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頭痛・風邪・熱

緊張型頭痛を和らげるストレッチ方法

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監修/竹島 多賀夫先生(富永病院 副院長)

後頭部から首筋を中心に「頭全体がギューッと締め付けられるような鈍い痛み」、「ヘルメットをかぶっているような圧迫感」などと表現される緊張型頭痛。身体的・精神的ストレスによって誘発されることが多く、デスクワークなどで長時間同じ姿勢をとり続けている人に起こりやすいといわれています。痛みを感じた時に、セルフケアで手軽に実践できるストレッチの方法について、富永病院副院長の竹島多賀夫先生に伺いました。

緊張型頭痛の原因と症状

緊張型頭痛は、脳や体には病気や原因がなく、頭痛そのものが疾患である一次性頭痛(慢性頭痛)の一つです。緊張型頭痛はライフスタイルと密接に関連しており、日常生活で蓄積されるストレスが大きく影響すると考えられています。

筋肉の緊張やこりが主な原因

頭痛の主な原因は大きく2つあります。同じ姿勢や動作を長時間続けることで体が緊張状態になる身体的ストレス。もう一つが仕事や人間関係、生活環境の変化から生じる精神的ストレスです。心身がストレスを感じると、肩や首の筋肉がとても緊張します。それが続くと筋肉組織周辺の血流が悪化したり、血管の収縮が繰り返されたりして頭痛が起こります。

忙しい状態が続いたり、日常生活に問題を抱えていたりすると、無意識のうちに心身にストレスが蓄積して頭痛が起きやすくなります。日ごろの生活を振り返ってみて、ストレスと考えられる動作や問題点を見つけ、適切にコントロールすることが頭痛予防への第一歩となるでしょう。

頭痛の特徴と他の症状

緊張型頭痛の特徴は、後頭部から首筋を中心に頭全体がギューッと締め付けられるような鈍い痛み、ヘルメットをかぶっているような圧迫感、じわじわと続く鈍い痛みです。頭痛は、短いと30分程度、長い場合は1週間程続きます。痛みは軽度~中等度で、寝込むことはなく、日常生活への支障はそれほどありません。多くの場合、たまに痛む程度ですが、中には3カ月以上にわたり月に15日以上症状が現れる人もいます。

頭痛の回数が少なく、日常生活に支障がなければ様子見でも大丈夫ですが、毎日のように頭痛があって活動が著しく制限される場合や、頻度・重症度が増している場合には治療が必要になります。

ストレスや姿勢の影響

頭痛には頭部の血管、神経、そして頭蓋を覆う筋肉が深く関わっています。そして前の項で述べたように、筋肉の緊張と心身のストレスは互いに影響し合う悪循環にあるといえます。頭痛というサインになって現れる前にこの悪循環を断ち切りましょう。日頃からストレス解消法や自分なりのリフレッシュ方法を見つけ、ストレスをため込まないことが大切です。

デスクワークで長時間同じ姿勢で過ごすと、頭頸部から肩にかけての筋肉がガチガチにこり固まってしまいます。こうした筋肉の緊張状態が周辺組織の神経を刺激するとともに血流を低下させ、頭痛につながるとみられています。また、スマートフォンの長時間使用や、猫背などの悪い姿勢の継続が首や肩の筋肉の緊張を招き、頭痛を悪化させる要因となっています。

ストレッチや体操で筋肉の緊張をほぐし、リラックスする時間を意識してつくったり、こまめに体を動かす習慣をつけたりすることが緊張型頭痛予防の第一歩となります。

緊張型頭痛に効果的なストレッチ

適度な運動や体操は、身体のこりやこわばりをほぐし、頭痛を予防するのに有用です。特に緊張型頭痛は体を動かして血行を促すことで痛みが緩和しますので、上手に取り入れてみてください。

