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病気と医療の知って得する豆知識

じっとしていられないほどの激しい頭痛! 「群発頭痛」への理解を深めよう

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監修/丹羽潔先生(東京頭痛クリニック理事長)

3大慢性頭痛の一つで、周期的に激しい痛みが起こり、仕事や生活に著しい影響を及ぼすのが「群発頭痛」です。自分自身はもちろん、身近な人が発症したときのために正しい知識をぜひ身に付けておきたいもの。どのような症状が起こる病気で、どんなことに気をつければよいのか、東京頭痛クリニック理事長の丹羽潔先生に伺いました。

3大慢性頭痛の中でも極めて痛みが強い群発頭痛

頭痛にはさまざまなタイプがあり、国際頭痛学会の基準である『国際頭痛分類第3版(ICHD-3)』では367種類に分類されています。

その中で、長期にわたりくり返し起こる代表的な慢性頭痛(一次性頭痛)として知られているのが「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の3つです。それぞれの主な症状を見てみましょう。

●片頭痛――月または週に何回か、ズキンズキンと脈打つような痛みが頭の片側または両側に起き、数日続くことが多い。吐き気や嘔吐を伴うこともある。光や音、臭いなどに過敏になりやすい。

●緊張型頭痛――頭が締め付けられるような圧迫感や頭の重い状態が毎日、あるいは数時間~数日にわたり起こる。首や肩の凝りを伴うこともある。

●群発頭痛――片側の目の奥がえぐられるような強烈な痛みが起こる。年1~2回ほど発症し、頭痛が起こる「群発期」には1回につき1~2時間程度の激しい痛みが1~2カ月間にわたって続くことが多い。

群発頭痛の有病率は、全人口の0.1%に過ぎず、アジア人の3%未満と報告されています(※)

(※)
Arne May et al., Nat Rev Dis Primers 2018doi: 10.1038/nrdp.2018.6.

比較的まれな病気のため群発頭痛に対する認知度も低い傾向にあり、周囲の理解がなかなか得られないという患者さんも少なくありません。

近年では俳優やミュージシャンが自身の群発頭痛を公表するケースを受け、「自分もそうなのかもしれない」と考える人も増えてきているようです。群発頭痛はある日突然発症する病気であり、また片頭痛持ちの方にも起こるため、誤診されるリスクがあります。

群発期が過ぎれば痛みは落ち着きますが、痛みが起きている期間は仕事や生活などへの影響も大きいもの。いざというときに適切に対処するためにも、基本的な知識を身に付けておくことはとても大切です。

痛みが起こるのは片側の目の奥が中心

群発頭痛は、『国際頭痛分類第3版(ICHD-3)』において「三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)」の一つに分類されています。群発頭痛の特徴についてさらに詳しく見てみましょう。

片頭痛の場合などは発作が起きたら静かなところで横になるなど安静にすることが大切ですが、群発頭痛の場合は痛みが激しすぎてじっとしていられないのも特徴の一つです。転げまわるほどの痛みに襲われる人もいます。

まず放置できない痛みなので誰もがすぐに医療機関を受診しようと思いますが、前述のようにまれな病気の一つなのでなかなか正確な診断がつきにくい場合などもあります。

的確な診断や治療を受けるためには、できるだけ頭痛の専門医に診てもらうことをおすすめします。下記の日本頭痛学会のホームページで最寄りの認定頭痛専門医を調べることができます。

日本頭痛学会認定頭痛専門医一覧

◆参考リンク

群発期の最適な過ごし方とは

群発頭痛が起こる原因や発症のメカニズムについてはまだ解明されていない部分が多くあります。一つの有力な説として考えられているのが、「頸または頸動脈管(けいどうみゃくかん)説」です。

何らかの刺激によって目の奥にある内頸動脈に炎症が起き、血管が拡張すると、血管の周囲にある感覚神経や自律神経の交感神経が血管の通り道である頭蓋骨のトンネル壁に強く圧迫されます。

すると拡張した血管による脈打つような痛みが起こると同時に、痛む血管からの信号を自律神経の副交感神経のセンターである翼口蓋神経節(よくこうがいしんけいせつ)が受け取ります。リラックスの神経といわれる副交感神経が活性化することで、痛みのある側の涙や充血、鼻水、鼻づまりといった症状が生じやすくなると考えられています。

このように、血管の拡張と自律神経のバランスの乱れが群発頭痛の発作を引き起こす原因の一つになり得ると考えられています。

発作が起きる群発期には、次のようなことに注意しましょう。

<脳の血管が拡張するようなことは控える>

  • 群発期にアルコールを飲むと激しい痛みで苦しむことになりかねません。発作が起きている期間は一切飲まないようにすることが大切です。逆にいうと、飲酒をしても痛みが起きないようなら群発期から離脱したサインといえます。
  • 熱いお風呂やサウナ、辛い食事、激しい運動なども群発期は控えましょう。

<自律神経のバランスを崩さないような生活を>

  • 毎日できるだけ決まった時間に起床、就寝するなど、規則正しい生活を心がけることが基本です。睡眠時間も十分に取りましょう。
  • 気圧の変化にも注意しましょう。群発期は飛行機搭乗やスキューバダイビングなど気圧の影響が大きい行動やスポーツなどは控えるのがおすすめです。

速やかに専門医を受診し、適切な治療を

群発頭痛は市販の鎮痛薬では改善が期待できません。前述のとおり、群発頭痛の発作が起きたらできるだけ速やかに頭痛の専門医を受診し、適切な治療を受けましょう。

発作が起きている場合にはトリプタン製剤の内服薬や点鼻薬、自己注射などのほか、自宅での発作が多く、発作後10分以内に処置できる場合は純酸素吸入(フェースマスクで100%酸素7リットル分を15分間吸入。健康保険適応)が用いられます。

また、群発頭痛はだいたい決まった時期に起こる傾向にありますが、いつ発作が起こるかは分かりません。残念ながら、「次の群発期が来ないように予防する」という治療法は現状では存在しませんが、予防で使われるお薬(適応外使用)もありますので医療従事者にご相談ください。

監修者プロフィール
丹羽潔先生(東京頭痛クリニック理事長)

【丹羽潔(にわ きよし)先生プロフィール】

東京頭痛クリニック理事長
東海大学医学部卒業後、独国ミュンヘン・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学神経内科、米国ミネソタ大学神経内科に留学。東海大学医学部神経内科専任講師などを経て、2005年「にわファミリークリニック」開設。日本内科学会認定内科専門医(総合内科専門医)。日本神経学会専門医・指導医。日本脳卒中学会専門医。日本頭痛学会認定専門医、指導医、評議員。

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