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手軽に効果!運動・ボディケア

運動による疲労の蓄積を感じたら、オーバートレーニング症候群にご用心

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監修/長﨑文彦先生(長﨑内科クリニック院長)

長引く新型コロナウイルスの影響で、体力が低下したり運動不足を感じたりしている人は少なくないでしょう。健康のためにスポーツやトレーニングをしている一方で、続けているうちに体が思うように動かなくなる、疲れやすくなるといった症状を感じる場合があります。このように慢性的な疲労が蓄積した状態をオーバートレーニング症候群といいます。長﨑内科クリニックの長﨑文彦先生に、オーバートレーニング症候群にならないための予防法や対処法について伺いました。

運動後、なかなか疲労が取れないのはなぜ

運動後、なかなか疲労が取れないのはなぜ

スポーツやトレーニングは、日常生活の活動よりも大きな負荷がかかります。その分、効果は上がりますが、スポーツの後やトレーニング後に疲労が残ったまましっかりと栄養や休養を取らないでいると、その分疲労が残ったままだったり、体力の低下がみられるようになります。オーバートレーニング症候群は、トレーニングなどによって生じる生理的な疲労が十分に回復しないまま積み重なって起こる、慢性疲労状態のことをいいます。

オーバートレーニング症候群の原因は、単に筋肉が疲労しているということばかりでなく、肉体的あるいは精神的なストレスにより、脳の視床下部や脳下垂体から分泌されるホルモン(コルチゾール、カテコールアミン、テストステロンなど)のバランスが崩れることも同時に起こっていると考えられています。

ホルモンには、下記のような働きがあります。

  • コルチゾール
    副腎皮質から分泌されるホルモンの一つで、主な働きは肝臓での糖の新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪分解などの代謝促進、抗炎症および免疫抑制などです。
  • カテコールアミン
    アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの三つを指します。カテコールアミンが過剰に分泌されると、重度の高血圧や過度の発汗、動悸、頭痛などが起こるほか、興奮状態になり、パニックに襲われたような感覚に陥りやすくなります。逆にカテコールアミンが不足すると、心身の脱力感や意欲の低下が起こり、抑うつ状態を招きやすくなります。
  • テストステロン
    男性ホルモンの代表であり、生殖機能に大きな役割を果たすとともに、筋肉や骨の形成を促し、日常生活においてバイタリティーやモチベーション、心身の健康維持にも重要な役割を担う性ホルモンです。

見逃さないで、オーバートレーニング症候群のサイン

オーバートレーニング症候群のサイン

一気に激しい運動を行うことで疲労が生じるのはオーバーワークの状態で、これはオーバートレーニング症候群ではありません。

オーバートレーニング症候群の場合、初期症状は軽くて気がつきにくいものですが、症状が進行していくと、スポーツ競技成績の低下や、疲れやすくなったりするのをはじめ、全身の倦怠感や睡眠障害、食欲不振、体重の減少、集中力の欠如、安静時の心拍数や血圧の上昇、運動後に安静時の心拍数や血圧に戻る時間が遅くなるなどの症状が表われてきます。

下記のような状態も発見の目安になります

出典:長﨑先生の取材を基に作成

程度の目安としては、日常生活において症状はなく、ジョギング程度であれば問題ないもののスピードが上がるとついていけなくなった場合は軽度、ジョギング程度の軽いトレーニングでもややつらくなり、日常生活において疲労感や立ちくらみといった症状がある場合は中程度、ジョギング程度でもつらくほとんどトレーニングはできない状態で、日常生活において疲労症状が強く眠れないといった症状がみられたら重度といえます。

オーバートレーニング症候群かも?と感じたら

貧血や感染症などではないにもかかわらず、体のだるさや食欲低下、寝つきが悪いといった症状が表われたら、心拍数や血圧をチェックしてみましょう。

疲労症状が強まるにつれて特に起床時の心拍数が増大するといわれているため、起床時に心拍数をチェックすると疲労状態を把握しやすくなります。起床時の心拍数が1分間に10回以上増加している場合は、オーバートレーニング症候群と考えられます。

起床時の心拍数のほか、安静時の血圧は上昇しているか、運動後、安静時の心拍数や血圧への回復が正常かといった状態を見ることも役立ちます。日頃からセルフチェックすることで、オーバートレーニング症候群の早期発見につなげましょう。

また、気分プロフィール検査(POMS)※1や心理的競技能力診断検査(DIPCA.3)※2のような心理テストもチェック方法として用いられます。さらに心肺運動負荷試験(CPX)※3は、有酸素運動系から無酸素運動系まで運動能力とエネルギー利用状況などを的確に判断することができることから診断に有用と考えられます。少しでも症状が気になる人は、早めにスポーツドクターのいる医療機関を受診しましょう。

※1:65の質問から、7つの気分の状態(怒り、混乱、抑うつ、疲労、緊張、活気、友好)を測る検査。

※2:5つの因子と12の尺度からスポーツ選手の試合場面に必要な精神力を把握することができる検査。

※3:運動中の呼気ガスを分析して、心肺機能や持久力を評価する検査。

オーバートレーニング症候群の対処法としては、

  1. 1)1~2カ月間は基礎的トレーニング(ジョグ、ウオーキング)のみとし、ハード系トレーニングを中止
  2. 2)完全休養はしない
  3. 3)1~2カ月後、体調をみながらトレーニング強度を戻していく
  4. 4)基礎的トレーニングは継続する

上記が原則です。

栄養面においてもバランスのいい食事を取り、特にビタミンB群やビタミンCを摂取すると良いとされています。また、ストレスをためないことも忘れてはいけません。毎日トレーニングをしないと不安な人やパフォーマンスの低下の原因をトレーニング不足だと考えこむ人は注意しましょう。

オーバートレーニング症候群は、普段から自分の体調をチェックする習慣をつけることで、体調の変化に気づき症状の判断につながりやすくなります。適切な運動量と休養に努めることでオーバートレーニング症候群を予防しましょう。

監修者プロフィール
長﨑文彦先生(長﨑内科クリニック院長)

【長﨑文彦(ながさき ふみひこ)先生プロフィール】

長﨑内科クリニック院長
1971年横浜市立大学医学部卒。同年、虎の門病院内科レジデント、同病院循環器センター医員、1983年焼津市立総合病院循環器科長、医務部長、副院長を経て、2004年に長﨑内科クリニック開業。日本スポーツ協会認定スポーツドクターなどの資格を取得。清水エスパルス・チームドクター(フィジカル担当)、日本サッカー協会・日本代表チーム(岡田ジャパン)のフィジカル・アドバイザーなどを歴任。現在は、ロアッソ熊本フィジカル・アドバイザー。

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