歯
歯の健康は予防から「デンタルIQ」を高めよう
監修/大島 拓也先生(日本橋 すこやか歯科院長)
一度虫歯や歯周病になってしまうと、基本的には元には戻りません。削ったり詰め物を入れたりする治療で歯や歯茎に負担をかけることがないよう歯の健康を保つ「予防歯科」の重要性が注目されています。自分の歯と口の健康への関心や意識の度合いを示す「デンタルIQ」をチェックしましょう。いかに歯を守るための予防をすればよいのか、そのポイントについて、日本橋 すこやか歯科院長の大島拓也先生に伺いました。
概要・目次※クリックで移動できます。
歯みがきだけでは虫歯は予防できない!?
ところが、虫歯のある人または虫歯治療の処置を行っている人は25歳以上85歳未満では80%以上、特に35歳以上55歳未満では100%に近いという報告もあります(※)。
(※)「平成28年歯科疾患実態調査」(厚生労働省)による。
食後の歯みがきはもちろん欠かせないものですが、それだけでは虫歯や歯周病などの歯の病気を防ぐうえで十分とはいえません。歯の病気を根本的に予防し、口の中の健康を長く保つためには、次の2つのこともとても大切です。
- 1 歯科医院で定期健診を受け、自分の歯と口の中の状態を知る
- 2 自分の生活習慣を見直し、虫歯や歯周病の要因をできるだけ取り除く
人生100年時代、できるだけ長く自分の歯と口で食事や会話を楽しみ、充実した生活を生涯にわたって送り続けるためにも、虫歯や歯周病を未然に防ぐ「予防歯科」は極めて重要です。
虫歯や歯周病の要因となる生活習慣には個人差がありますが、例えば次のようなことはリスクを高めやすいので気をつけましょう。
- 甘いものを頻繫に食べたり飲んだりする 特にあめやキャラメル、チョコレートなど、歯に付着したり、口の中に残ったりしやすいものは口の中に糖が長く停滞し、虫歯菌が繁殖する要因になります。
- 長時間にわたって大量に飲酒する アルコール飲料には糖を多く含むものがあります。アルコールとともにつまみなどをだらだら食べ続けることもリスクの一つになります。また、酔って歯みがきをせずに寝てしまうケースも注意が必要です。
デンタルIQをチェックしてみよう
日本歯科医師会が展開する「いい歯は毎日を元気に」プロジェクトが公開している「デンタルIQチェッカー」の、歯と口の健康を保つうえで知っておきたい項目を紹介します。
質問を読み、○か×で答えてみましょう。
出典:「いい歯は毎日を元気に」プロジェクト内「デンタルIQチェッカー」
解答
※解説は、プロジェクトサイトに掲載している内容と異なります。
- 1 ○ 痛みなどの自覚症状がないまま虫歯が進行する場合があります。早期発見のためには歯科医院での定期健診が欠かせません
- 2 ○
- 3 ○ 唾液に含まれる「IgA(免疫グロブリンA)」が、口内に入った細菌などにくっついて、体内への侵入を阻むといわれています
- 4 ○
- 5 ×
- 6 × 2018年に発表された『第2回 永久歯の抜歯原因調査報告書』(8020推進財団)では、歯が失われる原因で最も多いのは歯周病(37.1%)で、次が虫歯(29.0%)と報告されています
- 7 × 歯垢は食後8時間程度でできるといわれています (出典:e-ヘルスネット)
- 8 × やわらかい歯垢はセルフケアで除去することが可能ですが、歯垢に唾液中の成分が沈着して硬くなった歯石は歯科で除去する必要があります
- 9 ×
- 10 × 噛み合わせの変化や歯茎の位置の低下、滑舌の悪さなど、さまざまな口腔内のトラブルにつながるといわれています
- 11 ○
- 12 ○ 虫歯予防効果が実証されている天然甘味料であるキシリトール。厚生労働省より食品添加物として認可されているほか、世界保健機関(WHO)や 国連食糧農業機関(FAO)もその効果を認めています
- 13 × 歯周病も一因ですが、舌苔(ぜったい)も原因の多くを占めています
- 14 ○ 噛むことで脳内の血流が増え、脳の運動野や感覚野、前頭前野、小脳などが活性化するといわれています
- 15 ○
歯と歯の間や歯の側面の掃除を忘れずに
デンタルIQを高め、歯と口の健康を守るために知っておきたいセルフケアのポイントは次のとおりです。
・歯みがきの際にはブラッシングと歯間ブラシやデンタルフロスを併用する
歯ブラシでのブラッシングは歯の表面や粘膜に付着した汚れを除去するうえで効果的ですが、歯と歯の間の汚れまで十分に取り除くことは難しいものです。 歯間ブラシやデンタルフロスを用いて、歯ブラシでは届きにくい歯と歯の間の汚れや、歯の側面に付いた歯垢を丁寧に取り除きましょう。・虫歯や歯周病のリスクが高いところから重点的にきれいにする
歯ブラシの届きにくい奥歯の側面や歯と歯の間など、汚れや歯垢がたまりやすい部分から歯みがきをスタートしましょう。みがき残しを防ぎ、虫歯や歯周病の予防効果を高めることが期待できます。自分のどの歯が特にリスクが高いのか知りたい場合は、予防歯科で相談するのがおすすめです。
・フッ素配合の歯みがき剤使用後のうがいは1~2回程度に留める
虫歯を予防する効果の高いフッ素(フッ化ナトリウム)が配合された歯みがき剤を使用する場合、歯みがき後に何度もうがいをするとフッ素が流れてしまい、十分な効果が得られなくなる可能性があります。うがいは1~2回程度にとどめましょう。 なお、高濃度のフッ素を歯に塗布する治療を行う予防歯科もあります。年に3〜4回、定期的に塗布することで、虫歯になりにくくすることが期待できます。 また、予防歯科の一環として「PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)」を行う歯科医院も増えてきています。歯科医師や歯科衛生士が、セルフケアでは行き届かない部分を中心に、すべての歯の歯垢や歯石除去、歯面の研磨、歯周ポケットの清掃などを行います。 適切な歯のセルフケアは、自分で自分の歯を守るための大切な生活習慣の一つです。さらに「予防のために」歯科医院を定期的に受診してプロの力を借りながら、歯と口の健康を維持していきましょう。監修者プロフィール 大島 拓也先生(日本橋 すこやか歯科院長)
【大島拓也(おおしま たくや)先生 プロフィール】
日本橋 すこやか歯科院長 2010年日本歯科大学卒業後、明海大学PDI埼玉歯科診療所(明海大学)で研修。同診療所および大島歯科医院勤務を経て、2015年に日本橋 すこやか歯科を開院。「予防を軸とした世界基準の歯科医療を提供すること」を理念に掲げる。日本顎咬合学会認定咬み合わせ認定医。