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不調改善ヘルスケア

味が分からない!? 突然起こる味覚障害とは

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監修/新谷 悟先生(東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長)

「何を食べてもおいしく感じない」「まったく味がしない」「何も食べていないのに口の中に変な味を感じる」……。こうしたさまざまな味覚の変化や違和感が表れるのが味覚障害です。高齢化やストレス過多といった社会環境の影響などもあり、味覚障害を訴える人は増加傾向にあるといいます。味覚障害の原因やメカニズムについて、東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長の新谷 悟先生に伺いました。

味覚障害は症状の表れ方も原因もさまざま

味覚障害とは、味に対する感度が低下したり、味を感じなくなったりする症状全般を指します。何を食べてもまずく感じる、何も食べていないのに口の中に苦味や塩味などを感じるといった味覚異常もあります。

■味覚障害の主な症状

※1:甘味、苦味、酸味、塩味、旨味

味覚障害の原因については明らかにされていない点も多く、複数の原因が重なり合って影響している場合もあります。

要因の一つは老化による機能の低下。
しかし若い世代もストレスや偏食により味覚障害が

私たちの舌表面や舌の付け根、上あごの表面(軟口蓋なんこうがい)などには、味を感じる細胞の集まりである「味蕾みらい」が点在しています。

飲食などによって味の刺激を味蕾が受けると、神経を介して脳へとシグナルが伝わり、味覚を構成する甘味、苦味、酸味、塩味、旨味という5つの「基本味」を感じることができるのです。

味蕾の数は加齢とともに減少するといわれており、舌の後方にある表面の突起(有郭乳頭ゆうかくにゅうとう)1個あたりの味蕾の数が0~20歳では平均245個であったのに対し、74歳以上では88個と約35%まで減少しているという報告もあります(※)。

(※)Arey LB, et al. The numerical and topographical relations of taste buds to human circumvallate papillae throughout the life span. Anat Rec 1935 ; 64 : 9-25.

近年、「料理の塩加減がよく分からなくなってきた」といった味覚異常を訴える高齢者が増えている背景には、加齢によって舌や口に老化が見られる人の増加が考えられます。

高齢者の場合は先に述べた「加齢による味蕾の数の減少」のほか、味を感じる機能自体も加齢とともに低下するため、味覚障害を生じやすい傾向にあります。

一方で、若い世代でもさまざまなストレスや偏食などの要因によって、味覚障害を起こしているケースは少なくありません。こうした原因の中でも特に注意したいのが、偏食などによる亜鉛不足です。

味を感じる細胞の集合体である味蕾は短いサイクルで新陳代謝を繰り返し、新しい細胞に生まれ変わっています。その際に不可欠なのが亜鉛です。体内の亜鉛が不足すると新陳代謝がスムーズに行われなくなってしまうため、味覚障害を引き起こす一因となります。

また、鉄分の不足が原因で鉄欠乏性貧血(ヘモグロビンの数値が男性は13.0g/dl以下、女性の場合は12.0g/dl以下が目安)になると、だるさや倦怠感、めまいなどの症状が表れる前に舌の表面が赤くつるつるした状態になり、味覚障害が起こる場合もあります。

亜鉛や鉄の吸収障害につながるビタミンも大きく関わっているため、ビタミン不足にも注意が必要です。特にビタミンB12不足は舌の粘膜委縮を引き起こして味覚障害の一因になることがあるほか、口内炎や舌炎の原因となり、味を感じにくくなることがあるので気をつけましょう。

体内の亜鉛不足や鉄不足などの栄養状態は医療機関などの血液検査で調べることができます。体内の亜鉛が欠乏していると診断された場合には亜鉛の内服薬が処方される場合が多いですが、同時に次のような亜鉛を多く含む食品を積極的に摂取することも心がけましょう。

■亜鉛を多く含む代表的な食品例

味覚障害の背後に、病気がある場合も

味覚障害が生じる背景には次のような病気がある場合も少なくありません。こうした場合には、その病気の治療を行うことが必要不可欠です。

■味覚障害を誘発する主な病気や症状

※2:涙や唾液を作りだす涙腺、唾液腺などの外分泌腺に慢性的に炎症が生じ、涙や唾液の分泌が低下したり、乾燥症状が出る自己免疫性疾患

なお、糖尿病をはじめ、高血圧、関節リウマチ、パーキンソン病、消化性潰瘍などさまざまな病気で治療薬を服用している場合には、薬剤の副作用で味覚障害を生じることもあります。一般的な鎮痛・解熱薬や抗アレルギー薬なども原因になり得ます。

一時的に服用を中止することで多くの場合は味覚が戻りますが、主治医とよく相談し、可能であれば薬を変更することも検討する必要があります。

日々の食事を楽しくおいしく味わって、必要な栄養をバランスよく摂取することは健康の基本の一つです。また、味を感じるためには、水分が必要なので、食べる前に唾液腺をマッサージしたりうがいをして口を潤すことも味覚障害の予防につながります。

■唾液腺マッサージ例

「味が分からない」といったはっきりした自覚症状がある場合はもちろん、家族などから「最近、料理の味付けがおかしいよ」などと指摘されることが続いたら、早めに味覚障害の診療を行っている歯科や耳鼻咽喉科、内科などを受診しましょう。

監修者プロフィール
新谷 悟先生(東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長)

【新谷 悟(しんたに さとる)先生プロフィール】

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長
1992年岡山大学大学院歯学研究科修了。97年ハーバード大学歯学部分子病理部門。愛媛大学医学部歯科口腔外科学講座助教授、昭和大学歯学部顎口腔疾患制御外科学講座主任教授・口腔外科科長、口腔がんセンターセンター長などを経て、2014年現クリニックを開設。
『歯と歯ぐきを強くする 噛みトレ』(アスコム)など著書多数。

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