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手足・腕・肩・腰

冬こそ注意したい水虫対策!

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監修/田沼弘之先生(田沼皮膚科医院院長 日本医科大学付属病院皮膚科連携教授)

暖かい部屋の中で厚手のソックスを履きっぱなし、外出時は密閉力の高いブーツを長時間着用……。足元を冷えや寒さから守るための対策が、実は冬でも水虫に悩まされる要因になっている可能性があります。自己判断で間違ったケアや治療を行うと、ますます悪化したり慢性化したりしてしまいます。冬だけでなく、一年中水虫知らずの足を保つためのポイントなどを、田沼皮膚科医院院長で、日本医科大学付属病院皮膚科連携教授も務める田沼弘之先生に伺いました。

はがれ落ちた皮膚についた菌にも要注意

足がかゆくなる、足の指と指の間が白くふやけてジクジクする……。こうした不快な症状を伴うのが水虫です。

その原因となるのが、真菌(カビ)の一種である白癬菌はくせんきんです。白癬菌は、皮膚の一番外側にある角層の主成分であるケラチンをエサにして増殖します。

増殖がそのまま進むと、皮膚の中では「白癬菌=異物(アレルゲン)」と認識されるようになります。すると皮膚の奥にある真皮の細胞に「異物が侵入してきたぞ」という情報が伝わり、これに対抗しようと免疫関連の物質やたんぱく質分解酵素の分泌が促進。この作用が過剰になると炎症の原因となり、水虫のさまざまな症状となって現れることになるのです。

白癬菌は主に保菌者の使ったスリッパやバスマットなどを介して感染します。垢となってはがれ落ちた皮膚に付着した菌などが感染源になり得ます。水虫の人がいる家庭内や、公衆浴場、スポーツジムなどの公共施設で床やカーペットの上を素足で歩いたり、スリッパやタオルを共有したりすることは感染リスクを高めます。

同じ靴を毎日続けて履くのはNG

白癬菌には高温多湿を好む性質があります。梅雨の時期から夏ごろにかけて水虫に悩まされる人は少なくありませんが、近年は暖房の影響などで冬場でも水虫の患者さんは増加傾向にあります。

さらに冬場は厚手のソックスやブーツなどを長時間着用する機会も多いもの。足が蒸れることで白癬菌が増殖しやすくなるというリスクがあります。女性の場合はタイツやストッキングの着用も水虫の要因になります。

とはいえ、素足で過ごすのは冬場だと冷えるのはもちろん、人に感染させる可能性も高まるので避けましょう。通気性のよい綿100%や絹、麻などの自然素材のソックスなどを身につけるのがおすすめです。

なお、ブーツに限らず、1日履いた靴はその翌日でも白癬菌が繁殖し得る環境(湿度)が維持されています。同じ靴を毎日履くのはやめ、翌日は別の靴に履き替えましょう。特に、雨の日の翌日は必ず履き替えることが大切です。

水虫の3つのタイプをチェック!

水虫は、「趾間しかん型」「小水疱しょうすいほう型」「角質増殖型」という3つのタイプに分類されます。

■水虫のタイプ別特徴と主な治療法

趾間型 足の指と指の間に発症し白くふやける、ジクジクする、皮がむける、赤くふくらむ症状。外用抗真菌薬で治療 小水疱型 足裏や足の側面に発症し 赤いポツポツができる、強いかゆみを伴う、小さな水ぶくれがたくさんできる症状。外用抗真菌薬で治療 角質増殖型 足裏全体、かかと、足底の側面に発症し 皮膚が硬く厚くなる、ヒビやアカギレと間違えやすい症状。抗真菌薬で治療

