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手足・腕・肩・腰

歩行開始時の痛みがサイン!誰でもなり得る足底腱膜炎(そくていけんまくえん)

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監修/菊池 恭太先生(下北沢病院 足病総合センター センター長)

歩いたり運動したりするときに最も負担がかかるのが足の裏。そうした負担や疲労が蓄積することで、足裏の筋肉を覆う「足底腱膜(そくていけんまく)」が炎症を起こし発症するのが足底腱膜炎です。誰でも発症するリスクがあるからこそ知っておきたい予防法や治療法について、下北沢病院 足病総合センター センター長の菊池恭太先生に伺いました。

歩行時にかかる足への負担に要注意

歩行時にかかる足への負担に要注意

朝起きて最初の一歩を踏み出した時に、かかとに強い痛みが走る。しかし、少し歩くとそのうちに痛みは自然と治まってくる。そんな症状を感じたことはありませんか?これは足底腱膜炎(足底筋膜炎ともいいます)の典型的な初期症状の一つです。

足底腱膜炎とは、足の裏のかかとの内側から指の付け根へと及ぶ靭帯性の膜である足底腱膜(下図参照)に炎症が起こり、痛みが生じる疾患のことです。

足底腱膜

足底腱膜炎の大きな要因として、歩行や運動などによって足底にくり返し負担がかかることが挙げられます。

普段、歩いていてもかかとや土踏まずなどに知らず知らずのうちに負担がかかっています。例えば過度なランニングなど走り回ることが多いスポーツをする人は、強い圧力と刺激を与え続けることにより足底への負担が蓄積し、足底腱膜炎になる可能性があると考えられます。

また、急激に足底に負担をかけることは、足底腱膜炎のリスクをより高めることになります。次のようなことを心がけましょう。

  • 激しい運動を急に行わない
    特に運動不足の人が新たに運動を始める場合は、少しずつ運動強度を上げて体を慣らしていくことが大切です。
  • 体重の著しい増加を防ぐ
    体重の増加は足底の負担の増加につながります。適切な体重維持に努めましょう。

足底腱膜が付着するかかとの骨のあたりは最も痛みが生じやすく、まれに土踏まずのあたりにも症状が現れる場合もあります。

ただし、初期段階では歩行開始時に痛みがあっても、歩いているうちに自然と治まってくることが多いため、そのまま放置してしまう例もみられます。放っておくと痛みが慢性化したり、治りにくくなったりする場合もあります。

歩行開始時の痛み以外にも、以下のチェックポイントに当てはまる場合は、できるだけ早く、足に関する病気を専門とする医療機関や整形外科を受診しましょう。

【症状チェックポイント】

※足底腱膜が傷つくことで、疾患部位だけがポコッと腫れる場合があります。ただし、かかとは脂肪が多いため、腫れはほとんど感じられません。

足のアーチと足底腱膜の関係とは

足底腱膜炎を発症するメカニズムとして知っておきたいことに、足底のアーチと足底腱膜との関係があります。

足には下記の3つのアーチがあり、足底腱膜はこれらを覆うように張られています。

【足の3つのアーチ】

1 内側の縦アーチ

内側の縦アーチ

かかとと親指の付け根を結ぶアーチ。「土踏まず」といわれる部分。

2 外側の縦アーチ

外側の縦アーチ

かかとと小指の付け根を結ぶアーチ。

3 横アーチ

横アーチ

5本の指の付け根を結ぶアーチ。

アーチは歩行時に自然と形を変化させ、体への負担を抑える働きを担っています。
人間の歩行は次の「ヒールロッカー」「アンクルロッカー」「フォアフットロッカー」という3つの動きに分けることができます。歩行に伴うアーチの変化をみてみましょう。

