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足底腱膜炎(そくていけんまくえん)とは?症状と原因、治療法とセルフケアについて解説

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監修/桑原 靖先生(足のクリニック 表参道院長)

歩いていたり、ランニングしたり、長時間立ちっぱなしの状態だったりと、日常生活における何気ない行動の中で、足の裏やかかとが痛くなる――。その原因として、足のアーチ構造を構成する腱膜が炎症を起こす「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」が疑われます。そこで、足底腱膜炎の症状と原因、治療法、さらにセルフケアについて、足のクリニック 表参道の桑原靖院長に伺いました。

足底腱膜炎とは

足底腱膜炎とは、足底腱膜が炎症を起こし、痛みが生じる疾患のことです。足の裏には、かかとからそれぞれの指の付け根へと及ぶ靭帯性の「腱」が膜のように広がっており、この膜のことを「足底腱膜」と呼んでいます。

足底腱膜炎の発生箇所

足底腱膜炎の発生箇所

足底腱膜の役割

足底腱膜は足の裏のアーチ部分である「土踏まず」を支えるとともに、歩行時に少しだけたわんで、足への衝撃をやわらげる働きもあります。また、アキレス腱と連動して、効率よく踏み返し動作を行うといった作用もあります。

足底腱膜炎の症状

初期段階では、朝起きたときに痛みを感じたり、歩行開始時に痛みがあったりしても、歩いているうちに自然と治まってくることが多いため、そのままにしてしまいがちです。ですが、放っておくと痛みが慢性化したり、治りにくくなったりする場合もあります。さらにそれをかばうことで別の場所が痛くなってしまうこともあります。

以下のチェックポイントに該当する場合は、早めに足に関する病気を専門とする医療機関や整形外科を受診しましょう。

■症状チェックポイント

足底腱膜炎の原因

ふくらはぎやアキレス腱が硬い人、足を引き上げる力が弱い人、スポーツや激しい運動で過度な負担をかける人、足の裏のアーチが崩れている人に加えて、加齢や肥満でも、足を踏み返すときに足底腱膜にかかる負担が大きくなり、足底腱膜炎になってしまいます。通常、かかとからふくらはぎの筋肉やアキレス腱が柔軟である場合、痛みは出ません。

10~20代の若年層に多いのが、激しいスポーツや運動を繰り返し行うことで足の裏に強い衝撃を受けて足底腱膜がダメージを受けることです。マラソンやジョギングなどを長距離で、特にアスファルト舗装された硬い道を走っているときは注意しましょう。長時間の立ち仕事も疲労の蓄積によって足底腱膜への負荷が大きくなります。高齢者は老化によって足底腱膜の線維が弱くなるため、激しい運動をしていなくても足底腱膜炎になる傾向があります。肥満も足にかかる負担が大きいことから、足の裏に強い衝撃がかかるような運動はできるだけ注意することを心がけましょう。

また、足のアーチの構造が崩れている場合は足底腱膜炎にかかりやすい傾向があります。例えば、アーチが低い(扁平足)人が該当します。アーチが下がってしまう足は、足底腱膜の起始部である踵骨(しょうこつ)に大きな負荷がかかります。ほかにも、ヒールのある靴を履くのが楽な人は、アキレス腱が硬いことの裏返しであり、かかとに重心がかかりがちです。気づかないうちに足首が硬くなって、前傾姿勢を取れなくなってしまいます。サイズが合わない靴を履き続けるのも足底腱膜炎を誘発するので注意が必要です。

足底腱膜炎の検査・治療法

足底腱膜炎の疑いがある場合は、生活習慣や整形外科的な病気の有無などの問診、痛みの程度や部位についての触診などを行い、踵骨に腱膜が付着する場所に圧痛があれば足底腱膜炎を疑います。そのうえで、エックス線検査や超音波検査、MRI(磁気共鳴画像装置)検査を適宜行い診断します。足底腱膜炎そのものはエックス線に写りませんので、足底腱膜炎に伴って生じることのあるかかとの骨棘(こつきょく)の有無を調べることで、過去(半年以上前)に足底腱膜炎であったかどうかの判断をします。最近発症したものに関しては、超音波検査で足底腱膜付着部周囲などの腫れや肥厚(ひこう)・炎症の有無などを確認します。MRI検査では、かかと周辺を含めた全体像の把握や炎症の程度・範囲、腱の異常まで調べることができます。

