のオーバーヒート対策という観点では逆効果です。軽いストレッチや、心臓に負荷がかからない程度の筋トレで十分です。散歩は気分転換にもなり、脚の筋肉を動かすことで血流が良くなるため、脳に酸素と栄養がきちんと供給され、自律神経のバランスを維持しやすくなります。

また食べ物に関しては、鶏むね肉がおすすめです。疲労を回復するとされる成分イミダペプチド(イミダゾールジペプチド)が豊富に含まれていると考えられています。鶏むね肉を100g食べると、イミダペプチドの1日の摂取目安量である200mgを摂取できます。

加齢とともに自律神経の機能は衰えてしまうので、年を重ねるほど脳への負荷は増えやすくなります。脳が慢性的にオーバーヒートする状態が続かないように、できるだけ負荷をかけない生活を心がけたいものです。

監修者プロフィール
梶本 修身先生(東京疲労・睡眠クリニック院長)

【梶本修身(かじもと おさみ)先生プロフィール】

東京疲労・睡眠クリニック院長
1962年生まれ。大阪大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。疲労医学を専門に研究する、疲労研究の第一人者。2003年に始まった産学官連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」 では統括責任者を務めた。医療機関向け検査機器「脳年齢計 ATMT」の開発に携わり、2006年にニンテンドーDSのソフト「脳年齢 脳ストレス計 アタマスキャン」、Windowsソフト「脳力トレーナー 脳年齢 脳ストレス計 アタマスキャン」を監修し、脳年齢ブームを牽引。現在は、書籍の執筆や監修、講演活動、メディア出演など、多方面で活躍中。

サワイ健康推進課公式Twitter

この記事はお役に立ちましたか?

関連記事はこちら 関連記事はこちら

クリップ一覧に保存しました。