手軽に効果!運動・ボディケア
バレエダンサーに学ぶ、正しい姿勢の保ち方
監修/猪野恵司先生(バレエトレーニングディレクター)
概要・目次※クリックで移動できます。
バレエにおける正しい立ち姿とは
姿勢が悪いと、実年齢より老けて見えたり、だらしない印象を与えたりするだけでなく、肩こりや腰痛、むくみなど体のさまざまな不調の原因にもなります。
そこで、お手本にしたいのが、バレエダンサーの美しい踊りや動きに欠かせない「姿勢」です。バレエにおける正しい姿勢とは、頭頂部から耳、肩を通り、太ももの付け根の外側、膝のお皿の内側、内くるぶしの前側までが一直線になるような立ち方を指します(下図参照)。
これらをすべてチェックするのは難しいと思いますが、立ち姿の時にトップスとボトムスの脇のラインの縫い目がずれているようなら、まっすぐ立てていないという目安の1つになります。
スマホ生活が姿勢を崩す大きな要因に
そもそも私たち人間の背骨は本来、ゆるやかなS字カーブを描いています(下図参照)。
正しい姿勢をキープするということは、このS字カーブを崩さないことともいえます。
正しい姿勢
しかし生活にスマートフォンが欠かせなくなった昨今は、画面を見るために首を前に出し、猫背になってしまうことが多いもの。長時間にわたりパソコン作業をする場合なども同様です。
こうした姿勢を続けることで背骨を支える
猫背姿勢の例
また、長時間のパソコン作業やスマートフォン操作などによる前傾姿勢は腰にも大きな負担がかかります。その負担を少しでも軽くしようと、椅子に腰かけている時に無意識に反り腰になっていることも多いです。反り腰になると骨盤が前に傾き、背骨が腰のあたりから反り返り、背骨本来のS字カーブが崩れることになります(下図参照)。
反り腰姿勢の例
1日1分、正しい姿勢を意識することから習慣づけを
正しい姿勢をキープするためには、「今、自分がどんな姿勢をしているか」にまず気づくことが大切です。とはいえデスクワークやスマートフォン操作に没頭している時に、自分が猫背や反り腰になっていないかどうかを意識するのは難しいものです。
職場や家庭などで頼める人がいるならば、猫背になっている時に指摘してもらうようにするのがおすすめです。そういう人が見当たらない場合は、全身が映る鏡の前で仕事や作業などを行い、自分の姿勢をこまめにチェックするのも1つの方法です。
意識的に背すじを伸ばし、猫背や反り腰にならないよう気をつけるだけでも、崩れた背骨のS字カーブが改善されていきます。重要なのは「毎日続ける」ことです。
続けていくために何らかのモチベーションを持つことは、姿勢を良くするうえで大切です。「姿勢が良い人は仕事でも有能な印象が強い」「姿勢が良くなると若々しく見える」など、姿勢が良くなることで得られるメリットはさまざまです。どうして姿勢を良くしたいのか、その結果、どんな自分になりたいのか。こうしたことを明確にすることでより続けやすくなるはずです。
また、「仕事中の8時間は絶対に正しい姿勢をキープする」など最初から高い目標を掲げるとなかなか実践できず、継続することが難しくなりがちです。まずは1日1分程度、姿勢を意識することから始めましょう。
例えば、信号や電車などを待つ間だけ背すじを伸ばしてまっすぐ立つよう心掛けるというように、すき間時間を利用して行うだけでもOKです。慣れてきたら通勤電車で1~2駅分は正しい姿勢をキープするようにするなど、無理のない範囲で少しずつ時間を延ばしていきましょう。こうしたことを毎日続けることで、「正しい姿勢の習慣化」が期待できます。
姿勢改善に効果的なストレッチを実践!
