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不調改善ヘルスケア

頭を動かすとめまいを引き起こす 良性発作性頭位めまい症

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監修/室伏利久先生(帝京大学医学部附属溝口病院耳鼻咽喉科教授)

じっとしているときは起こらず、頭を動かすと特定の位置でめまいが起こる「良性発作性頭位めまい症」。よく見られる病気で、目の前がぐるぐるするような回転性のめまいのひとつです。この病気の特徴や対処法について、帝京大学医学部附属溝口病院耳鼻咽喉科教授の室伏利久先生にお聞きしました。

頭を動かすと起こる回転性のめまい

良性発作性頭位めまい症は、めまいを引き起こす耳の病気の中でも最も多い身近なものです。じっとしているときは起こらないのですが、病名に「頭位(とうい)」とついているように、頭を動かしたときに特定の位置でめまいが起こるのが特徴です。

めまいが起こる頭の位置は人それぞれですが、大きく分けると、目薬をさそうと上を向いたとき、あるいはシャンプーをしようと下を向いたときなどの縦の動きと、寝返りを打つときなどの横の動きで起こることが多いようです。

ぐるぐる回るような回転性のめまいです。1回の発作は通常1分以内の短時間でおさまるのですが、再び頭を動かすと目が回るということを繰り返します。吐き気や嘔吐がある人もいますが、通常、耳鳴りや難聴はありません。

頭痛はありませんが、片頭痛持ちの人はそうでない人よりも良性発作性頭位めまい症を発症する頻度が多いことが分かっています。

耳石が剥がれ落ち三半規管に入り込むのが原因

良性発作性頭位めまい症の原因は、「耳石(じせき)」と呼ばれる炭酸カルシウムの結晶です。内耳には「蝸牛(かぎゅう)」と呼ばれる音を感知する器官と、「半規管(はんきかん)」と呼ばれる回転を感知する器官が3本あり、その間に「耳石器(じせきき)」と呼ばれる、重力や体の方向など直線加速度を感知する器官があります。

耳石器は感覚細胞(有毛細胞)の上にゼラチン質の耳石膜があり、その上に数多くの耳石がついているという構造をしています。いわばゼリーの上に小さな粒々が乗っているような状態で、頭を動かすとこの耳石が動くことで感覚細胞が刺激され、方向などを感知する仕組みになっています。

■耳の構造

何らかのきっかけで耳石が剥がれ落ち、半規管のいずれかに入り込むと、中で耳石が動くことでリンパ液の流動が起こり、その刺激でめまいが引き起こされます。本来、体が回転したときに起こるはずのリンパ流動が少し頭を動かしただけで起こってしまい、回転したような刺激の情報が誤って脳に伝わってしまうのです。ちなみに、半規管は3つあるので三半規管と呼ばれています。

なぜ耳石が剥がれ落ちるのかはまだよく分かっていません。おそらく日常で頭をぶつけるなどの物理的衝撃などで剥がれ落ち、元に戻る、あるいは耳石器の中で吸収されるということを繰り返していると思われます。

それがいずれかの半規管に入り込み、長時間寝たきりや同じ姿勢を続けていると、元に戻らないうちに次々と蓄積して塊として大きくなり、めまいを引き起こす刺激になるのではないかと推測されます。ですから良性発作性頭位めまい症は、デスクワークや手術後など、長時間同じ姿勢を続けているときに起こりやすいのです。

また、閉経後の女性に多く見られることから、加齢に伴ってカルシウム代謝が変化することで、炭酸カルシウムである耳石が落ちやすくなるという説もあります※1、2。

※1:鈴木 衞:良性発作性頭位めまい症に関与する耳石の基礎的知見.Equilibrium Res 65:91-103, 2006.
※2:Takumida M et al.: Electron probe X-ray microanalysis of otoconia in guinea pog inner ear: a comparison between young and old animals. Acta Oto-laryngologica, 117:4,529-537, 1997.

ほかには、突発性難聴の後遺症として少したってから良性発作性頭位めまい症が起こることもあります。

良性発作性頭位めまい症はどんなとき起こりやすい?
  • 長時間寝たきりになったとき(手術後など)
  • 長時間同じ姿勢で頭を動かさないとき(デスクワーク、手仕事など)
  • 朝起きたとき
  • 閉経後(女性)
  • 交通事故後など頭に衝撃が加わったあと
  • 突発性難聴の後遺症として

良性発作性頭位めまい症の検査・診断・治療

良性発作性頭位めまい症は、多くの場合、数日で自然に軽快します。吐き気がするほど症状が強くなく、頭痛やしびれ、ろれつが回らないなど脳の病気を疑う症状がなければ、落ち着くまで安静にして様子を見ても構いません。症状が強い場合や翌日までおさまらない場合は耳鼻咽喉科を受診しましょう。

