頭痛・風邪・熱
【医師監修】頭痛の原因と症状をチェック!頭痛の原因別予防法・対処法
監修/飯ヶ谷 美峰先生(北里大学北里研究所病院 脳神経内科部長 病院長補佐(兼務))

日本人の約4人に1人が何らかの頭痛を有すると報告されており、痛みとの付き合い方に悩む人が少なくありません。頭痛にはさまざまなタイプと原因があります。自分がどのタイプなのかを適切に見極め、対処したいものです。頭痛のメカニズムとタイプの見分け方、日常生活の中でできる予防法・対処法について北里大学北里研究所病院脳神経内科部長の飯ヶ谷美峰先生に伺いました。
この記事で分かること
- 頭痛には、頭痛そのものが病気の「一次性頭痛(すぐさま命に関わるものではない)」と、ほかの病気による「二次性頭痛(命に関わる場合があり注意が必要)」がある。
- 一次性頭痛には、「片頭痛:頭の片側または両側のこめかみの辺りにズキンズキンと拍動性の痛みが繰り返し起こる」、「緊張型頭痛:頭部をジワリと締めつけられるような鈍い痛みが続く」、「群発頭痛:片方の目の奥が激しく痛む」がある。
- 頭痛予防のカギを握るのが生活習慣の改善。規則正しい睡眠や食事をベースとした生活リズムの維持、適度な運動習慣、日ごろからストレスを発散する自分なりの工夫が大事
概要・目次※クリックで移動できます。
頭痛とは
頭痛と一口に言ってもさまざまなタイプ・原因があり、症状の現れ方や頻度は人によって異なります。あなたを悩ませる頭痛は、どのタイプの頭痛でしょうか?適切に対処するために、まずは自分の頭痛がどのタイプなのかを正しく知ることが大切です。
頭痛は2つのタイプに大別され、その一つが「頭痛そのものが病気」の一次性頭痛で、すぐさま命に関わるものではありません。もう一つはほかの疾患が原因となって起こる二次性頭痛です。脳もしくは脳血管の病気の症状として生じる頭痛が最も問題で、場合によっては命に関わることもあり注意が必要です。
■一次性頭痛
頭痛そのものが病気。すぐさま命に関わるものではない。
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
- 群発頭痛 など

■二次性頭痛
ほかの疾患が原因で起こる。命に関わることもあり注意が必要。
- くも膜下出血
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 髄膜炎
- 脳炎 など

頭痛の原因
「国際頭痛分類第3版(ICHD-3)」では300種類以上の頭痛があるとされています※1。頭痛が引き起こされる要因も実に多様で、特定が難しいものです。まずは頭痛の種類を知って、症状と経過を観察しましょう。
※1:日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳 「国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版」
(https://www.jhsnet.net/kokusai_2019/34.pdfPDFで開きます)を2025年3月1日に参照
一次性頭痛の種類と原因ー片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛
一次性頭痛に分類される主な頭痛として、片頭痛、緊張型頭痛、そして三叉神経・自律神経性頭痛の代表格である群発頭痛が挙げられます。
片頭痛

痛む場所:頭の片側または両側のこめかみの辺り
特徴:ズキンズキンと拍動性の痛みが繰り返し起こる。頭痛発作が継続する時間は4~72時間で、年に数回という人もいれば、週に2~3日と高頻度にみられる人もいます。
緊張型頭痛

痛む場所:頭部全体、後頭部、首筋
特徴:ジワリと締めつけられるような鈍い痛みが続く。頭痛は、短いと30分、長い場合は1週間程度続き、反復して起こる場合と、毎日のように続く場合があります。
群発頭痛

痛む場所:片方の目の奥や側頭部
特徴:頻度は年に1~2度程度。一度発症すると1~2カ月にわたってほとんど毎日、ほぼ同じ時間帯に激しい頭痛が起こります。
CGRPの増加によって痛みが生じる「片頭痛」
片頭痛は、特徴的な拍動性の痛みのほか、吐き気を伴ったり、光や音の刺激に対し知覚過敏になったりすることもあり、視界にキラキラもしくはギザギザと瞬くような光の模様が広がる「閃輝暗点(せんきあんてん)」という視覚性前兆の後に起こることもあります。
