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病気と医療の知って得する豆知識

頻尿は健康の曲がり角のサイン

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監修/堀江 重郎先生(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授)

最近トイレの回数が増えてきた、就寝中もトイレに行きたくて目が覚めてしまう……。そんな症状に悩まされていませんか? こうした症状が生じる背景には生活習慣病などが隠れている場合もあるので注意が必要です。頻尿の正しい知識について、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学の堀江重郎教授に伺いました。

自分自身の排尿の状態を知ろう

普段、何気なく行っている生理現象である排尿。一般的に排尿の回数は1日に5~7回くらい(昼間の排尿の間隔が約3~5時間)が正常といわれています。1日の排尿回数が8回以上に及ぶと「頻尿」とされます。

また、毎晩のように就寝後から起床前までの間に排尿のために起きなければならない場合は、「夜間頻尿」と見なされます。

夜間頻尿かどうかを判断する回数の目安は年代によってやや異なります。前日に水分を摂り過ぎた場合を除いて、70代以上になると就寝中に2回程度、排尿のために起きるのは不自然なことではなくなりますが、60代以下の場合は1回以上起きるようであれば夜間頻尿と考えられます。

頻尿の原因には昼夜問わず、水分の摂り過ぎや加齢による膀胱の筋肉の衰えなどがあります。なお、頻尿を防ぎたいからと水分の摂取を控える人も少なくありませんが、体内の水分量が減ると血流が滞り、脳梗塞や心筋梗塞などの虚血性心疾患の要因になる場合があります。

成人の場合、1日に必要な水分量は約2.5ℓとされています。そのうち、約1.0ℓは食べ物から摂取され、体内で作られる水は約0.3ℓであり、水などの飲料から約1.2ℓ摂ることが必要になります。ただし、アルコールやカフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、なるべく避けましょう(※1)。

参考:(※1) 厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動HPより

ちなみに、通常尿の量は成人1回あたり200~400㎖といわれています。このほか、皮膚からの蒸発や汗、呼気などから水分が排出されています。

衰えた膀胱を鍛える簡単エクササイズ

年齢とともにトイレの回数が増えるのは、排尿の加齢現象の一つです。その背景には「膀胱の筋肉の衰え」があります。

膀胱は厚いゴム風船のような筋肉の袋ですが、加齢に伴う動脈硬化などで膀胱の血流が減少すると筋肉の柔軟性が失われて紙風船のように伸縮性が落ちていきます。すると膀胱の容量も少なくなり、尿を十分にためることができなくなるのです。

しかし、衰えた筋肉は意識的に動かすことで回復させることが可能です。膀胱の筋肉を直接動かすことはできませんが、下腹部を動かすことで間接的に膀胱の筋肉を鍛えることができます。

テレビを見ているときや仕事の合間などにも簡単にできる次のエクササイズを、ぜひ日常生活に取り入れてみましょう。

■肛門エクササイズ

1.肛門をギューッと5秒くらい締める

2.その後、肛門を緩める。

1と2を交互に10回ずつ行う。

このほかにスクワットやウォーキングなども、足腰はもちろん、間接的に膀胱の筋肉を鍛えるうえで効果的です。ひざに痛みがある場合などは無理のない範囲で行いましょう。

頻尿、夜間頻尿に関わる病気とは

高血圧や糖尿病、脂質異常症などさまざまな病気が夜間頻尿を引き起こす一因になっている場合もあります。

頻尿や夜間頻尿と主な病気の関係について見ていきましょう。

■糖尿病によって尿の量が増える

尿の量が多くなると日中のトイレの回数が増えるのはもちろん、夜間頻尿にもつながりやすくなります。

尿の量が増える最大の原因は「水分の摂り過ぎ」ですが、糖尿病も大きな要因となります。糖尿病はインスリンの作用不足により血糖値の上昇を抑える働きが低下してしまう病気です。血糖値が高くなると血液中のブドウ糖濃度も濃くなるため、それを薄めようと細胞の水分が血液に引っ張られます。結果、血液量が増えて、尿の量も増加するのです。

体内の水分が不足することで喉が渇きやすくなり、さらに水分を摂り過ぎてしまうという悪循環にもつながりやすくなります。

■生活習慣病によって膀胱の柔軟性が下がる

尿を十分にためてしっかり出し切るためには、膀胱や膀胱の出口の筋肉が柔軟であることが重要です。

膀胱で作られるガスの一酸化窒素には膀胱の筋肉に柔軟性を与える作用がありますが、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病があると、一酸化窒素が作られにくくなります。すると膀胱が硬くなり、ためることのできる尿の量も減ってしまうため、日中だけでなく夜間にも尿意をもよおしやすくなるのです。

■睡眠時無呼吸症候群によって膀胱が硬くなり、尿量も増える

就寝中は体を休めるために自律神経の副交感神経が優位になるのが一般的ですが、睡眠時無呼吸症候群があると無呼吸と呼吸の繰り返しによって寝ている間も苦しくなることで脳が覚醒し、交感神経が優位になります。

交感神経の働きで全身の筋肉が緊張すると、本来は柔軟性のある膀胱も硬くなりやすくなります。一方で心臓から「利尿ホルモン」が分泌されて尿量が増えるため、膀胱の容量が早いペースでいっぱいになりやすいのです。

心臓病で心臓のポンプ機能が低下した場合も利尿ホルモンにより、就寝中の尿量が増える傾向にあります。

■尿崩症によって膀胱が満タンになりやすくなる

就寝中に分泌される「バソプレシン」というホルモンには、腎臓での水分の再吸収量を増やし、膀胱にたまる尿の量を起きている日中より少なくする作用があります。

このバソプレシンの合成や作用に支障をきたす「尿崩症」という病気になると、夜間でも日中と同じくらいのペースで膀胱に尿がたまりやすくなります。

このほか、男性の場合は加齢によって前立腺が肥大化し、尿道や膀胱が圧迫され、さまざまな排尿障害が出てくることから、夜間頻尿を招く場合もあります。

気になる症状があれば早めに医療機関へ

日中のトイレの回数が多いのも、夜間に起きてトイレに行かなくてはならないのも、どちらも不快であることに変わりはありません。

しかし夜間頻尿のほうが、生活面や健康面においてより深刻な状態だといえます。トイレのために睡眠が妨げられることで、日中眠気に襲われてボーっとしてしまうなど、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が低下してしまうからです。

男女問わず、40代以降から夜間頻尿の症状を有する人が増えていきます。寝る前に水分を摂り過ぎているわけではないのに、夜中にトイレに行きたくて目が覚めることが続くようなら「健康の曲がり角」と自覚したほうがよいでしょう。

定期的な健康診断はもちろんのこと、病気の疑いがある場合もあるので早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

監修者プロフィール
堀江 重郎先生(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授)

【堀江 重郎(ほりえ しげお)先生プロフィール】

泌尿器科医。医学博士。1985年東京大学医学部卒業。88年米国テキサス大学で腎臓学の研究、移植医療に従事。国立がんセンター中央病院泌尿器科、帝京大学医学部主任教授などを経て、12年より現職。日本抗加齢医学会理事長。『寿命の9割は「尿」で決まる』(SB新書)など著書多数。

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