ヒールロッカー

1 ヒールロッカー

かかとから着地し、足底全体がかかとで転がったのちにアーチは沈み、柔らかい状態になって衝撃を吸収します。

アンクルロッカー

2 アンクルロッカー

足首とすねを前に倒し、足を前へと移動させます。足首を倒すのと同時にアーチは圧迫されてより沈み込みます。

3 フォアフットロッカー

足指の付け根に力を入れ、前へと蹴り出します。アーチは高く上がり、硬い状態になって、足指で蹴り出す力を高めます。

フォアフットロッカー

足底腱膜炎の予防や治療を考えるうえで特に重視したいのは、1のヒールロッカーと2のアンクルロッカーの際にかかりやすい足底腱膜への負担です。

1のヒールロッカーの際には、歩くたびにかかとへの圧力が生じ、筋肉がそこからもう一方に向かって伸びている支点部分にもそのつど負荷がかかります。それが慢性的に続くことで炎症や痛みの要因となります。

2のアンクルロッカーの際には、足首の動きと、アーチの沈み込みによってひざを前に倒していきます。この時アーチの沈み込みに連動して足底腱膜は引っ張られます。このためアーチへの負担が強くなると足底腱膜の張力も大きくなり、負荷はさらに増します。例えば足首が硬いと、アーチをつぶすことで無理にすねを前に倒そうとすることになります。こうした状態が続くと、炎症や痛みを引き起こしやすくなっていきます。

足底腱膜炎を防ぐ2大ポイント

足底腱膜炎を防ぐ2大ポイント

足底腱膜炎の予防・治療の大きなポイントとして次の2つが挙げられます。

  1. 1  歩行時や運動時に足底腱膜にかかる負担を軽減する
    足が地面に接するときの衝撃を吸収できるようなクッション性の高い靴を履く、肥満傾向の場合はできるだけ減量するなどの方法で負担を減らしましょう。医療機関ではアーチ全体への過度の負担を減らすため、その人の足に合ったインソールを靴につけることを勧める場合もあります。
  2. 2  足首や足、ふくらはぎの筋肉を柔軟に保つ
    足首を柔軟に保つことで、歩行時や運動時に正常なアーチを保ちやすくなり、足底腱膜への負担の軽減につながります。

アキレス腱を気持ちよく伸ばすストレッチと、足底腱膜の疲労解消に役立つマッサージをご紹介します。

【アキレス腱ストレッチ】

【足底腱膜マッサージ】ふくらはぎを伸ばす

伸ばすほうの足を後ろに下げ、前に出ている足のひざをゆっくり曲げていく。アキレス腱がしっかり伸びるのを感じながら30~60秒程度キープ。足を入れ替えて反対側も同様に。

【足底腱膜マッサージ】

安定した場所で座って行いましょう。足指の裏側に手のひらを当て、反対の手で足指をゆっくり反らせながら、足の裏を手のひらでよくもみほぐす。反対側の足も同様に。

【足底腱膜マッサージ】足の裏をもみほぐす

こうしたストレッチやマッサージは、運動の前後やヒールの高い靴を履いて長時間歩いた後などはもちろん、毎日の入浴後など習慣として続けていくことが大切です。

適切な治療で痛みを改善

適切な治療で痛みを改善

足底腱膜炎の痛みを緩和するための治療法には、患部に衝撃波を照射する方法や消炎鎮痛剤の服薬、ステロイド注射などがあります。

重篤化した難治性の足底腱膜炎に対しては、部分的に腱膜を切離する外科手術を行う場合もあります。

足底腱膜炎の予防や治療において何より大切なのは、先にも説明したとおり、足底腱膜への負担をできるだけ減らすような生活を送ることです。

足底腱膜炎の患者さんにはまず、減量や靴の選び方などの生活指導や、ストレッチなどの運動療法といった手術を伴わない治療を行いますが、それだけで軽快へと向かう場合がほとんどです。

足底腱膜炎を上手に予防して、いつまでも元気に歩ける足を保ちましょう。

監修者プロフィール
菊池 恭太先生(下北沢病院 足病総合センター センター長)

【菊池恭太(きくち きょうた)先生プロフィール】

下北沢病院 足病総合センター センター長
北里大学医学部卒業。北里大学病院整形外科助教、横浜総合病院整形外科医長、同院創傷ケアセンターなどを経て現職。日本整形外科学会整形外科専門医。身体障害者福祉法指定医。日本足の外科学会会員。日本フットケア足病医学会評議員。近著に菊池先生を含む下北沢病院の医師たちがまとめた『“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ』(下北沢病院医師団・著、日経BP)がある。

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