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カンタン健康生活習慣

口臭予防だけじゃない、舌みがきで誤嚥性肺炎予防!

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監修/花田信弘先生(鶴見大学歯学部探索歯学講座教授)

歯みがきは毎日欠かさず行いたい日常習慣のひとつ。でも舌みがきを日課にしている人は意外と少ないのでは? 実は舌が汚れていると、歯みがきをしていても歯の表面に細菌が付いてしまうリスクがあるとされています。さらに口臭の発生源となったり、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こすきっかけになったりすることも。舌の汚れ「舌苔(ぜったい)」の問題点と、予防や改善のための舌みがきのポイントについて、鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘先生に伺いました。

舌が汚れていると歯みがきの効果が半減!?

舌を鏡で見ると、表面が白くなっていませんか?この舌表面に付いた白い苔のようなものを「舌苔(ぜったい)」といいます。

うっすらと白くなっている程度で、舌本来の色が透けて見えるようならあまり問題はありませんが、白い部分に厚みがあったり、黄みがかっていたりする場合などは舌苔が蓄積している可能性があります。

そもそも舌苔とは舌の汚れのことです。舌の表面には数多くの「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」というごく小さな突起があります。この突起の凸凹に、口の中の細菌や食べかす、はがれ落ちた粘膜の上皮、唾液の成分などがたまり、細菌がどんどん増殖していきます。

すると、「バイオフィルム」と呼ばれる菌膜が舌表面に形成され、舌苔ができるのです。歯垢(しこう)は、このバイオフィルムのひとつで、虫歯や歯周病を予防するためには、歯みがきによって歯の表面に形成されたバイオフィルムを除去することが欠かせません。

歯みがきの重要性は広く認識されているので、毎食後、丁寧にみがくことが習慣になっている人も多いことでしょう。しかし、舌苔が付いたままの状態では、せっかく歯をみがいても、歯みがきの最中に舌の細菌が歯の表面に付いてしまうリスクがあります。

歯みがきだけではなく、舌みがきも習慣化することが口の中の健康維持のためにはとても大切です。

■バイオフィルムの形成過程

舌の汚れは口臭や誤嚥性肺炎の原因にも!

舌苔を放置していると虫歯や歯周病に加え、「口臭」のリスクも高まります。口臭の原因菌のほとんどが舌苔に存在しているためです。

口内の粘膜の上皮細胞は新陳代謝によって絶えず生まれ変わっています。死んだ上皮細胞ははがれ落ちて舌表面に集まります。するとその死んだ細胞をエサとする口臭の原因菌が増殖し、たんぱく質を分解します。その際に揮発性のガスが発生し、硫黄のような腐敗臭を伴う化学物質へと変化するのです。

これは例えるなら毒ガスのようなもの。単に臭いというだけでなく、口の中の健康な細胞にまでダメージを与える要因になりかねないので注意が必要です。

特に高齢者や病気などによって飲み込む力が低下している人などに気を付けてもらいたいのが、舌苔が原因となる誤嚥性肺炎です。誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物などと一緒に細菌が誤って気道や肺に入ってしまうことで起こります。

口の中の死んだ細胞はまず舌の上の面に集まり、細菌を繁殖させます。放置していると喉に近い部分に多くの細菌が存在している状態になり、飲み込む力が低下している場合などは誤って気道や肺へと吸引されてしまうリスクが高くなると考えられます。口臭や誤嚥性肺炎の対策として、今日から舌みがきを習慣にしましょう。

舌みがきは起床時、3~4回かき出すだけでOK

舌みがきの主なポイントは次のとおりです。

1 舌専用のブラシを使用する
舌表面はやわらかく繊細なので、歯ブラシでこすると傷つける恐れがあります。舌みがき専用のブラシを使いましょう。歯みがき粉をつける必要もありません。

2 舌の奥から手前にかき出す
舌の前のほうから奥へとブラシを動かすと、喉にあたって吐き気をもよおしたりする場合があります。こうした嘔吐反射を防ぐためにも、舌の奥から前に向かってやさしくかき出しましょう。

3 かき出す回数は3~4回で十分
舌表面の汚れは、舌専用ブラシで3~4回程度軽くかき出す程度できちんと落とすことができます。あまり回数が多いと舌を傷つける原因になるので気を付けましょう。かき出した後は水でぶくぶくうがいをして、口の中をしっかり洗浄することが大切です。

舌みがきを行うタイミングは朝食前がベストです。就寝中は唾液の分泌が減ることで細菌が繁殖しやすい状態になります。そのため、起床時の口の中は驚くほど汚れています。もちろん舌も例外ではありません。

舌全体に細菌が付着した状態のまま朝食をとると、食べ物と一緒に細菌を飲み込んでしまう可能性があります。前述の1~3の簡単な方法でOKなので、ぜひ毎朝のルーティンにしましょう。

なお、歯みがきは毎食後に行うのが基本ですが、舌みがきの場合は朝の1回だけで舌苔予防につながります。もし舌の汚れが気になる場合は、夜にもプラスするとよいでしょう。ただし、あくまでも「こすらない」「回数を増やし過ぎない」ようにすることが大切です。

自然の洗口剤、唾液の分泌も大切に

舌みがきで舌表面を清潔に保ち、舌苔がたまらないよう予防すると同時に、食事の内容にも気を付けてみましょう。

食べ物でこすれることで舌に汚れがつきにくくなりますが、あまり噛まなくても飲み込めるようなやわらかい料理や食品では、舌表面の凸凹に入り込んだ汚れを除去することがなかなかできません。

おすすめは食物繊維を多く含む野菜類です。特によく噛む必要のある生野菜などは、咀嚼することによって唾液の分泌が促進されやすく、野菜に含まれる繊維質によって物理的に舌の汚れを自然と取り除くことができるといったメリットがあります。

唾液は“自然の洗口剤”といえるもの。唾液によって舌は洗浄されているのです。さらに、唾液に含まれる
IgA(免疫グロブリンA)という抗体には、細菌やウイルスなどの異物から体を守る働きがあるといわれています。

口の中が乾きやすいという自覚症状がある場合はこまめに水分補給をしたり、耳の前やえらの下、あごの下など唾液が分泌されやすいポイント(唾液腺)を指の腹でやさしくマッサージしたりするとよいでしょう。緊張やストレスなども唾液の分泌を低下させる要因なので、できるだけリラックスする時間をもつことも大切です。

唾液腺マッサージについてはコチラ

監修者プロフィール
花田信弘先生(鶴見大学歯学部探索歯学講座教授)

【花田信弘(はなだ のぶひろ)先生プロフィール】

鶴見大学歯学部探索歯学講座教授
1981年九州歯科大学歯学部卒業、同大学院修了。米国ノースウェスタン大学博士研究員、九州歯科大学講師、岩手医科大学助教授、国立感染症研究所部長、九州大学教授(厚生労働省併任)、国立保健医療科学院部長を経て現職。この間、健康日本21計画策定委員、新健康フロンティア戦略賢人会議分科会委員、内閣府消費者委員会委員、日本歯科医学会学術研究委員会副委員長などを兼任。『毒だし!舌みがき ウイルス・細菌を退治して腸をきれいにする健康習慣』(河出書房新社)など著書多数。

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