片頭痛は、その名前の通り「頭の片側が痛む」とされていますが、実際には4割近くの患者さんが両側の頭痛も経験しています※2。女性に多いのも特徴で、男性の約3~4倍となっています※3。また、特有のトリガー(不規則な睡眠、気象や気圧の変化、食事など)によって片頭痛が引き起こされるのも特徴です。
※2:日本頭痛学会 「片頭痛/片頭痛の治療」(https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_02.html別ウィンドウで開きます)を2025年1月8日に参照
※3:古和久典, 中島健二. 臨床神経2011;51:1147-1149
発作が起こると、普段であれば気にならない光や音、においに対して敏感になり、暗い静かな部屋でじっとしていたほうが楽に感じます。頭痛に加え、吐き気や嘔吐、下痢を伴う人もいます。体を動かすと痛みが悪化するため、仕事や家事ができなくなるなど生活のさまざまな面で支障が出ます。
片頭痛はCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)というたんぱく質が神経の末端から過剰に放出されることが痛みの原因の一つであることが明らかになり※4、最近はCGRPをターゲットとした治療薬が開発されています。
※4:日本頭痛学会「CGRP 関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版)」(https://www.jhsnet.net/GUIDELINE/CGRP/2.pdfPDFで開きます)を2025年3月2日に参照
頭の周りの筋肉が緊張して痛む「緊張型頭痛」
緊張型頭痛には、身体的・精神的なストレスが複雑に関係していると考えられています。
デスクワークで長時間同じ姿勢で過ごすと、頭頸部から肩にかけての筋肉がガチガチにこり固まることも多いのではないでしょうか。こうした筋肉の緊張状態が周辺組織の神経を刺激するとともに血流を低下させ、頭痛につながることがあります。
また、精神的に緊張した状態が長期間続くと、脳の痛みを調整する部位が機能不全を起こし頭痛を引き起こすと考えられています。
片方の目の奥が激しく痛む「群発頭痛」
三叉神経・自律神経性頭痛の代表格である群発頭痛は、片方の目の奥に激しい痛みを感じるほか、側頭部や下あご、歯などに広がることもあります。痛みで動けなくなるのが片頭痛だとすると、あまりの痛みでじっとしていられないのが群発頭痛です。
また、痛む側の目や鼻の症状を伴うケースも多くみられます。目の症状は涙や充血、まぶたのむくみ、眼瞼下垂、瞳孔の縮小などがあり、鼻の症状としては鼻水、鼻づまりなどがあります。
群発頭痛は20~30才代に多く、約85%は男性とされていましたが、最近の調査では性差が縮まってきており、女性の群発頭痛もまれではなくなりつつあります※5。
※5:日本頭痛学会「群発頭痛」(https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_04.html別ウィンドウで開きます)を2025年1月8日に参照
二次性頭痛の原因ー脳腫瘍、感染症、外傷など
二次性頭痛は、併発するほかの病気が原因で起こる頭痛です。中でも、脳腫瘍や髄膜炎、くも膜下出血、脳卒中など、脳もしくは脳血管の病気の症状として生じる頭痛が最も問題になります。このほか、副鼻腔炎や、インフルエンザなど感染症に伴う頭痛や飲酒後の二日酔いの頭痛なども二次性頭痛とされます。また一次性頭痛の人が鎮痛薬を飲みすぎた場合に起こる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)もこのタイプの一つです。
いずれにせよ、今まで経験したことのない激しい頭痛や時間とともに痛みが増していくような頭痛は、危険な頭痛かもしれません。重大な疾患が隠れている可能性もあるので、早めの受診と適切な治療が非常に大事です。
次に挙げるのは、医師が診察する際、「二次性頭痛の危険信号(Red flags)」として特に注意している症状です※6。
※6:Do TP, Remmers A, Schytz HW, et al:Red and orange flags for secondary headaches in clinical practice: SNNOOP10 list. Neurology 92:134―144, 2019.