治療法は、投薬や理学療法を行うことが基本です。痛みを取るために、非ステロイド性消炎鎮痛剤や湿布で炎症を抑えます。しかし、これだけでは根本的な解決にはなりません。理学療法士によるリハビリテーションを行ったり、完全オーダーメードの足装具(インソール)を作り、足底部のアーチ形態を整えたり、補正して足部の立体構造を改善する方法があります。インソールは、一人ひとり足型を取り、足の特徴や癖に合わせて製作するため、義肢装具士 (インソールと高い専門知識のあるスタッフ)がいる医療機関を受診することをおすすめします。足底腱膜炎の多くは、これらの治療法で症状が改善されます。

歩行が厳しい、仕事に支障が出てしまうほどの痛みを伴う場合は、ステロイドの注射を行うことがあります。直接患部に注射することで、数日後には痛みの改善が期待できますが、結果としての痛みを治療しているだけですので、原因を見抜いて解決をしておかないと再発するリスクが大きくなると考えられます。ですので、インソールの使用や靴の見直し、リハビリテーションなどの総合的な介入が大切です。

さらに、従来の一般的な治療を受けても症状が改善しない場合には、施設によっては体外衝撃波治療 という選択肢があります。皮膚の上から非連続性の圧力波である衝撃波を照射する治療方法です。この治療は、2012年1月から保険適用※1になっています。

※1:(https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-179.pdf)を2024年1月24日に参照

足底腱膜炎のセルフケア

足底腱膜炎は、歩行時や運動時に足底腱膜にかかる負担を軽減すること、足首や足、ふくらはぎの筋肉を柔軟に保つことが大切です。足が地面に接するときの衝撃を吸収できるようなクッション性の高い靴を履く、自分に合ったインソールを靴に入れるといった予防をすることで、足底腱膜への負担が軽減できます。足首や足、ふくらはぎの筋肉を柔軟に保つために、アキレス腱を気持ちよく伸ばすストレッチや足底腱膜の疲労解消のためのマッサージも効果的です。ストレッチを行うタイミングは朝起きたときや、たくさん走ったり歩いたりした後、お風呂上がりなどが良いでしょう。

・アキレス腱ストレッチ

片方の足を後ろに下げ、前に出ている足のひざをゆっくり曲げていきます。伸ばした足のアキレス腱がしっかり伸びるのを感じながら30~60秒程度キープ。足を入れ替えて反対側も同様に行います。1日2~3回を目安にして、アキレス腱を意識しながら行いましょう。

・ふくらはぎのストレッチ

痛みがあるほうの足を後ろに大きく引きます。そのときに、かかとはしっかり床に付けましょう。前に出している足の膝に両手をのせて、ゆっくりと重心を前に出している足に移動させます。足を入れ替えて反対側も同様に行います。1日2~3回行うと良いでしょう。重心を移動させるときは、ふくらはぎを意識しながら行いましょう。

・テニスボールを使ったストレッチ

椅子に座って、土踏まずの部分でテニスボールを転がすようにしてストレッチします。3分×3回行います。足を入れ替えて反対側も同様に行います。

・足底腱膜ストレッチ

床に座ってストレッチするほうの足のひざを立てます。片方の手で足指をゆっくり反らせながら、もう片方の手のひらで足の裏をよくもみほぐします。反対側の足も同様に行います。

※普段歩いているときなどに痛みがある部位は、ストレッチを行わないようにしましょう。また、床面が安定し、周りに障害物がない場所で行いましょう。

毎日使う足だからこそ、足の裏に過度な負担をかけずに、いつまでも元気な歩行ができるように気をつけましょう。

監修者プロフィール
桑原 靖先生(足のクリニック 表参道院長)

【桑原靖(くわはら やすし)先生プロフィール】

足のクリニック 表参道院長
2004年、埼玉医科大学医学部卒業。2006年、埼玉医科大学形成外科に入局し、創傷治療学、難治性創傷治療を専攻。外来医長、フットケアの担当医師を務める。2013年、東京・表参道に日本初の足専門クリニックを開院。形成外科、整形外科、皮膚科、血管外科、リウマチ科など、足に関する各分野で専門的な医療を提供。専門医、専門メディカルスタッフによるチーム医療を行い、密に連携を取ることで足の総合的な治療とケアを行う。日本フットケア・足病医学会評議委員。

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