首と肩のストレッチ

頭痛予防に効果的なのが、首や肩まわりのストレッチです。日本頭痛学会では、片頭痛の予防および緊張型頭痛の緩和を目的とした「頭痛体操」をおすすめしています※1。主に側頭筋や後頸筋、首の後ろから背中にかけて肩甲骨を覆う僧帽筋をほぐすストレッチで、筋肉のこりや疲れを取り、頭痛を和らげる効果が得られるよう考えられています。

頭痛体操は、首を動かさないことがコツです。首(頸椎)をコマの軸に見立て、「コマ回し」のイメージで肩や腕を左右交互に水平に回します。頭や首を支えている筋肉をリズミカルに左右交互に回すことでストレッチ効果があります。

■後頸筋を伸ばす腕を振る体操 [2分間行う]

■僧帽筋を伸ばす肩を回す体操 [6回繰り返す]

無理をせず、身体の痛みを感じない範囲で行ってください。また、頭痛の症状が強く出ている時は動くことで痛みが増すこともあるので、安静にすることを優先しましょう。1日2〜3セット行うことで筋肉の緊張が和らぎ、頭痛の改善が期待できます。

※1:日本頭痛学会「1日2分の頭痛体操」(https://www.jhsnet.net/pdf/zutu_taisou.pdf別ウィンドウで開きます)を2025年2月3日に参照

頭皮と顔のストレッチ

頭皮や顔のストレッチも緊張型頭痛の改善には効果的です。頭皮のストレッチでは、両手の指先を使って頭皮を優しくマッサージします。爪を立てないように注意しながら、指の腹で円を描くように頭皮全体を揉みほぐしましょう。

顔のストレッチでは、目のまわりや眉間(みけん)、こめかみ、頬、あごと、顔全体を両手の手のひらを使って優しく押すようにマッサージします。入浴して体がほどよく温まり、リラックスした後などにこれらのストレッチを行うことで、頭皮や顔の筋肉の緊張が和らぎ、頭痛症状の軽減も期待できます。

ストレッチの継続と生活習慣の改善

適度な運動や正しい生活習慣は、頭痛予防だけでなくさまざまな病気に対処する免疫力アップにつながり、筋力の維持など、身体基盤を整えるのに有効です。

ストレッチの頻度

手軽に実践できるストレッチを1日1〜2回、1回につき10分程度続けるのが理想的です。起床後と就寝前の決まったタイミングに行うなど、日常的なルーティンに組み込むことで、無理なく続けられるようになります。

正しい姿勢の保ち方

正しい姿勢は頭痛予防に欠かせません。猫背や前かがみの姿勢は、首や肩の筋肉に負担をかけ、頭痛の原因になることがあります。

椅子に座る際は背筋を伸ばし、お尻を椅子の奥までつけると、自然と正しい姿勢になります。パソコンやスマートフォンを使用する際は目線が下がりすぎないように画面の高さを調整しましょう。足を組んだり、長時間同じ姿勢が続くことは避け、こまめに姿勢を変えたりストレッチを取り入れたりするのも大事です。こうした小さな習慣の積み重ねが、次の痛みの発生を防ぐことにつながります。

生活習慣の改善とセルフケア

緊張型頭痛の予防は、頭痛の原因となるストレスをいかに回避するかが重要なカギになります。そのために必要なのが、ストレスマネジメントと生活習慣の改善です。まずは生活リズムを整えましょう。規則正しい食事や睡眠は心身のストレスを軽減して頭痛を予防するだけでなく、心身を健やかに維持するための基本となります。そして、どんな状況で頭痛が起こりやすいかという自身の傾向を知ることも大切です。小さな積み重ねが緊張型頭痛の予防につながります。

食事の観点からいうと、緊張型頭痛に良いとされる食べ物や、逆に原因となる食べ物はありません。バランスよく、規則的に食事を摂ることを心がけましょう。

長時間の同じ姿勢は避け、意識して体を動かして筋肉の緊張をほぐすほか、深呼吸や瞑想などのリラクセーション法も、ストレスの解消や緊張状態の緩和につながります。自分に合ったリラックス方法を見つけて、ストレス発散を心がけましょう。

