特集(季節のテーマ)

これまで花粉症ではなかった人も、 知っておきたい花粉症対策の最新事情

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監修/大久保公裕先生(日本医科大学付属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長)

花粉症に悩まされるシーズンが近づいてきました。
前シーズンに花粉症デビューした人や、これまで花粉症の症状がない人にも知っておいてほしい最新の花粉症治療や対策についてご紹介します。
花粉症治療の第一人者である日本医科大学付属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長の大久保公裕先生にお話を伺いました。

こんな症状があったら花粉症かも?

花粉症は、花粉が原因でさまざまな症状が生じる季節性のアレルギー疾患です。最も患者数が多いとされているのはスギ花粉症ですが、スギ花粉症患者の8割がヒノキ花粉症も合併しているといわれています。スギ花粉は2~4月、ヒノキ花粉は4~5月頃に多く飛散します。

花粉症は、花粉に対して体が過剰反応を起こしている状態です。本来、花粉は害のあるものではありません。しかし、体が花粉を「排除すべき異物」と認識してしまうと、花粉に対する抗体(IgE抗体)が作られます。この抗体は、免疫系において重要な役割を果たす肥満細胞の表面に付着し、異物である花粉を排除できるようにスタンバイしています。この状態で花粉症シーズンを迎え、花粉が体内に取り込まれると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった炎症を誘発する物質が放出されます。これによってくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといったアレルギー症状が生じるのです。

花粉症の症状には、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった風邪に似た症状も含まれています。花粉症と風邪の主な違いとして、以下のような傾向があります。

■花粉症と風邪の主な違いの傾向

目の症状の有無、花粉症の場合目のかゆみなどの症状が表れることが多い。風邪の場合目の症状はでない。鼻水の色、花粉症の場合白または透明。風邪の場合は黄色や緑っぽい色に変化。熱の有無、花粉症の場合、せいぜい微熱程度。風邪の場合発熱することがある。

(大久保先生への取材を基に作成)

花粉症かどうか詳しく調べたい場合は、病院でアレルギーの検査を受けます。よく行われるのがプリックテストです。プリックテストとは、皮膚に針を軽く刺して花粉のエキス(アレルゲン)を体内に少量入れることで、アレルギー反応が起きるかどうかを見る検査です。

現在の花粉症治療

花粉症の治療は、大きく分けると次の3つの方法があります。治療法によって、得られる効果だけでなく、通院の頻度や治療に要する期間、治療開始のタイミングなども異なります。市販の薬で対処する方法もありますが、自分の症状やライフスタイルに合った対策を行うためにも、まずは医師に相談することをお勧めします。

①薬物療法

花粉症に対して最も多く使われている薬は抗ヒスタミン薬です。放出されたヒスタミンの働きを抑えることで、くしゃみや鼻水などの症状を抑える効果があります。抗ヒスタミン薬は薬局でも購入可能で、眠気などの副作用が出にくい第二世代の抗ヒスタミン薬も販売されています。

抗ヒスタミン薬以外にも、花粉症に対する薬にはさまざまな種類があります。それぞれの薬に特徴があるため、症状に合わせて使い分けます。例えば、くしゃみや鼻水に対しては抗ヒスタミン薬が効果を発揮することが多いですが、鼻づまりのひどい患者さんには、抗ロイコトリエン薬といった別の種類の薬が使われることもあります。花粉症と思われる症状が出たら、早めに受診し、自分の症状に合った薬を処方してもらうとよいでしょう。

②レーザー治療

レーザーを使って鼻の粘膜を焼いて凝固する治療法です。空気の通り道が広くなって鼻づまりに効果があるほか、レーザーを当てることで粘膜が乾燥するため、花粉が付着しにくくなったり、鼻汁の分泌が起こりにくくなったりします。

治療は30分程度で終わります。効果は永続的に続くものではありませんが、1年に1回、花粉症シーズンが始まる前に治療を受けておくことで、1シーズンは効果の継続が期待できます。

レーザー治療は、薬の服用によって眠くなると特に困る職種の人や受験生、薬を飲めない妊婦さん、忙しくて頻繁な通院が難しいビジネスパーソンなどに向いている治療法です。花粉症の症状が出てからでは治療が難しいため、花粉が本格的に飛び始める前の12~1月のうちに治療を受けておく必要があります。

③アレルゲン免疫療法(減感作療法)

花粉症の原因となっているアレルゲンを少量ずつ体に与え続けることで、「花粉は体に危険なものではない」ということを体に覚え込ませて、花粉に対するアレルギー反応を起こさないようにする治療法です。花粉症による症状は、花粉を異物と認識して排除し、体を防御しようとするために起こるものなので、「花粉は排除する必要のない物質だ」ということを体が認識すれば、花粉に対する反応が変わります。

以前は注射によってアレルゲンを体内に入れていましたが、2014年に「舌下免疫療法」が保険適用されたため、現在は口の中に薬を入れることで治療を行えるようになりました。舌の裏に花粉のアレルゲンを含む薬液や錠剤をしばらく保持した後、飲み込みます。約7割の方が、舌下免疫療法によって症状減少の効果を得ています。

花粉症を根本的に改善することを望むのであれば、現段階では舌下免疫療法が有効とされています。しかし、再発しないような効果を得られるまで3~5年間にわたって毎日薬を飲み続けなければなりません。また、舌下免疫療法は、花粉の飛んでいない6~12月に始めておく必要があります。来シーズン以降にこの治療を希望する場合は、花粉の飛散が終わる頃に、医師に相談してください。

日常における対策

花粉症対策として最も重要なことは、花粉との接触をできる限り避けることです。体内に入る花粉を少しでも減らせるよう、外出時はマスクや眼鏡、帽子を着用して、鼻や目、皮膚に花粉が付着しないようにしましょう。また、ウールのコートなど、毛羽のある素材の上着やマフラーなどは、花粉が付着しやすいため避けることをお勧めします。そして、外出先から帰ったら、玄関先で衣服や髪をよく払い、花粉を室内に持ち込まないことも大切です。現在花粉症の症状が出ていない人も、このような対策で花粉を避けておいたほうが安心です。

また、花粉症シーズンの間に風邪を引かないようにすることも、花粉症対策になります。風邪を引くと鼻の粘膜が荒れ、花粉が粘膜に付着しやすくなります。花粉の飛散する時期は、冬から春に向けて季節の変わり目でもあり、体調を崩しやすい時期ですので、できるだけ健康に気をつけて過ごすことが大切です。

花粉症は命にかかわる病気ではありませんが、数ヵ月にわたって生活の質を低下させるやっかいな病気です。また、仕事や勉強などに集中しにくくなるため、生産性も大きく低下してしまいます。毎年不快な症状に悩まされている人は、耳鼻咽喉科を受診して、治療法を相談してみてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール
監修/大久保公裕先生(日本医科大学付属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長)

【大久保公裕(おおくぼきみひろ)先生プロフィール】

日本医科大学付属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長
日本大学耳鼻咽喉科学講座 主任教授、同大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学 教授。1984年、日本医科大学卒業。1988年、同大学院耳鼻咽喉科修了。1989~1991年、 アメリカ国立衛生研究所(NIH)に留学。1993年より、日本医科大学医学部講師、准教授を経て、2010年より教授。専門は花粉症を含むアレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎。花粉症に対する舌下免疫療法の研究や開発に大きく貢献した。

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