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アレルギー性鼻炎の原因は花粉だけじゃない!意外な要因とは?

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監修/市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)

何かの拍子に止まらなくなるくしゃみや鼻水に困ったことはありませんか。それらは、アレルギー性鼻炎によることが多いのですが、症状を引き起こすアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)は、日常生活の至る所にあります。アレルギー性鼻炎の種類や原因、発症を防ぐための方法や日常生活での対処法について「東京みみ・はな・のどサージクリニック」名誉院長の市村恵一先生に伺いました。

アレルギー性鼻炎とは?症状と種類について

アレルギー性鼻炎は、大きく分けると、特定の時期だけに症状が現れる「季節性」タイプと、1年を通して症状が現れる「通年性」タイプがあります。また、人によってアレルギー反応を示す原因物質が異なります。

アレルギー性鼻炎の症状が出るメカニズム

健康な人の鼻に飛散しているスギの花粉が飛び込んでも何も症状は起こりません。症状が出るためには、その準備段階である「感作(かんさ:特定の刺激に対して反応が大きくなる状態)」が起きていなければなりません。

抗原(アレルゲン)が体内に入ると、免疫機能がそれを異物とみなして排除するためにIgE抗体という物質が作られます。これを感作と呼び、アレルゲンに対する警報システムの役割を果たします。このIgE抗体がマスト細胞(白血球の一種)と結合します。そして、いったん感作の状態になった後、再びアレルゲンが侵入してくると、マスト細胞がこれを認識し、ヒスタミンなどの化学伝達物質(細胞間の情報伝達を担う物質)が放出され、アレルギー症状が出るのです。

アレルギー性鼻炎の3大症状:くしゃみ、鼻水、鼻づまり

アレルギー性鼻炎の代表的な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの3つです。

くしゃみは、アレルゲンが鼻腔内に入ると反射的に起こる症状で、マスト細胞から放出された化学伝達物質のヒスタミンによって生じます。発作的に連続して何度も出ることが多いです。くしゃみに伴って透明で水っぽいサラサラとした鼻水が大量に出るのも特徴で、鼻の穴から垂れ落ちたり、のどの奥に流れたりします。くしゃみや鼻水は鼻腔内に侵入してきたアレルゲンなどを排除しようとする自己防衛的な反射作用です。発作時以外では、粘り気のある鼻水がたまります。

鼻づまりは、化学伝達物質が血管に作用して血管を膨らませたり、血漿成分が血管からにじみ出てむくみを生じさせ、鼻粘膜が腫れることによって引き起こされます。空気の通りが著しく悪くなり、呼吸しづらくなることがあります。これも鼻の粘膜が膨らんで、異物をこれ以上侵入させないという防御反応にほかなりません。そのほか、かゆみなどの目の症状を伴います。

これらの症状の程度は人によって異なり、日常生活に支障をきたすほど重症化することもあります。

季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)と通年性アレルギー性鼻炎の違い

アレルギー性鼻炎は前述の通り、季節性と通年性の2つに分けられます。

季節性アレルギー性鼻炎は、そのほとんどが花粉によるもので、「花粉症」と呼ばれます。花粉の飛散時期のみ症状が現れ、春と秋に多くみられます。地域によって植生分布にも違いがあり、原因のアレルゲンは異なります。

通年性アレルギー性鼻炎は、ダニやハウスダスト(ホコリ)などが原因で、1年を通して症状が現れます。カビが原因の例もあります。

花粉症のシーズンが終わっても鼻炎の症状がおさまらない場合は、これら通年性のアレルゲンによる鼻炎が考えられます。ただ、こちらの場合は花粉症ほどの強い発作はなく、鼻づまりが主な症状です。

関連記事:「安易な自己判断は禁物!花粉症の症状と対策を正しく知ろう」

花粉症と併発する口腔アレルギー症候群

アレルギー性鼻炎の人が特に気をつけなければならない食物は基本的にありません。ただ、花粉症の人が特定の果物や野菜を食べた後に、口の中やのどにアレルギー反応を起こす症状(口腔アレルギー症候群もしくは花粉・食物アレルギー症候群)が出ることがあるので注意が必要です。

これまでの研究で、花粉症の人が特定の食物を摂取することで、口の中がムズムズしたり、くしゃみや鼻水が出たりと、花粉症に似た症状が現れることがあることが分かっています※1。こうした場合は、食物アレルゲンを特定して避けることが必要で、アレルギー専門医に相談しながら、適切な対策を講じることをおすすめします。

※1:日本アレルギー学会「口腔アレルギー症候群」(https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=14別ウィンドウで開きます)を2024年12月27日に参照

関連記事:「油断できない大人の食物アレルギー」

アレルギー性鼻炎の原因

アレルギー性鼻炎を引き起こす原因を、花粉症の原因となる花粉と、それ以外の原因物質に分けて説明します。

花粉症の原因となる花粉

春は、関東、中部、東北ではスギ、関西以西ではヒノキ、北海道はシラカンバの花粉によるアレルギー性鼻炎の患者さんが多くみられます。発症時期はおおむね2月~5月ですが、過敏な人は、前年12月頃から症状が出始めることもあります。秋は、ブタクサやヨモギ、カナムグラの花粉に反応する人が多いようです。

