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その他症状

油断できない大人の食物アレルギー

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監修/藤本 和久先生(日本医科大学付属病院皮膚科医長)

日ごろおいしく食べている食べ物が、ある日突然、病気の原因になる――。これが食物アレルギーです。食物アレルギーの原因や対処法、気をつけたいポイントなどについて、日本医科大学付属病院皮膚科医長でアレルギー専門外来を担当している藤本和久先生にお聞きしました。

この前、友人が大好物のリンゴを食べていたら、急に苦しくなったんだって。気になって、検査を受けてみたら、食物アレルギーって言われたみたい。それまではおいしく食べられていたのに…。てっきりアレルギーって子どもに多いものだと思っていた。アレルギーについて誰か教えてー!

突然発症する食物アレルギー

食物アレルギーというと、子どもの小麦や卵などのアレルギーが思い浮かびますが、大人の食物アレルギーも珍しくありません。それは、ある日突然発症します。

食物アレルギーの原因となる食べ物は年代によって異なり、大人では小麦、魚類、甲殻類、果物類、の順となっています。それらの食品を食べて数分~2時間程度で口の中の違和感やじんましんなどの症状が現れます。ひどい場合は下痢、嘔吐や喘鳴、呼吸困難などが起きることもあるので、注意が必要です。

食物アレルギーの原因食品

出典:食物アレルギー診療ガイドライン2021

突然アレルギーを発症する理由についてはすべて分かっているわけではありませんが、ひとつに遺伝が挙げられます。例えば、親がアレルギー体質だと子どももアレルギーになりやすいという傾向があります。

また、疲れているなど体調がすぐれないときに発症しやすい、ということもいえます。似たような症状があっても、食物アレルギーとは別の病気のこともあるので、一度調べてみるといいでしょう。血液検査でまとめて複数の原因物質について調べられます。(検査方法について、詳しくは「早めの検査で対策を。大人のアレルギー」をご覧ください。)

花粉症との関連も

食物アレルギーにもタイプがあります。ひとつは、甲殻類やそばなどの食物による通常の食物アレルギー。もうひとつは、「口腔アレルギー症候群(OAS)」です。原因となる食品を食べると直後に口の中やのどがイガイガしたりかゆくなったりする超急性型のアレルギーで、リンゴやモモ、キウイなどで起こります。

これは、花粉症との関連が非常に強いことが分かってきました。例えば、シラカバ花粉症の人は、多くの場合、リンゴやモモなどバラ科の果物でアレルギー症状が起きます。シラカバ花粉と似た構造の成分(抗原)を持つ果物にも反応してしまうのです(交差反応)。カモガヤなどイネ科の花粉症は、メロンやスイカといったウリ科の果物と関連性があります。

口腔アレルギー症候群の例

また、ゴム手袋などを常用する人に見られる「ラテックスアレルギー」も交差反応があり、バナナ、アボカド、キウイなどでアレルギー反応が起きます。

食べて運動すると起きるアレルギーに要注意

また、運動が加わることで起きるアレルギーもあります。「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」です。これは、小麦食品を食べてから30分~2時間以内に運動するとアナフィラキシー※を起こす、というものです。運動部の学生が昼食にラーメンを食べ、その後トレーニングを行う、といった場合などに見られます。激しい運動だけでなく、散歩程度でも発症することがあります。

このタイプのアレルギーは、一般の小麦による食物アレルギーとは原因となる成分が異なります。一般の小麦アレルギーの原因物質はアルブミンなど水に溶ける成分です。一方、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、小麦に含まれるグルテンやオメガ5グリアジンという水に溶けない成分が原因となります。これは一般のアレルギー検査では調べることができません。小麦アレルギーがある人や自分がアレルギー体質だと思う人は、一度検査を受けてみることをお勧めします。

※アナフィラキシー:じんましんなどのアレルギー反応だけでなく、血圧低下や呼吸困難といった生命の危機につながる症状を引き起こすもの。

体調がよくないときは、“優しい食べ物”を

子どもの食物アレルギーは、成長とともに消化管が発達するとバリア機能がしっかりしてきて、治る(食べられる)ようになることが多いのですが、大人の食物アレルギーは、いったん発症すると治ることはなく、原因となる食品を避けるしかありません。「減感作療法」といって、医師の指導の下で、その食材をほんの少量ずつ食べることで体を慣らしていく、という治療法もあるのですが、大人ではなかなかうまくいかないのが現状です。

食物アレルギーは、いつ、誰が発症してもおかしくないものですが、体調の悪さが引き金になることも多いので、疲れているときには原因になりやすい食材を避けるのも一策です。

食物アレルギー。こんな人・こんなときは要注意!

  • 花粉症の人
  • 親がアレルギー体質の人
  • アトピー性皮膚炎の人
  • ストレスが多い
  • 疲れているなど体調がすぐれない

以前、加水分解小麦入りのせっけんでアレルギー症状が起きたという例がありましたが、食物アレルギーは食べたときだけでなく、皮膚や気道(粘膜)を通して起きる可能性があることも、知っておいていただきたいと思います。

監修者プロフィール
藤本 和久先生(日本医科大学付属病院皮膚科医長)

【藤本 和久(ふじもと かずひさ)先生プロフィール】

日本医科大学皮膚科学准教授。日本医科大学付属病院皮膚科医長。日本皮膚科学会指導医。日本アレルギー学会指導医。
1985年日本医科大学を卒業し皮膚科に入局。同大学多摩永山病院皮膚科部長、同千葉北総病院皮膚科部長を経て、2011年より現職。接触皮膚炎、薬疹、食物アレルギーなどのアレルギー性皮膚疾患を専門とし、2002年にはフルーツアレルギーの研究で日本皮膚免疫アレルギー学会年間最優秀論文賞を受賞している。現在、日本アレルギー学会 アレルギー検査実技講習責任者。

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