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日差しの強い季節、目にも紫外線対策を

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監修/佐々木洋先生(金沢医科大学眼科学講座主任教授)

日差しが強くなる季節は、紫外線対策としてスキンケアに余念がない人も多いでしょう。しかし、紫外線の影響を受けるのは肌だけではありません。目も紫外線によってダメージを受け、白内障などの病気のリスクにつながることも。見落としがちな目の紫外線対策について、金沢医科大学眼科学講座主任教授の佐々木洋先生に伺いました。

目に紫外線を浴び続けるとどうなる?

紫外線は1年中降り注いでおり、皮膚だけでなく目も紫外線を浴びています。目に当たった紫外線は主に角膜(黒目)で吸収されますが、吸収しきれなかった紫外線は、水晶体や網膜など目の奥のほうまで到達し、目の健康に影響を及ぼすことがあります。

目のイラスト

紫外線の影響で生じる目の障害には、急性のものと慢性のものがあります。代表的な急性障害には「結膜充血」があります。山や海のレジャーに出かけたときに目が充血すると、ほこりの刺激で目が赤くなったと誤解されることが多いのですが、実は紫外線の影響の場合が大半です。これは目の日焼けのようなもので、たいてい一晩で回復します。しかし、炎症がひどい場合は、角膜の表面が剥がれ、強い痛みと涙が出る「紫外線角膜炎(雪眼炎)」になることもあります。スキー場や夏の海などでは、太陽光の反射で通常よりも多くの紫外線を目に浴びることがあるため、紫外線対策が足りないとこうした障害が生じやすくなります。

このような急性障害を繰り返していると、慢性的な障害につながります。慢性障害で最も多いのは、白目の一部がシミのように黄色く濁って盛り上がる「瞼裂斑(けんれつはん)」と呼ばれるものです。ひどくなると「翼状片(よくじょうへん)」といって、白目が黒目の中まで侵入する状態になります。翼状片は視力にも影響し、手術が必要になることもあります。

瞼裂斑の写真
瞼裂斑(写真:佐々木先生ご提供)
翼状片の写真
翼状片(写真:佐々木先生ご提供)

また、「老眼(老視)」や「白内障」にも紫外線が関係していることがわかってきました。目の中のレンズである水晶体が硬くなってピント調節がしづらい状態になるのが老眼で、白内障は水晶体が白く濁った状態です。強い紫外線を長期間浴びると、水晶体のたんぱく質が変性し、早いうちに老眼や白内障になりやすいことが報告されています。

子どものときに浴びた紫外線が、将来の目の病気につながる

紫外線による目の障害は、一定レベル以上の強い紫外線を長期間浴びてダメージが蓄積することで現れます。そのため、紫外線が強い地域の居住者はリスクが高くなります。

瞼裂斑にかかった子どもの割合を地域別に比較した調査によると、石川県の小学6年生が約3%だったのに対して、沖縄県(西表島)の小学6年生は70%以上と、大きな違いがあることがわかっています。また、高校まで沖縄在住の人と、成人してから沖縄に移住してきた人を比較した調査では、前者のほうが後者より翼状片のリスクが約6倍高く、核白内障(水晶体の中央から濁り始める白内障)のリスクも約9倍という結果が報告されています。子どもの頃に紫外線を多く浴びることは、大人になったときに現れる影響も大きいことを示しています。

屋外活動が多い仕事・スポーツなどをしている場合も、紫外線を多く浴びることになるため高リスクです。また、骨格もリスク要因の一つとなります。彫りの深い人は、前頭部が帽子のツバのような役割を果たして目に浴びる紫外線を遮りますので、彫りの深い欧米人に比べて、骨格が平坦な日本人(東洋人)は概して不利と言えます。

このように、将来の目の病気を防ぐためにも、子どもの頃からしっかりと紫外線対策を行うことが重要です。紫外線が強いのは太陽の高度が高い季節や時間帯で、朝や夕方、そして冬は比較的弱くなります。ただし、目に入る紫外線を考えると、太陽高度が高いときは目が前頭部の影になるため、直接目に紫外線が届きにくくなります。逆に太陽高度が30〜40度と低いときのほうが、正面からの紫外線が直接目に入りやすくなります。目は太陽高度が低く、やや紫外線量が少ないときでも影響を受けるのです。天空の散乱光や地表からの反射光も合わさって目に影響を与えますので、1日中、1年中、対策が必要です。

紫外線から目を守る対策

紫外線対策として最も有効なのは、目に隙間なく密着するUVカット機能付きのソフトコンタクトレンズです。製品によってUVカット機能の有無やカット率が異なるため、よく調べて選ぶようにしましょう。サングラスや帽子と併用すると、さらに効果的です。

サングラスやメガネは単独で使っても有効ですが、どうしても側面の隙間から紫外線が入り込みます。なるべくツルが太いもの、レンズの大きいもの、ゴーグルに近い顔にフィットした形のものを選び、できれば帽子も併用するのが望ましいでしょう。色の濃いレンズは視界が暗くなることで瞳孔が開き、レンズと顔面の隙間から入る紫外線が目の奥に届いてしまいますので、外側から目が見えるくらい薄い色のレンズがおすすめです。

なお、日傘は暑さ対策にはなりますが、目に浴びる紫外線をカットする効果としては期待できません。目薬も充血をとることはできても根本的な対策にはなりませんので、あくまでも対症療法と心得ましょう。

オーストラリアなど紫外線が強い海外諸国では、条例で子どもにサングラスやメガネなどの装用が義務付けられているところもありますが、日本ではまだ目に対する紫外線対策が不十分です。一方、1日2時間程度、外で過ごして太陽光を浴びることで子どもの近視が進行しづらいという研究もあるほか、紫外線は骨の健康などに有効なビタミンDを体内で作り出すためにも必要です。ですから、紫外線を過度に恐れる必要はありませんが、子どものときに浴びた紫外線が将来的に目の病気につながることを考慮し、有効な紫外線対策をしたうえで、適度に外で過ごす時間も持つのがいいでしょう。

もちろん、子どものうちだけでなく、大人になってからの対策も重要です。大人は子どもに比べて、紫外線による酸化への抵抗力が減るため、同じ紫外線量でも子どもより強く影響を受けてしまいます。紫外線ダメージの蓄積を少しでも減らせるよう、大人も注意して今日から目の紫外線対策を行いましょう。

監修者プロフィール
佐々木洋先生(金沢医科大学眼科学講座主任教授)

【佐々木洋(ささき ひろし)先生プロフィール】

1987年金沢大学医学部卒業後、自治医科大学眼科入局。米国オークランド大学眼研究所研究員等を経て、2005年より金沢医科大学眼科学講座主任教授。「特定非営利活動法人 紫外線から眼を守るEyes Arc」理事長も務める。国内外で紫外線関連眼疾患の疫学調査を実施している。

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