耳鼻咽喉科では、めまいの特徴や症状を問診し、どの病気か見極めます。耳鳴りや難聴、耳の閉そく感などがあれば、突発性難聴やメニエール病も考えられます。また、動脈硬化によって血管が硬くなることで血流の調整がうまくいかなくなり、起き上がったときに脳血流不足でめまいが起こることもあります。良性発作性頭位めまい症はどちらかというと起きた状態から横になったときに強くめまいが出る傾向があるので、そうした特徴を細かく問診することで判別します。

良性発作性頭位めまい症が疑われる場合、「フレンツェルのメガネ」と呼ばれる特殊なメガネや「赤外線カメラ」で目の動きを観察する「頭位・頭位変換眼振検査」を行います。この検査で頭を動かしたときに目が左右に振れる「眼振」が起これば、良性発作性頭位めまい症と診断されます。

そのうえで、頭や体を動かすことによって耳石を戻す治療法「頭位治療(浮遊耳石置換法)」を行います。この治療法は、一番異常が起きやすい後半規管にできた浮遊耳石を出す場合に有効です。7割くらいの人に有効であることから、1週間以内に治ると言われています。また、その場でめまいがおさまる人もいます※3、4。なお、この治療法はめまい全般の治療に有効なわけではありません。自然治療が期待できる疾患であり、嘔気のある人、頸椎や腰部に疾患のある人には、この治療は行いません。

※3:武田憲昭:めまいのリハビリテーション.耳石置換法と平衡訓練.日耳鼻会報 120:9-14, 2017.
※4:Sekine T et al: Natural history of benign paroxysmal positional vertigo and efficacy of Epley and Lempert maneuver. Otolaryngology – Head and Neck Surgery 135:529-533, 2006.

そのほか、症状に合わせて抗めまい薬、抗不安薬、睡眠導入薬、内耳の循環を改善させる薬などを併用する場合もあります。こうした治療により、多くは1〜2週間で軽快しますが、まれに長期間治らない難治性の人や、脳の病気など別の病気が隠れている場合もありますので、なかなか治らない場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

不安をコントロールして適度に頭を動かす

初めて発作を経験したときは脳に問題が起こったのではないかと不安になったり、症状が強いと頭を動かすことが怖くなってしまったりする人もいます。しかし、良性発作性頭位めまい症は治りやすい病気です。

繰り返さないための対処法としては、過度に怖がって頭を動かさないよりは、可能な範囲でなるべく積極的にいろいろな方向に頭を動かすほうがよいでしょう。頭への衝撃は避けたいですが、頭の位置を固定するような同じ姿勢を長時間続けず、適度に動くことも心掛けましょう。

就寝中は寝返りを打つほうがよく、寝る前に2〜3回枕の上で寝返り、または頭を左右に振ってから寝ることをおすすめします。枕なしで寝ると耳石器が後ろに傾き耳石が半規管に入りやすくなるので、めまいが起こりやすい人は頭の位置をやや高くして寝るほうがよいでしょう。

■良性発作性頭位めまい症を軽減する寝返り体操

なかには、振動や回転などの刺激に対する前庭自律神経反射全般が過敏になってめまいを起こしやすくなっている人もいます。生活リズムが乱れると自律神経機能が狂うので、生活全般を規則正しく整えることが大切です。

不安をコントロールして体とうまく付き合っていくには、全くめまいが起こらない100点を目指すのではなく、加齢やストレスなどさまざまなことを受け入れながら、80点くらいで日常生活がおくれることを目指す、よい意味での寛容さも必要かもしれません。

監修者プロフィール
室伏利久先生(帝京大学医学部附属溝口病院耳鼻咽喉科教授)

【室伏利久(むろふし としひさ)先生プロフィール】

帝京大学医学部附属溝口病院耳鼻咽喉科教授
1959年愛媛県生まれ。85年東京大学医学部医学科卒業。92年医学博士(東京大学)。シドニー大学(オーストラリア)に留学。東京大学医学部耳鼻咽喉科講師、東京逓信病院耳鼻咽喉科部長を経て、帝京大学医学部附属溝口病院耳鼻咽喉科教授。専門領域は耳鼻咽喉科学、神経耳科学。2012年にBarany Societyから学会賞であるHallpike-Nylen Prizeを受賞。現在、日本めまい平衡医学会第79回大会会長、姿勢と歩行研究会代表世話人、日本耳科学会代議員。著書に『加齢とめまい・平衡障害』(新興医学出版社)、『めまいの診かた、治しかた』、『めまいの起源を求めて』(中外医学社)など。

サワイ健康推進課公式Twitter

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