■二次性頭痛の危険信号(Red flags)
- 1.発熱を含む全身症状
- 2.新生物(悪性腫瘍)の既往
- 3.神経脱落症状または機能不全(手足の麻痺、しびれ、意識レベルの低下など)
- 4.急または突然に発症する頭痛
- 5.高齢(50歳以降)
- 6.頭痛パターンの変化または最近発症した新しい頭痛
- 7.姿勢によって変化する頭痛
- 8.くしゃみ、咳、運動により誘発される頭痛
- 9.乳頭浮腫(眼球内にある視神経の腫れ)
- 10.進行性の(痛みが徐々に強まる)頭痛、非典型的な症状を伴う頭痛
- 11.妊娠中または産褥(さんじょく)期
- 12.自律神経症状を伴う眼痛
- 13.外傷後に発症した頭痛
- 14.HIVなど免疫系疾患のある患者
- 15.鎮痛薬使用過多もしくは薬剤新規使用に伴う頭痛
頭痛チェックシート
二次性頭痛が否定的であれば、一次性頭痛や「薬剤の使用過多による頭痛」が考えられます。自身の症状に基づいてどのタイプの頭痛に該当するかを確認してみましょう。下記は、北里大学北里研究所ホームページに掲載されているセルフチェックリストです。すべての質問に対し、あてはまる項目をチェックしてみてください。該当する項目の数により、あなたの頭痛がどのタイプの可能性が高いかが分かります。また受診する際にも、あてはまる項目にある症状を医師に説明すると診断の参考になります。
※北里大学北里研究所病院ホームページに掲載されたセルフチェックリストを参照
自分の頭痛をセルフチェックしてみましょう!
片頭痛
A群
B群
A群が2個以上+B群が1個以上=片頭痛の可能性があります。
緊張型頭痛
A群
B群
A群が2個以上+B群に該当=緊張型頭痛の可能性があります。
群発頭痛
A群
B群
A群が1個以上+B群すべてに該当=群発頭痛の可能性があります。
薬剤の使用過多による頭痛
上記に該当する方は薬剤の使用過多による頭痛の可能性があります。
頭痛の予防法と対処法
発作が起こると、仕事や家事を休んだり、痛みを我慢することでQOL(生活の質)が低下したりするなど、大なり小なり日常生活への影響があるのが頭痛の厄介なところです。適切な予防と対処の方法を知り、少しでも症状や痛みを軽減できるようあらかじめ手を打てるようにしたいものです。
片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛について、それぞれ異なる予防法と対処法を具体的に解説します。
片頭痛の予防法と対処法
片頭痛がなぜ起こるのか、メカニズムは完全には解明されていませんが、何らかの誘因で血管周囲の神経が刺激されると痛みを引き起こす物質(CGRP)が分泌され、激しい頭痛が起こると考えられています。以下に挙げた片頭痛のさまざまな誘因を知り、避けられるものはあらかじめ避けるといった工夫も大切です。
予防法
自分の頭痛の傾向を知る | 片頭痛を誘発する要因は、ストレス、不規則な睡眠、飲酒、まぶしい光、騒音、強いにおい、空腹や脱水、気圧や温度の変化とさまざま。女性は月経周期に伴うホルモンの変動も片頭痛の誘因になることがあります。誘因は人によって異なるため、自身の頭痛がどんな時に起こるか傾向を知ることが次の発作を回避する予防策になります |
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規則正しい睡眠と適度な運動 | 規則正しい睡眠、適度な運動は、心身のストレスを軽減して頭痛を予防するだけでなく、身体全般を健やかな状態に維持するための基本です |
バランスのよい食事を規則的に摂る | 食事の観点では、片頭痛によいとされる食べ物や、逆に誘因となる食べ物はありません。バランスよく、規則的に食事を摂ることを心がけてください |
対処法
安静に過ごす | 片頭痛が起こってしまったら、まずは痛みが悪化する要因を避け、部屋を暗くして横になり安静に過ごしましょう |
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頭を冷やす | 片頭痛には頭部の血管の拡張が関係しているため、保冷剤や冷却シートなどで頭を冷やすのも効果的です。入浴は血行を促進して痛みを強めることもありますので、発作時には控えたほうがよいでしょう |
ツボ押しやリラクセーション | ヒトの頭頸部は、全身の中でも特に多くのツボが集中しています。ツボ押しやリラクセーションで症状が和らぐ場合もありますので、試してみるのもよいでしょう |
緊張型頭痛の予防法と対処法
緊張型頭痛の予防は、頭痛の原因となるストレスをいかに回避するかが重要なカギになります。そのために必要なのが、ストレスマネジメントと生活習慣の改善です。
予防法
規則正しい睡眠と適度な運動 | 規則正しい睡眠、適度な運動は、心身のストレスを軽減して頭痛を予防するだけでなく、身体全般を健やかな状態に維持するための基本です |