出典:西山茂夫,田沼弘之,皮膚真菌症を診る No.1足白癬菌,ファーマインターナショナル,東京,1994,p1-7

強いかゆみなどがあると「水虫かも?」と思って皮膚科などを受診する人は多いようですが、実際に診察するとほかの皮膚疾患である場合も少なくありません。

反対に、患者さん本人が水虫とは思っていないことが多いのが、上に挙げたうちの一つ「角質増殖型」です。特に冬場は皮膚の乾燥によるひびやあかぎれと混同しやすい傾向にあります。足の爪の変色や変形などがみられる「爪白癬(爪の水虫)」との合併率が高いので、自己判断によるセルフケアを行ったり、逆に放置したりするのは避けましょう。水虫の再感染や慢性化を引き起こす火種となる可能性があります。

いずれの水虫の場合も、症状に気がついたらできるだけ早く皮膚科を受診するとよいでしょう。

治療は医師のOKが出るまで継続

水虫の慢性化や再発を防ぐためには、症状が治まってきたからといって自己判断で治療をストップしないことが大切です。医師の診断によって白癬菌が検出されなくなり、明らかに治癒したと判定されるまでは治療を継続しましょう。

治療を無理なく継続するコツは「習慣化」にあります。外用剤で治療を行う場合は、「入浴後に必ず塗る」というようにルーティン化するとよいでしょう。

「角質増殖型」の治療は抗真菌薬の内服が第一選択となりますが、さまざまな理由で内服できない場合には外用抗真菌薬を用います。ただし外用抗真菌薬だけでは十分な効果を得にくいこともあるため、古い角質をはがし落とす作用のある尿素配合の軟膏や、外用剤を塗布した部分をラップなどで覆って角質を柔らかくする密封療法などの併用が考慮されます。

「足裏やかかとにひびがあるから保湿をしたほうがよいのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、一般的な保湿剤には水虫の治療効果がないのはもちろん、せっかく塗った外用抗真菌薬の薬剤濃度が薄まってしまうというデメリットもあります。保湿したい場合は、外用抗真菌薬を塗布した後に尿素配合の軟膏を塗るとよいでしょう。

ていねいに洗い、よく乾かすケアを

水虫を防ぐセルフケアで重要なのは、足についた白癬菌をその日のうちにしっかり落とし、清潔に保つことです。

入浴時にはよく泡立てたせっけんで、指の間までやさしくていねいに洗いましょう。洗った後は水分をよく拭き取って、きちんと乾燥させます。いつまでも皮膚が湿ったままの状態にしておくと、高温多湿を好む白癬菌の増殖を許してしまうことになりかねません。なかなか乾きにくい場合はドライヤーなどを使用するのも一考です。

なお、治療はあくまでも医療機関で受けるのがベストですが、市販薬も発売されています。

■市販薬の成分の特徴

塩酸テルビナフィン ・“アリルアミン系”とよばれるタイプで、白癬菌に対しての殺菌作用が強い 1日1回を目安に使用 塩酸ブテナフィン ・ベンジルアミン系”とよばれるタイプで、殺菌作用は、塩酸テルビナフィンと同程度 1日1回を目安に使用 ラノコナゾール ・“イミダール系”とよばれるタイプで、高い殺菌力と幅広く菌に効き、医療の現場でも広く使われる・現在販売が認められている市販薬の中では、殺菌力がより強いタイプ 1日1回を目安に使用

出典:田沼弘之,角質増殖型足白癬菌の外用・内服療法,日本臨床皮膚科医会誌68:138-143,2001

ただし、市販薬に含まれるかゆみ止めなどの添加物が、かぶれなどの接触皮膚炎を引き起こす場合があります。皮膚に異常を感じた場合はすぐに使用を中止し、医師に相談することが大切です。

監修者プロフィール
田沼弘之先生(田沼皮膚科医院院長 日本医科大学付属病院皮膚科連携教授)

【田沼弘之(たぬま ひろゆき)先生プロフィール】

田沼皮膚科医院院長 日本医科大学付属病院皮膚科連携教授
1982年北里大学医学部卒業。皮膚科全般にわたり診療を行い、特に皮膚真菌症、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、掌蹠膿疱症、疱疹後神経痛などの難治性皮膚疾患についての治療およびデルマドローム(内臓疾患に伴う皮膚疾患)の原因解明に力を注いでいる。

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