監修/藤本 和久先生(日本医科大学付属病院皮膚科医長)
アレルギーは「子どもの病気」というイメージがあるかもしれません。しかし実際には、大人になってから突然アレルギーを発症する人も増えていますし、アレルギー自体が昔よりも一般的に知られるようになったせいか、「アレルギーかもしれない」と疑って受診する人も増加傾向にあります。大人のアレルギーの特徴や検査方法について、日本医科大学付属病院皮膚科医長でアレルギー専門外来を担当している藤本和久先生にお話を伺いました。
大人になってから突然発症することも
アレルギーは、皮膚のかゆみ、目や鼻などの粘膜の炎症、咳、くしゃみなど、さまざまな症状を引き起こします。代表的なものとして、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそくなどがありますが、これらは子どもの頃に多くみられるため、「アレルギーは子どもの病気」という印象を持っている人も少なくないでしょう。
また、成長して体が成熟していくにつれてアレルギー症状が軽くなる場合があるため、「大人になったら治る」と思うかもしれません。例えば、食物アレルギーは大人になって消化管が発達することで治る場合もあります。
しかし、大人になってからもアレルギー症状が続くことはあります。ぜんそくのように、子どもの頃は小児ぜんそく、大人になると成人ぜんそくと、病名が変わっていく場合もあります。
子どもの頃はアレルギー症状がなかったにもかかわらず、大人になってから突然発症するケースもあります。例えば、薬によるアレルギー(薬疹)は、薬を長い間使用している高齢者が発症することが多くなっています。また、金属アレルギーや局所麻酔薬のアレルギーなどもあります。最近は、歯科からの依頼でアレルギー検査を行うケースも出てきています。このように、大人のアレルギーも多岐にわたっています。
アレルギーの原因を調べるさまざまな検査
アレルギー症状を引き起こしている原因物質をアレルゲンと呼びます。何がアレルゲンなのかを調べるアレルギー検査には、血液検査、パッチテスト、プリックテスト、誘発試験などさまざまな種類があり、アレルギーの性質によって実施する検査が異なります。
<代表的なアレルギー検査>
- ●血液検査
- 採血を行い、何がアレルゲンになっているのか調べる検査。まとめて複数のアレルゲンについて調べることも可能
- ●パッチテスト
- 皮膚のアレルギーを調べるための検査。アレルゲンの可能性がある物質を背中や上腕に貼って、2日後、3日後、7日後の反応を見る
- ●プリックテスト
- アレルゲンの可能性がある物質の液を皮膚に垂らし、針を軽く刺して体内に入れることでアレルギー反応を見る検査
- ●誘発試験
- アレルゲンの可能性のある物質が、実際にアレルギー症状を引き起こすかどうかを確認するための検査
例えば、金属アレルギーの場合、金属に接触してから直ちに症状が出ることが少ないため、数日後の反応を調べるパッチテストが適しています。金属アレルギーが分かった場合は、アクセサリーや歯の詰め物などを見直す必要があります。
血液検査で分かること
通常、何がアレルゲンになっているのかは、それぞれの項目ごとでしか確認ができません。例えば花粉症の場合、スギ花粉のアレルギー検査を行うことで、スギ花粉が自分にとってアレルゲンなのかどうかは分かります。しかし、ヒノキやブタクサなど、ほかの花粉がどうなのかは、ヒノキ花粉の検査と、ブタクサ花粉の検査をそれぞれ行わない限り、知ることができません。
花粉症や食物アレルギーなど、複数のアレルゲンの影響が疑われる場合、血液検査であれば一度の採血で複数のアレルゲンを調べることができます。30項目以上のアレルゲンをまとめて調べる検査もあります。
血液検査では、抗原特異的IgE抗体(個々のアレルゲンの検査)と、非特異的IgE抗体(IgE抗体の総量)を調べることができます。
<血液検査項目の一例>
- ●食物アレルゲン
- 農産物(キウイ・バナナ・リンゴ・ソバ・小麦・大豆・米・ゴマ・ピーナッツ)・魚介類(マグロ・サケ・サバ・エビ・カニ)・牛乳・卵白・オボムコイド(卵白に含まれる成分)・肉(豚・牛・鶏)
- ●花粉アレルゲン
- スギ・ヒノキ・ブタクサ・シラカンバ[属]・ハンノキ[属]・ヨモギ・カモガヤ・オオアワガエリ
- ●環境アレルゲン
- ハウスダスト・ヤケヒョウダニ・ゴキブリ・ガ・犬や猫のフケ・真菌類(アスペルギルス・アルテルナリア・カンジダ・マラセチア[属])・ラテックス
ただし、血液検査で値が低いからといって、絶対にアレルギーがないと言えるわけではありません。例えば、食物アレルギーについて詳細に調べたい場合は、血液検査の結果を参考に、実際の食品を使ってプリックテストを実施することもあり、血液検査よりも確実な結果が得られます。
検査によってアレルゲンが判明すれば、対策をとることができるようになります。「アレルギーかな?」と思う症状がある場合は、血液検査を受けて、どのようなアレルギーを持っているのか把握しておくようにしましょう。
監修者プロフィール
藤本 和久先生(日本医科大学付属病院皮膚科医長)
【藤本 和久(ふじもと かずひさ)先生プロフィール】
日本医科大学皮膚科学准教授。日本医科大学付属病院皮膚科医長。日本皮膚科学会指導医。日本アレルギー学会指導医。
1985年日本医科大学を卒業し皮膚科に入局。同大学多摩永山病院皮膚科部長、同千葉北総病院皮膚科部長を経て、2011年より現職。接触皮膚炎、薬疹、食物アレルギーなどのアレルギー性皮膚疾患を専門とし、2002年にはフルーツアレルギーの研究で日本皮膚免疫アレルギー学会年間最優秀論文賞を受賞している。現在、日本アレルギー学会 アレルギー検査実技講習責任者。