その他症状
つらい膀胱炎、どのように対処する?
監修/室宮泰人先生(神楽坂泌尿器科クリニック院長)
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膀胱炎って、どのような病気?
膀胱炎は、尿道を介して細菌(主に大腸菌)が膀胱内に侵入し繁殖した結果、膀胱の粘膜が炎症を起こしてしまう病気です。膀胱炎を発症すると、排尿時の痛み、残尿感、頻尿などの症状が表れます。
女性がかかりやすい病気とされ、特に20~40代で多くなっています。女性は尿道口の近くに膣や肛門があることで尿道口から雑菌が侵入しやすいうえ、尿道が短いために菌が膀胱まで到達しやすいからです。
体が健康であれば、尿道や膀胱に多少の菌が付着しても、排尿時に外へ洗い流されます。また、体に備わった免疫機能によって、菌の繁殖は抑えられます。しかし、ストレスや疲労によって免疫機能が低下してしまうと、自浄作用が弱まって菌に対抗できなくなり、膀胱炎を引き起こすのです。
症状が落ち着かないなら早めに受診を
排尿時に違和感を覚え、「膀胱炎かも……」と思った時には、まずは水分をたくさん摂り、排尿を促すことが大切です。尿と一緒に、ある程度の菌は洗い流されるので、症状が軽くなることがあります。漢方製剤や生薬成分を使用した市販薬を使ってもよいですが、こうした薬は排尿を促すものであり、完治させるものではありません。一時的に症状が治まることもありますが、2、3日様子を見ても症状が落ち着かないようであれば、泌尿器科を受診することをお勧めします。
炎症が進み、血尿が出るほどに悪化してしまうと、完治までに時間がかかり、再発しやすくなるなど影響が大きくなります。菌が腎臓まで到達した場合は、背中の痛みや発熱を伴う腎盂腎炎を発症する危険性もあります。入院が必要になることもあるので、早めの受診を心がけましょう。
膀胱炎は、尿検査と問診で診断します。尿検査では、尿中に細菌があるかどうか調べます。膀胱炎と診断されると、一般的には3~5日分の抗生剤が処方され、数日間薬を飲み続けると症状は軽くなります。ただし、症状が軽くなったからといって薬の服用をやめてしまうと、菌を完全に退治できず残ってしまう可能性があり、再発するリスクがあるうえに、残った菌が薬に対する耐性を持つようになって抗生剤が効きづらくなってしまうことがあります。処方された薬は、最後まで飲みきるようにしましよう。約1週間後に再診して、再度尿検査をすることで、完治しているかどうか、確認できます。
なお、初診時の尿検査で採取した尿は、尿培養検査にも出し、尿の中にどのような菌がいるかを細かくチェックして、膀胱炎の原因菌を特定します。大腸菌にも多くの種類があるので、菌の正体を明らかにしておくことで、その菌に有効な治療ができるようになるからです。尿培養検査の結果、薬に対する耐性の高い菌が見つかった場合は、膀胱炎を繰り返す原因になりうるので、効き目の高い抗生剤を追加で服用する場合もあります。
膀胱炎対策として、日常生活で心がけたいこと
膀胱炎にならない、膀胱炎を繰り返さないためには、以下の3つの心がけが大切です。
1.水分をこまめに補給し、トイレを我慢しない
膀胱内にたまっている尿は、菌の繁殖に適した状態になっているため、ある程度のスパンで体外に放出し、新しい尿と入れ替わるようにすることが大切です。成人の尿量は一日あたり1000ml~1500mlといわれているので、平均すると1日当たり4~6回は排尿が必要になります。水分を摂り、排尿のタイミングが長く空きすぎないようにしましょう。
暑くなる時期は汗をかくため、体の水分が奪われて、尿量が減りやすくなります。意識的に水分を多めに補給するようにしてください。ただし、コーヒーや緑茶、紅茶などのカフェインを含む飲み物、アルコール飲料を摂りすぎることはお勧めできません。利尿作用は高いですが、細胞内の水分を減らす働きがあり、逆に脱水症状を引き起こしやすいからです。なお、クランベリージュースを飲むことで膀胱炎や尿路感染症の再発が抑えられたという研究が報告されています(※)。何度も膀胱炎にかかっている方は、取り入れてみるのもよいでしょう。
(※)Arch Intern Med. 2012;172(13):988-996
2.デリケートゾーンの清潔を保つ
膀胱炎の最も有効な予防策は、できるだけ尿道口から菌を侵入させないようにすることです。排尿・排便後は、前から後ろに拭くようにします。生理用ナプキンやおりものシートを使用している時は、こまめに取り換えることが大切です。また、性交後は入浴や排尿を心がけるようにしましょう。
思わぬ盲点となるのが、温水洗浄便座の使用です。清潔を保つつもりが、肛門や膣を洗い流す際に、ノズルに付着した細菌や肛門周りの大腸菌をはじいて、尿道口に菌を付着させてしまうことがあります。膀胱炎の再発が多い人は、使用を控えることも検討してみてください。
3.体の抵抗力を落とさない
先にも述べた通り、体が健康であれば、免疫により雑菌に対する抵抗力を持っているので、炎症を起こすまでに至りません。しかし、近頃は外出できない時間が増えた影響で、運動不足やストレスを感じることが増えた人も少なくないでしょう。こうしたことが抵抗力を落とします。疲労やストレスをためすぎないように、心がけましょう。
膀胱炎かもしれないと思っても、泌尿器科の受診に抵抗を感じて、治療せずに放置してしまう人もいるかもしれません。しかし、膀胱炎の診断は尿検査と問診のみで、初診で内診を行うようなことはまずありません。症状が軽い状態できちんと治療しておけば、数日間薬を服用するだけで完治しますが、放置して腎盂腎炎になると大変です。ためらわずに泌尿器科で相談することをお勧めします。
監修者プロフィール
室宮泰人先生(神楽坂泌尿器科クリニック院長)
【室宮泰人(むろみや やすと)先生プロフィール】
神楽坂泌尿器科クリニック院長
帝京大学医学部卒業。東京女子医科大学病院、社会医療法人川島会川島病院、医療法人社団東光会戸田中央総合病院での勤務を経て、2020年9月に神楽坂泌尿器科クリニックを開業。日本泌尿器科学会 専門医・指導医。日本泌尿器内視鏡学会、日本抗加齢医学会、日本性感染症学会、日本臨床腎移植学会、日本透析医学会などに所属。
排尿する際にしみるような痛みを感じる、残尿感があって何度もトイレに行きたくなる――このような不快な症状を感じたら、膀胱炎かもしれません。何度も繰り返してしまう人もいる身近な病気だからこそ、症状が出た場合の対処法や、かからないようにするための日常生活の注意点などについて、知っておきたいものです。神楽坂泌尿器科クリニックの室宮泰人院長に伺いました。