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バランスのよい食事を規則的に摂る | 食事の観点では、緊張型頭痛によいとされる食べ物や、逆に誘因となる食べ物はありません。バランスよく、規則的に食事を摂ることを心がけてください |
長時間同じ姿勢はNG | 長時間同じ姿勢のままでいるのは避け、意識して体を動かして筋肉の緊張をほぐすのも大事です。深呼吸や瞑想などのリラクセーション法も、ストレスの解消や緊張状態の緩和には有用です。自分に合ったリラックス方法を見つけて、ストレス発散を心がけましょう |
対処法
温めて、こりをほぐす | マッサージ、蒸しタオル、半身浴などで温めて、首、肩の筋肉のこりを取り、血行を良くしましょう。ストレッチも効果的です |
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気分転換をする | 頭痛が始まったら、心身にストレスを加えていることを中止し、例えばその場所から離れるなどして、気分転換をしましょう |
群発頭痛の予防法と対処法
群発頭痛の発作時に現れる激しい痛みは市販の鎮痛薬での対処が難しく、心理療法やサプリメント摂取などの非薬物療法も有効ではありません。薬を使用しない対処法としては、規則正しい生活リズムの確立やストレス管理が群発頭痛の予防につながると考えられています。
予防法
飲酒・喫煙はNG | 飲酒や喫煙が群発頭痛の発症に強く関連していることが分かっています。特に発作が起こった時には痛みがさらに増すリスクが高まるので、一切口にしないようにしましょう |
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対処法
市販鎮痛薬は無効。速やかに受診を | 群発頭痛は市販の鎮痛薬では改善が期待できません。群発頭痛の発作が起きたらできるだけ速やかに頭痛の専門医を受診し、適切な治療を受けましょう |
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頭痛予防のための生活習慣改善
頭痛の予防には、生活習慣の見直しも有効です。規則正しい食事や睡眠、適度な運動は心身のストレスを軽減して頭痛を予防するだけでなく、身体全般を健やかな状態に維持するための基本です。頭痛に悩んでいる方は日々の習慣の中に頭痛のトリガーとなる要因を見過ごしていないか、下記のチェック項目で、生活習慣を振り返りましょう。
生活習慣チェック項目
規則正しい生活リズムをつくるコツ
健康な身体をつくるために、規則正しい生活を送り、生活リズムを一定に維持しましょう。生活リズムのベースをつくる食事や睡眠も、ライフステージによって、最適な量やかけるべき時間は異なります。大切なのは、一度決めたらできるだけ同じ時間に食事を摂り、寝起きするよう努めること。このような習慣を積み重ねることで、安定した健康状態を保ち、結果的に頭痛の予防にもつながります。
運動習慣が頭痛予防に効果的な理由
運動習慣は、さまざまな病気に対処する免疫力アップにつながり、筋力の維持など、身体基盤を整えるために有効です。適度な運動は緊張状態にある体をほぐして、血行を良くし、頭痛発生のトリガーとなるストレスの解消や血管の収縮を防ぐことが期待できます。
首の運動も大切です。加齢や肥満によってのどの周りの筋肉が衰えると、上気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群につながることがあります。この病気によって引き起こされる頭痛を予防するためにも、日ごろから首やあごをしっかり動かしましょう。
ストレス対処法ー自分に合ったリラックス方法を見つける
ストレスの対処法は人それぞれ異なり、自分に合ったリラックス方法を見つけることが大切です。
ヨガや深呼吸、瞑想などのリラクセーションは、ストレスの解消や体の緊張状態を緩和させるのに有用な面もあると考えられていますので、セルフケアに取り入れてみてはいかがでしょうか。
頭痛は適切な治療や予防法で痛みを軽減することが可能です。「頭痛持ちだから」と我慢せず、積極的にセルフケアを実践したり専門医に相談することで、QOL向上への一歩を踏み出してみてください。
監修者プロフィール
飯ヶ谷 美峰先生
【飯ヶ谷美峰(いいがや みほ)先生プロフィール】
北里大学北里研究所病院 脳神経内科部長 病院長補佐(兼務)
1993年北里大学医学部卒業。小田原市立病院神経内科、北里大学病院神経内科などを経て、2006年より北里大学医学部神経内科学講師。2007年より北里研究所病院神経内科、2016年より脳神経内科部長。2021年より現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本神経学会神経内科専門医・指導医・代議員、日本頭痛学会専門医・代議員、日本脳卒中学会専門医、日本医師会認定産業医。頭痛の生活支障度票MIDAS日本語版の開発、頭痛記録アプリ「頭痛Click®」の開発などを行い、頭痛の診療および研究に長年従事している。