
季節のテーマ
花粉症だけじゃない?春先の目のトラブル、その原因と対処法
監修/内尾 英一先生(福岡山王病院 アイセンター長)

概要・目次※クリックで移動できます。
春先に現れる目の症状と主な原因
目のかゆみや痛み、充血、目やになど、複数の症状に悩んでいる人もいると思います。原因別にみていきましょう。
【アレルギー性結膜炎】
花粉が原因の場合、この時期はスギ花粉によるアレルギー性結膜炎が多くみられます。花粉によって、さまざまなアレルギー反応を引き起こすヒスタミンという物質が細胞から放出され、白目の部分がかゆくなるのが最も典型的な症状です。目の構造は、眼球とまぶたの裏側が粘膜でつながっていて、それぞれ眼球結膜、眼瞼(がんけん)結膜というのですが、その結膜が炎症を起こしている状態です。
かゆみの自覚症状のほか、白目が充血して赤くなります。少量の比較的さらっとした糸状の目やにも生じます。花粉によるアレルギーの場合、その多くが同時に鼻水、くしゃみといった鼻炎の症状も有します。一方、多量の目やにで目が開かないという症状はほとんどありません。花粉が飛散する時期に限った季節性のアレルギー性結膜炎のほか、ダニやハウスダスト、ペットなど家の中に原因がある場合は、1年を通じて症状が出ます(通年性アレルギー性結膜炎)。
【感染性結膜炎】
アレルギーではない、細菌やウイルスによる感染性結膜炎の症状として最も特徴的にみられるのが目やにで、量が多く粘り気があるのが特徴です。目やにが多く、充血しているけれど、かゆみはそれほどでもないという症状の場合は、ウイルス性結膜炎、細菌性結膜炎、そしてクラミジア結膜炎などの感染性結膜炎を疑います。
●ウイルス性結膜炎
多くみられるのは、アデノウイルスによる流行性角結膜炎(はやり目)です。かつては夏場に多かったのですが、近年ではほぼ通年でみられ、目の充血や多量の目やに、人によってはのどの痛みも伴います。そして感染力が強いのが特徴です。また、エンテロウイルスやインフルエンザウイルス、エコーウイルスでも結膜炎を生じます。これらはさまざまな風邪の症状を引き起こすウイルスで、子どもだと多くの場合で目の充血がみられ、風邪の症状が治まれば自然と目の充血も治まるケースがほとんどです。
●細菌性結膜炎
主な原因としては、肺炎球菌や連鎖球菌、ブドウ球菌が考えられます。子どもの場合はのどの痛みや目の充血が多くみられます。また、両目ではなく片目のみに症状が出るのも特徴です。ウイルスの場合は治療薬がありませんが、細菌の場合は抗菌薬で炎症は治まります。
●クラミジア結膜炎
クラミジア・トラコマチスという細菌が目に感染して起こる結膜炎で、昭和30年代くらいまでトラコーマという名称で流行しました。現在は、かつてとは型の異なるクラミジア・トラコマチスが原因になっており、成人封入体(せいじんふうにゅうたい)結膜炎と呼ばれています。これは性感染症が目に感染することで発症する結膜炎で、尿道炎や膀胱炎などの症状がある人が自身の目に触れたり、症状のある人と接触したりすることで感染します。クラミジア結膜炎は慢性的で、目やにや異物感(目の中がゴロゴロとする感じ)、充血といった症状が比較的長く続きます。
これらの感染性結膜炎は、春先に限らず、通年でみられるものもあるので、医療機関での検査がとても重要です。眼科を受診すると、イムノクロマト法(検査用綿棒で目の表面を擦って検体を採取する方法)による検査を行い、感染性結膜炎の種類を鑑別することになります。検査でウイルスや細菌の可能性が除外され、アレルギー性結膜炎が疑われる場合はIgE検査(検査用紙をまぶたに挟んで涙液を採取する方法)によって、アレルギーであることが確認できます。
【ドライアイ】
ドライアイも、目の異物感や痛み、かゆみの原因として考えられます。空気が乾燥する冬場に目の乾きを訴える人が多いですが、近年は夏場もエアコンで空気が乾燥した室内環境が続くので、通年でドライアイの症状を自覚する人が増えています。
アレルギーとドライアイの両方を抱える人もいます。本来であれば、花粉などの異物は涙で流せますが、ドライアイだと涙の量が足りずに目の中にアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす物質)がとどまってしまうのです。そのためドライアイの人はアレルギー症状が強く出て、より悪化しやすい傾向があります。
