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PHRで自分の健康管理がよりスムーズに!

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監修/石見 拓先生(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 予防医療学分野 教授)

自分の体や健康状態、生活習慣についてどのくらい正確に把握していますか? こうした個人の健康データをスマートフォンアプリなどで手軽に記録し、活用する仕組みとして注目されているのが「PHR(Personal Health Record)」です。PHRとはどのようなものなのか、具体的にどのように活用され、私たちの健康管理に役立っているのか、京都大学予防医療学分野教授の石見拓先生にうかがいました。

自分のあらゆる健康データを電子記録に

自分のあらゆる健康データを電子記録に

PHRとは「Personal Health Record」を略した言葉です。
その名のとおり、健康診断の結果や服薬の記録、予防接種歴など医療に関わるデータや、血圧、体温、脈拍、歩数といった自分で測定するバイタルデータなど、個人の健康に関するさまざまな情報を電子記録として蓄積し、生涯にわたって活用するための仕組み全般のことを指しています。

近年はスマートフォンの健康管理アプリや、スマートウォッチに代表されるウエアラブルデバイスなどが普及し、すでに日々の健康データなどを記録することが習慣化している人も多いことでしょう。

また、政府が運営するウェブサイト「マイナポータル」でも、予防接種歴や乳幼児検診の結果、医療保険情報(薬剤情報、特定健診情報、医療費通知情報)を取得することが可能になっています。

健康管理アプリやウエアラブルデバイス、マイナポータルなどもPHRという仕組みを活用したサービスの一部になります。

医療機関との情報共有も可能に

医療機関との情報共有も可能に

健康診断の結果は紙でもらう、日々の健康データは手書きで記録する、というケースは現在でも少なくないかもしれません。しかし紙で管理する方法だと数年にわたって保管することや、家族や医師との共有が難しかったり、記録するのが面倒になって続けにくくなったりするといったことが考えられます。

一方、ICT(情報通信技術)を活用したPHRサービスは、データの記録や保存・保管を簡単に行うことができます。それだけでなく、自分の必要性や希望に応じて、かかりつけ医や薬剤師などの医療従事者や医療機関、家族などとデータを共有することができるのが大きな特長の一つです。

例えば、医療機関とデータを共有することで次のようなメリットが得られる可能性があります。

  • 自身で記録した日々の歩数をはじめとする運動、食事などの生活習慣と体重、血圧、血糖のデータを基に、運動や食事について改善すべき点やおすすめの方法などをアドバイスしてもらえる。
  • 禁煙外来に通院しながら、保険適用となった禁煙治療用アプリを使い並行してPHRサービスを利用することで治療効果を高めることが期待できる。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの新興感染症対策として、患者が自宅で記録した熱や呼吸器症状、倦怠感などの健康状況を、保健所や自治体、医療機関などの関係者と共有することも、PHRサービスを活用すればより安全かつスムーズに行うことができると考えられます。

さらに、災害時に内服薬や貼り薬、インスリンなどがなくなってしまった場合や、救急搬送されるといった非常時にも、PHRサービスによって迅速かつ的確な対処が可能になることが期待されます。

自分自身の健康増進に役立てよう

自分自身の健康増進に役立てよう

自分自身の健康のために直接活用できるのもPHRサービスにおいて忘れてはならない利点です。

例えば、スマートフォンアプリやウエアラブルデバイスなどに日々の歩数や活動量などを記録することで、自分に必要な健康増進のための運動を自らマネジメントすることや、食事について管理栄養士からのアドバイスをもらうといったことも、PHRサービスでは可能です。

体だけでなく、心の健康にも役立てられます。自分の心身の状態について常日頃から正確に把握し、生活習慣の改善や健康増進に役立てることで、病気の早期発見や重症化の予防につなげることができるでしょう。

また、予防医療や疾病の早期発見の観点から、年齢とともに低下しやすくなる日常生活動作(ADL: Activities of Daily Living)や生活の質(QOL: Quality of Life)の向上も期待できます。超高齢化社会における重要な課題の一つである「健康寿命の延伸」につながる可能性があります。

とはいえ、差し迫った健康上の問題を抱えていない、健康的な生活をしているとはいえないけれど特に健康上困ることもなく持病もないといった場合には、PHRサービスを活用するメリットは感じにくいかもしれません。

しかし心身ともに健やかに生活していくためには、健康を損ねる前に生活習慣を見直し、改善することが必要です。

そこで「PHRサービスを活用してみよう」と広く思ってもらえるような取り組みが、一般社団法人 PHR普及推進協議会や民間事業者を中心に進められています。

今後はさまざまなPHRサービスの中から、個人がそのときの自分の年代やライフステージ、趣向に適した複数のPHRサービスを取捨選択しながら利用できるようになっていくことでしょう。

そうした手続きなどが誰でも簡便にできるように、データの引き継ぎを可能とする共通項目やデータ流通形式の標準化などを含む、民間事業者間共通のガイドラインの作成が進められています。

PHRサービスの増加に伴い、自分にとって最適なPHRサービスをどう選ぶかということも課題の一つになる可能性があります。

世の中にあふれる健康や医療の情報は玉石混交ですが、正しい情報やサービスを得るためには個人個人が学びを深め、ヘルスリテラシーや情報リテラシーを高めていくことが大切です。

また、かかりつけ医や薬剤師など医療従事者に相談し、アドバイスをもらうことも、適切なPHRサービスの選択や活用のうえでおすすめです。

※編集部注:沢井製薬では、機器連携による血圧や体重、体温、歩数などの記録、食事の内容とそこから摂取したエネルギー量、服薬情報の記録、さらにオンライン診療にも対応可能なPHR管理アプリ「SaluDi」を展開。同アプリから当サイトへ直接アクセスすることもできます。
https://www.sawai.co.jp/saludi/index

監修者プロフィール
石見拓先生(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 予防医療学分野 教授)

【石見拓(いわみ たく)先生プロフィール】

京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 予防医療学分野 教授
一般社団法人 PHR普及推進協議会 代表理事
1996年、群馬大学医学部卒業。2005年大阪大学医学部医学研究科・生態統合医学(救急医学)博士課程修了。2006年京都大学大学院医学研究科・臨床研究者養成コース修了、同年4月より京都大学保健管理センター(2011年4月より環境安全保健機構に改名)(予防医療学)助教。同講師、同准教授を経て2015年より教授、2022年4月より医学研究科教授、現在に至る。

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