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頭痛・風邪・熱

頭痛予防に効果的な生活習慣改善法

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監修/竹島 多賀夫先生(富永病院 副院長)

日常生活の中で、何かの拍子に頭が痛みだす、いわゆる「頭痛持ち」を自覚する人も多くいらっしゃることでしょう。できれば、何が頭痛の引き金になっているのかを知り、未然に防ぐことができるようになりたいものです。頭痛予防について、食生活や運動、ストレスマネジメントの観点から、富永病院副院長の竹島多賀夫先生に伺いました。

頭痛予防のための食生活改善

頭痛を誘発する因子として、食生活はどの程度関係しているのでしょうか。ポイントとなるのは、個別の食品ではなく、食事の摂り方にあるようです。

頭痛予防と食べ物は関係する?

片頭痛の誘発因子として挙げられる食品は、チョコレートや、亜硝酸ナトリウムを添加したハムやソーセージなどの加工肉などがあります。しかし、ここに挙げた食品を摂っただけで片頭痛の発作が起こるわけではありません。

例えば、ひとくくりに乳製品と言っても、チーズは頭痛の誘発因子として挙げられることが多い一方、ヨーグルトや牛乳は頭痛の緩和や予防に有用といわれています。「頭痛の診療ガイドライン※1」においても、「誘発因子として挙げられている食品は数多いが、すべての患者にあてはまるというものではなく、実際に食事性誘発因子を経験している患者は理論的知識として知られているほど多くはない」と明記されています。つまり、ある人にとっては頭痛の原因となりうる食品でも、別の人にとってはまったく問題がない場合も少なくないのです。

自身の過去の食事経験から、頭痛が生じる可能性があった食品を認識して避けることは有意義ですが、さまざまな情報に触れてあれもこれも危険だと思い込んで厳格に避けることが、かえって状況を悪化させうるストレスやフラストレーションを引き起こす可能性があります。

これを食べると必ず発症するということでなければ、あまり気にせずバランスのよい食事を摂ることを心がけましょう。むしろ、空腹や過度のダイエットは片頭痛の誘発因子になります。食事を摂らない、摂っても少量の場合だと低血糖状態になり、脳血管の周囲にある神経を刺激して片頭痛発作が起こりやすくなると考えられています。また、アルコールは片頭痛の引き金になりやすいといわれます。中でも赤ワインは、血管拡張作用のあるポリフェノールやヒスタミンといった含有成分が痛みの発生に関係していると考えられているため、頭痛が起こりやすい人は控えたほうがよいでしょう。

※1:日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修・「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会編集 『頭痛の診療ガイドライン 2021』医学書院(2021)

頭痛予防のための食事パターン

規則正しい食事リズムを保つことが何より大切です。忙しくても食事を抜いたりせず、1日3食、さまざまな栄養素をバランスよく摂りましょう。前の項でも説明しましたが、頭痛の発生には血糖値の変動が関係していると考えられています。空腹による低血糖だけでなく、糖質を過剰に摂ることでも血糖値が急激に変動します。頭痛が起こりやすい人は、食生活を振り返り、血糖値が急激に上下するような食べ方をしていないかチェックしてみてください。

また、身体の水分不足は頭痛を引き起こすとされています。ハーブティーや水を1日を通して少しずつ飲むなど、こまめな水分補給を心がけましょう。カフェインを含むコーヒーや緑茶、アルコールは利尿作用によって逆に脱水症状を招くこともあるので、頭痛防止のための水分補給という観点では不向きです。

頭痛予防のための運動と体操

適度な運動や体操は身体のこりやこわばりをほぐし、頭痛を予防するのに有用です。ただし、自身の頭痛の種類によっては、身体を動かすことで逆に痛みが増す場合もあるので注意しながら行いましょう。

頭痛予防に効果的な運動

運動習慣は、さまざまな病気に対処する免疫力アップにつながり、筋力の維持など、身体基盤を整えるために有効です。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動、ヨガやピラティスなどのゆったりとした運動は、緊張状態にある身体をほぐして、血流を促進し、頭痛発生のトリガーとなるストレスの解消や血管の収縮を防ぐことが期待できます。

心身をリフレッシュして頭痛予防につなげるところが目的ですので、楽しみながら無理なく継続できる運動を選ぶことが大事です。激しい運動は逆に頭痛を起こしたり、痛みを助長したりすることもあるので注意してください。

頭痛予防のためのストレッチ

頭痛予防に効果的なのが、首や肩まわりのストレッチです。日本頭痛学会では、片頭痛の予防および緊張型頭痛の緩和を目的とした「頭痛体操」をおすすめしています※2。主に側頭筋や後頸筋、首の後ろから背中にかけて肩甲骨を覆う僧帽筋をほぐすストレッチで、筋肉のこりや疲れを取り、頭痛を和らげる効果が得られるよう考えられています。