現代はゲーム機やスマートフォンなどの画面を長時間見つめる人が多く、集中するとどうしてもまばたきの回数が減ります。そのため、涙がちゃんと出ていても蒸発してドライアイになる人が少なくありません。眼科医は、目の乾きを助長する「3つのコン」には要注意と言います。「エアコン」「パソコン」「コンタクトレンズ」です。本来のアレルギーではなくても、こうした原因によって目が乾くことで生じる不快感、異物感をかゆみと感じる人もいます。
ドライアイが進行すると、目の乾きによる痛みを感じる人もいます。実際には異物がなくても、なんとなく目の中に異物感があり、それを取り除こうと目をこすることで黒目の表面に傷がつき、場合によっては強い痛みが生じます。
【疲れ目(眼精疲労)】
長時間にわたって目を使う作業が続くことで、しみるような目の痛みやかすみ、充血などが生じます。これは眼球そのものではなく、上下のまぶたなど、目の周囲にある三叉(さんさ)神経に炎症が生じている状態です。目の痛みに加えて頭痛や肩こり、吐き気などの全身症状がみられる人もいます。こうした場合は、点眼薬で目に潤いを補充するだけでなく、しっかりと目を休ませることが大切です。このように、痛みの原因は多岐にわたっており、強い痛みを感じる、痛みが続くといった場合には受診してしっかりと原因を突き止め、正しい治療を行うことが重要です。
花粉による季節性アレルギー性結膜炎のケアと予防法
花粉による季節性アレルギー性結膜炎の予防として最も有効なのは、花粉にできるだけ接しないことです。花粉の飛散量が特に多い日は外出を控え、外出する際は花粉防護用のゴーグルを使用するとよいでしょう。メガネを使用するだけでも、前面からの花粉をある程度防ぐことができます。鼻から吸い込んだ花粉によっても目の症状が出るので、マスクの着用も有用です。
帰宅後は、家の中に花粉を持ち込まないことが大事です。洗髪や洗顔と同様に「洗眼」も意識してみてください。花粉だけでなく、時期や地域によっては黄砂やPM2.5も多く飛散し、これらが目の痛みやかゆみにつながることがあります。薬液の中でまばたきをして、目の表面やまつげなどに付着した花粉などを洗う「洗眼薬」がドラッグストアなどで市販されています。眼科医が治療の指針とする診療ガイドライン※1でも、防腐剤を含まない点眼薬や人工涙液による洗眼が有用と考えられています。ただし、洗い過ぎると必要な涙液まで流れてしまいます。外出先から帰った時のみ、といった使うタイミングを決め、1日に何度も使用するのは避けましょう。
水道水での洗眼は注意が必要です。日本の水道水は高いレベルで衛生状態が維持されていますが、それでも微量のアメーバなどが存在します。メガネの使用を含む裸眼の人は、顔を洗う際に目も軽く流す程度は問題ありませんが、コンタクトレンズを使用している人にはおすすめできません。特に、数日~1カ月ほど使い続けるソフトコンタクトレンズを使う人は、レンズと目の間に水中に存在する微生物が入り込むことで角膜炎を生じるケースもあるので注意が必要です。コンタクトレンズを使っていて日中に目のかゆみや不快感がある場合は、レンズを着けたままの状態で目薬をさして目を洗い流す点眼型洗眼薬が市販されているので、そうした製品の使用も一手です。
また、水分を多く含む素材でできているソフトコンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズに比べて汚れが付着しやすく、アレルギーを引き起こしやすい側面があります。花粉に少しでもアレルギー反応があるのであれば、この時期だけでもメガネに代えるのが望ましく、使用する場合もできるだけ装着時間を短くすることをおすすめします。長期間の連続装用を避けるという点で、ワンデーコンタクトレンズ(1日ごとの使いきりタイプ)が望ましいでしょう。
この時期は、かゆみを抑える目薬を使いたいというコンタクトレンズユーザーもいるでしょう。点眼薬は、眼科医や薬剤師に相談のうえ用法・用量をきちんと守って使用しましょう。