専門家による治療とアドバイス

慢性化すると、頭痛を感じても「いつものこと」として放置してしまっている人も多いでしょう。しかし、頭痛の専門家による治療やアドバイスを受けることで、我慢してきた痛みから解放され、生活の質(QOL)の改善も期待できます。

医師による診断と治療

セルフケアでは改善が難しい場合、医師による診断と治療を検討することも大切です。特に、連日痛みの症状が出る慢性緊張型頭痛は専門医の受診が必要な場合があります。平均して1カ月に15日以上続く頭痛が3カ月を超えて起こる場合は、頭痛専門医や総合内科専門医、脳神経内科、脳外科などの受診をおすすめします。日本頭痛学会Webサイト(https://www.jhsnet.net/ichiran.html別ウィンドウで開きます)の認定頭痛専門医一覧も参考になります。

できれば、頭痛ダイアリーをつけて症状や生活習慣を記録しましょう。どんな時に、どのような頭痛に悩まされるのかが客観的に分かるとともに、診察する医師にも具体的な情報がきちんと伝わります。頭痛の頻度が高くなったり、新たな症状が現れたりした場合は、ほかの病気の可能性があります。ためらわずに医療機関を受診しましょう。

理学療法士によるアドバイス

理学療法士は、リハビリの専門家です。緊張型頭痛に効果的な運動プログラムをはじめ、マッサージや頸部指圧、正しい姿勢など、さまざまなアドバイスが受けられます。理学療法士が勤務する病院や診療所、スポーツ施設やフィットネスジムなどで指導が受けられますが、まずはかかりつけ医に相談してみるとよいでしょう。

日本頭痛学会が推奨する頭痛体操に沿ったメソッドで、首や肩周りの筋肉をゆっくりと伸ばすストレッチや、頭皮のマッサージ法、正しい姿勢の保ち方、デスクワークの合間に取り入れられる簡単な運動などが学べます。

鍼灸・マッサージ療法の効果

片頭痛や緊張型頭痛などのはっきりした原因や疾患のない一次性頭痛の痛みを和らげたい時、セルフケアでできるのがツボ押しです。頭痛に効果的とされるツボを押すことで、筋肉の張りの緩和と、押した部位の循環改善、痛みの緩和が期待できます。

頭痛の改善において鍼灸治療の効果が今後の臨床で期待されています。頭部や首、肩の筋肉の緊張を和らげるツボを鍼で刺激し、血流を改善してこりをほぐします。日本頭痛学会が作成した『頭痛の診療ガイドライン2021』※2では、薬物療法以外の頭痛治療として、鍼灸が「弱い推奨」に位置付けられています。鍼治療は専門的な知識と技術が必要ですが、灸はやけどの危険性が少ない市販品も多く出ています。

マッサージ療法では、頭皮や首、肩のこりを指圧やもみほぐしでケアし、筋肉の緊張を和らげます。これらの専門的な治療は、セルフケアと併用することで相乗効果が期待できます。鍼灸師やマッサージセラピストの専門家の手による心地よい刺激が緊張型頭痛の緩和に役立つこともあるので、
自身にあった痛みのケアを見つける一助にしてはいかがでしょうか。

※2:日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修・「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会編集 『頭痛の診療ガイドライン 2021』医学書院(2021)

監修者プロフィール
竹島 多賀夫先生(富永病院 副院長)

【竹島多賀夫(たけしま たかお)先生プロフィール】

富永病院 副院長
1984年鳥取大学医学部卒業。医学博士、神経内科専門医、頭痛専門医。鳥取大学医学部・脳神経内科助手、講師、助教授、准教授を経て、2010年より現職。米国国立衛生研究所(NIH)に留学、神経細胞分子生物学研究に従事。頭痛症、パーキンソン病に関連した論文、著書多数。頭痛の知識の普及のため講演活動も積極的に行っている。日本頭痛学会代表理事、日本神経学会元理事、京都大学医学部臨床教授。

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