目の疲れ(眼精疲労)も、頭痛を誘発するトリガーの1つです。長時間のデスクワークなどでパソコンを使い続けると、眼の異常が肩こりや疲労を引き起こし、その心身のストレスから片頭痛や緊張型頭痛になると考えられています。そんな時も首や肩をストレッチでほぐすとよいでしょう。このほかに目のまわりをやさしくマッサージする、蒸しタオルやホットアイマスクで目を温めて休めるといった方法もあります。

※2:日本頭痛学会「1日2分の頭痛体操」(https://www.jhsnet.net/pdf/zutu_taisou.pdf別ウィンドウで開きます)を2025年2月3日に参照

頭痛予防のための姿勢改善

正しい姿勢を保つことは頭痛予防に欠かせません。猫背や前かがみの姿勢は、首や肩の筋肉に負担をかけ、頭痛の原因になることがあります。

椅子に座る際は背筋を伸ばし、お尻を椅子の奥までつけると、自然と正しい姿勢になります。パソコンやスマートフォンを使用する際は目線が下がらないように画面の高さを調整しましょう。足を組んだり、長時間同じ姿勢が続くことは避け、こまめに姿勢を変えたりストレッチを取り入れたりするのも大事です。

頭痛予防のためのストレス管理

頭痛はライフスタイルと密接に関連します。中でも大きく影響するのが、日常生活で蓄積されるストレスです。

ストレスと頭痛の関係

頭痛の大きな誘発因子であるストレスは大きく2つあります。デスクワークなどで同じ姿勢や動作を長時間続けることにより体が緊張状態になる身体的ストレスと、仕事や人間関係、生活環境の変化などから生じる精神的ストレスです。身体的・精神的なストレスを感じると、肩や首の筋肉が過度に緊張します。その状況が一定時間持続すると筋肉組織周辺の血流が悪化したり、血管の収縮が繰り返されたりして頭痛が起こります。

頭痛には頭部の血管、神経、そして頭蓋を覆う筋肉が深く関わっていて、筋肉の緊張とストレスは互いに影響し合う悪循環にあるといえます。この悪循環を断ち切り、頭痛というサインになって現れる前に、日頃からストレス解消法や自分なりのリフレッシュ方法を見つけ、ストレスをため込まないことが大切です。

頭痛予防のためのストレス管理法

仕事が立て込んだ状態が続いたり、日常生活に問題を抱えていたりすると、無意識のうちに心身にストレスが蓄積して頭痛が起こりやすくなります。ご自身の生活を振り返ってみて、ストレスと考えられる動作や問題点を見つけ、適切にコントロールすることが頭痛予防への第一歩となります。

そのために必要なのが、ストレスマネジメントと生活習慣の改善です。健康な身体をつくるために、規則正しい生活を送り、生活リズムを一定に維持しましょう。規則正しい睡眠習慣を実践するだけでも、ストレス軽減につながります。

深呼吸や瞑想などのリラクセーション法も、ストレスの解消や緊張状態の緩和には有用です。自分に合ったリラックス方法を見つけて、ストレス発散を心がけましょう。

頭痛予防のための睡眠管理

適切な睡眠習慣は頭痛予防に欠かせません。毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きる、規則正しい睡眠リズムを心がけましょう。片頭痛の場合は、睡眠が長すぎる、逆に短すぎることも発症の原因となります。自分にとって適切な睡眠時間を探してみましょう。規則正しい生活リズムによってストレス解消や睡眠の質の向上につながり、頭痛の予防に役立ちます。

年齢やライフスタイルによっても異なりますが、理想的な睡眠時間は6〜8時間(成人の場合)が目安とされています※3。快適な睡眠環境を整えてリラックスしてぐっすり眠ることで、翌日には心身がすっきりリセットされて生活リズムの好循環が生まれ、頭痛のトリガーとなるストレスも軽減されます。

つらい頭痛を未然に防ぐことができれば、生活の質(QOL=Quality of Life)の向上が実感できるはずです。ぜひ、日常生活の中で1つでも実践できそうなことを見つけ、実践してみてください。

※3:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf別ウィンドウで開きます)を2025年2月19日に閲覧

監修者プロフィール
竹島 多賀夫先生(富永病院 副院長)

【竹島多賀夫(たけしま たかお)先生プロフィール】

富永病院 副院長
1984年鳥取大学医学部卒業。医学博士、神経内科専門医、頭痛専門医。鳥取大学医学部・脳神経内科助手、講師、助教授、准教授を経て、2010年より現職。米国国立衛生研究所(NIH)に留学、神経細胞分子生物学研究に従事。頭痛症、パーキンソン病に関連した論文、著書多数。頭痛の知識の普及のため講演活動も積極的に行っている。日本頭痛学会代表理事、日本神経学会元理事、京都大学医学部臨床教授。

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