花粉症による目の症状を軽減する対策としては、花粉が本格的に飛び始める2~3週間前から医師の判断のもと点眼薬が用いられることがありますので、医師に相談してみてください。
症状が出た時にセルフケアとしてできるのは、冷やすことと保湿です。アレルギーによるかゆみは炎症反応の一種なので、目元用の冷却シートや冷たいおしぼりで冷やすことで和らぐ場合があります。目の周りにワセリンを塗るのもよいでしょう。保湿に加え、花粉から皮膚を保護する効果も期待できます。
※1:日本眼科アレルギー学会診療ガイドライン作成委員会 アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版) 日眼会誌.125 (8): 741-785, 2021
こんな症状の時には受診しよう
アレルギー症状のみの場合は、市販薬でもある程度の対応はできます。しかし感染性結膜炎の場合は、ほかの人に症状を広げる可能性があるので、眼科を受診して適切な治療を受けることが重要です。目の症状に加え、風邪のような症状(発熱、のどの痛みなど)がある場合は、すみやかに内科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。
アレルギーであっても症状が強い場合は、抗アレルギー薬で十分に治らないことがあります。特に、アトピー性皮膚炎の人は花粉の影響を受けて症状が通常より強く出ることがあるとされています。このような場合は、ステロイド点眼薬を処方されることがあります。ただし、ステロイド点眼薬は眼圧が上がるおそれもあるので、用法・用量を必ず守り、眼科医に経過を診てもらうことが大切です。
このほか小児(特に多いのが小学校低学年から中学生程度の男子)に関して、「春季(しゅんき)カタル」という重症のアレルギー性結膜炎がみられることがあります。国内における正確な有病率は不明ですが、日本眼科学会が2017年に行ったアレルギー性結膜疾患の有病率に関するウェブ調査によると、春季カタルの有病率は1.2%となっていました※2。かなり強い痛みやかゆみ、異物感があり、その名の通り春先に悪化するという特徴があります。上まぶたの裏側に大きなブツブツ(巨大乳頭)が生じ、それが常に角膜を刺激することで症状が現れます。視力低下につながるケースもあるので、適切かつ早期の治療が重要です。花粉も原因物質の一つではありますが、春季カタルの場合は花粉症とは異なり、ステロイド剤や免疫抑制剤といった、より強い薬での治療が必要になります。
本来であれば、アレルギー専門の診療科であらゆる症状を横断的に診てもらうのが望ましいところです。しかし、アレルギー専門医の数は限られているため、実際には目の症状が気になる場合は眼科、鼻の症状があれば耳鼻咽喉科など、症状に応じた診療科で相談するケースが多いでしょう。それぞれの分野の専門医に診てもらうことで、原因を突き止め、適切な治療を受けられるというメリットもあります。気になる症状がある場合は自己判断せず、ためらわずに医師に相談しましょう。
※2:Miyazaki D, et al. Sci Rep. 2019 Dec 3;9(1):18205
監修者プロフィール
内尾 英一先生(福岡山王病院 アイセンター長)
【内尾 英一(うちお えいいち)先生プロフィール】
福岡山王病院 アイセンター長
1985年、九州大学医学部医学科卒。横浜市立大学附属市民総合医療センター眼科助教授、福岡大学医学部眼科教授を経て、2025年より福岡国際医療福祉大学医療学部視能訓練学科教授および大学院保健医療学研究科特任教授。主な専門分野は眼感染症、アレルギー性眼疾患、ぶどう膜炎、角膜疾患、角膜移植、視神経炎など。日本眼科学会認定眼科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医。













地域により多少の差はあるものの、1~3月は花粉アレルギーが気になるシーズンです。この時期に現れる目のかゆみ、痛み、異物感……その原因がアレルギーだとすぐに決めつけるのは危険かもしれません。目のトラブルの原因として考えられるいくつかの可能性、目の諸症状を和らげるためのセルフケア、眼科受診が必要なケースについて、福岡山王病院 アイセンター長の内尾 英一先生に伺いました。