限られたスペースでもできるストレッチがあります。ゴムボールなど身近にある簡単な道具を使ってできるので、取り入れてみるのも良いでしょう。
【デスクワーク中の猫背・反り腰を予防・改善】
気をつけていてもどうしても前かがみの姿勢になりやすいデスクワーク中などは、腰と椅子の背もたれの間にゴムボールを挟んで座るのもおすすめです(下図参照)。ゴムボールを落とさないように、体を起こすことで前かがみになるのを防ぎます。
直径15~20cm程度のゴムボールを使うと骨盤がすっと立ち、背すじも自然と伸びやすくなります。背骨がニュートラルな状態になることで筋肉の緊張も軽減され、反り腰による腰痛や、猫背による肩こりの予防にもつながります。
可能であれば、デスクワーク中はこの方法で姿勢のキープを。慣れてきたらゴムボールなしでもこの姿勢を維持したままで仕事ができる状態を目指しましょう。
【猫背による巻き肩や背骨のゆがみを予防・改善】
前かがみの姿勢を続けていると肩が内側に巻き込まれ、肩まわりが硬くなりがちです。
こうした場合には胸まわりの筋肉を伸ばすことで肩まわりのこりもほぐれ、本来の位置に戻りやすくなります。次のストレッチを行いましょう。
- 1 壁の前に横向きに立ち、肘を肩の高さに上げて肘から手のひらまで壁につける。
- 2 手の位置はそのままで、上体を軽く外側に開き、胸の筋肉を伸ばす。そのまま30秒キープ。反対側も同様に行う。
胸の筋肉は広範囲についているので、壁につけた手のひらの高さを変えることでまんべんなく伸びやすくなります。一番伸びると感じるところを探してみましょう。
【反り腰を予防・改善】
反り腰は、腰から太ももの付け根にかけてついている
- 1 ベッドの端に浅く腰かけ、そのまま上半身をあおむけに寝かせる。足は床につける。
- 2 片方の足の膝を両手で抱えて胸のほうに引き寄せる。もう一方の足は床から上げる。このまま1分程度キープ。反対側も同様に。
なお、腹筋の弱さも反り腰の原因となる場合があります。腹筋を鍛えるうえで効果的なのが深い呼吸です。息を吸ったら風船をふくらませるようなイメージで思いきり吐き切ることを5~10セット行いましょう。
反り腰の予防につながるのはもちろん、肺活量がアップし、息切れしにくくなるといったメリットも期待できます。
なお、最近はオンラインで受講できるバレエのレッスンや、バレエの体験教室なども増えていますが、先生が自分の質問や疑問にきちんと答えてくれるかどうか、レッスンの内容が自分に合っているかどうかなどをみて、定期的に通う教室を選ぶといいと思います。実際にレッスンを受けてみたいという方は、まずいくつかの体験教室に参加してみるのがおすすめです。
バレエダンサーのメソッドをお手本に、きれいで健康的な姿勢を手に入れましょう。
監修者プロフィール
猪野恵司先生(バレエトレーニングディレクター)
【猪野恵司(いの けいじ)先生 プロフィール】
バレエトレーニングディレクター
高校時代にミュージカルを志してバレエを始める。日本大学芸術学部中退後、米国カリフォルニア州立大学ロングビーチ校で機能解剖学を学ぶ。大学卒業と同時にサクラメントバレエ団に入団。退団後、帰国しバレエ専門のパーソナルトレーナーとして活動。子供から大人まで年間200人以上に幅広く指導を行う。大人専門のバレエスタジオ、大人バレエアカデミーを経営。
長時間のデスクワークやスマートフォンの操作などにより、自分では気づかないうちに姿勢が悪くなっている人が増えています。見た目の印象に関わるだけでなく、体にも悪影響を及ぼす可能性があります。そこでバレエトレーニングディレクターの猪野恵司先生に、正しい姿勢の保ち方について伺いました。美しい姿勢の代表的存在であるバレエダンサーのメソッドをお手本にしてみましょう。