花粉以外のアレルゲン:ダニ、カビ、ペットの毛など

花粉以外のアレルゲンとして、まず注意が必要なのがハウスダストです。ハウスダストとは、家の中のチリやホコリの中でも目に見えないレベルの微細な粒子で、ダニやガの死骸やフン、カビ、繊維くず、人の皮膚片やフケ、ペットの毛など、さまざまなものが含まれます。これらが空気中に舞い上がり、吸い込むことで、アレルギー性鼻炎の症状を引き起こす可能性があります。

花粉対策だけでなく、ハウスダストを溜めない清潔な室内の環境づくりも、アレルギー性鼻炎の発症予防には大切なことです。

ストレスとアレルギー性鼻炎の関係

鼻の免疫機能の低下は、自律神経と密接に関係しています。不規則な生活やストレスは自律神経のバランスを乱し、免疫機能を低下させます。その結果、アレルゲンに対する過敏反応を引き起こしやすくなるうえ、アレルギー性鼻炎の症状を悪化させる要因にもなります。

まずはストレスをため込まないこと。そして、規則正しい生活リズムを保って十分な睡眠を心がけましょう。適度な運動も血行促進に効果的です。深呼吸やストレッチ、趣味の時間を取るなど、自分なりのストレス解消法を見つけ、リラックスする習慣を身につけましょう。

アレルギー性鼻炎の診断と対処法

アレルギー性鼻炎を疑ったら、耳鼻咽喉科で診断を受けることをおすすめしますが、小児科や皮膚科、アレルギー科などでも自身のアレルゲンを検査で特定することができます。

アレルギー性鼻炎の診断方法:血液検査と皮膚テスト

アレルギーの検査には、特定のアレルゲンに対するIgE抗体の量を測定して、アレルギーの有無や程度を判定する血液検査や、少量のアレルゲンを皮膚に滴下して15~20分後に現れた膨疹(皮膚に現れたアレルギー反応)を測定する皮膚テストなどがあります。

これらの検査により、自身がどのアレルゲンに反応しているのかを特定し、日常生活の中からアレルゲンを避ける工夫をすることが大切です。また、アレルギー症状が強く出る人は、定期的な検査を通じて、アレルギーの変化をモニタリングし、症状の管理に役立てることもできます。

アレルギー性鼻炎の症状を悪化させる環境要因と対策

アレルギー性鼻炎の症状の現れ方には、環境要因もかかわります。

例えば、雨で湿度が高い日は空気中の花粉が地面に落ちるため、一時的に症状が和らぐことがある一方で、雨上がりや乾燥した日には、花粉が舞い上がり症状が悪化することもあります。

乾燥した空気は鼻粘膜を刺激し、腫れを引き起こすことがあるので、加湿器などで室内を適度な湿度(40〜60%)に維持することで、粘膜の乾燥を防ぎ、鼻炎症状の緩和も期待できます。

アレルギー性鼻炎の予防と日常生活での対処法

アレルゲン対策に重要なのは、こまめな掃除と換気です。部屋の掃除が不十分だと、ハウスダストなどのアレルゲンに触れ続けている状態となり、鼻炎の症状を引き起こす可能性が高まります。

換気や空気清浄機で室内の空気を清浄に保つ、カーペットやじゅうたんはこまめに掃除機をかける、ホコリやダニがつきやすい寝具やカーテン、ぬいぐるみなども定期的に洗濯し、少しでもアレルゲンを減らすよう努めましょう。

花粉症の時期にはできるだけ外出を控え、必要がある時はマスクやメガネで花粉を避けましょう。鼻水や鼻づまりがひどく、マスクをすると呼吸が苦しい場合は、鼻の穴の入り口にワセリンを塗るのも有用です。帰宅時には、外で衣服をはたいて花粉を落とし室内に花粉を持ち込まないようにします。

生理食塩水や市販薬を使用した「鼻うがい」は、アレルギー性鼻炎の場合は鼻粘膜への刺激を助長することもあるので、注意しながら行いましょう。

正しい生活習慣が自律神経を整え、全身の健康状態を正常に保つことが、アレルギー性鼻炎の発症防止、症状の抑制につながることもぜひ意識してください。

監修者プロフィール
市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)

【市村恵一(いちむら けいいち)先生プロフィール】

東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授
1973年、東京大学医学部医学科卒業。同大学医学部附属病院耳鼻咽喉科、浜松医科大学耳鼻咽喉科を経て、1982年より米アトランタ市エモリー大学留学。帰国後、東京都立府中病院耳鼻咽喉科医長、東京大学医学部耳鼻咽喉科講師その後助教授、自治医科大学耳鼻咽喉科学教授、副学長、石橋総合病院院長などを経て、2019年より現職。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医、補聴器適合判定医(厚生労働省)。小児耳鼻咽喉科学会初代理事長。オスラー病鼻出血治療の第一人者。現在は主に補聴診療を担当。

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