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牛、豚、鶏、羊……賢く食べよう!お肉のパワー

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監修/岸村康代先生(フードプランナー/管理栄養士)

年末年始は、ごちそうが続く時期。肉料理を楽しむ機会も多いでしょう。カロリーは気になるけれど、大切なたんぱく源ですので、上手に食べたいものです。お肉には牛、豚、鶏、羊などさまざまな種類があり、栄養価も異なります。それぞれのお肉にはどんな特徴があり、どんなときに、どのお肉を食べるのがよいのでしょうか。お肉の栄養面での特性や健康効果を高める食べ方について、フードプランナー・管理栄養士の岸村康代さんに伺いました。

肉は優れたたんぱく源のひとつ

肉の写真

肉の成分で大きな割合を占めるのはたんぱく質です。動物性のたんぱく質には、健康的な体づくりに欠かせないアミノ酸が豊富に含まれています。筋肉や髪の毛、爪など人間の体を作るために不可欠な成分なので、毎日の食事で欠かさず摂取することが推奨されています。

たんぱく質が豊富な食品には、他にも魚、乳製品、大豆製品などがあります。しかし、どれか一つを食べていればよいわけではなく、それぞれからしか摂取できない栄養素があります。例えば、ビタミンDや不飽和脂肪酸であるオメガ3などは、魚に多く含まれており、肉だけを食べていては摂取できません。また、牛肉には亜鉛や鉄が多く含まれる一方、脂身には飽和脂肪酸が多く、摂りすぎてしまうと血液中の中性脂肪やコレステロールを増やして、動脈硬化の原因になると考えられます。

それぞれの食品の特徴を知り、さまざまな食品からたんぱく質を摂取することが大切です。

牛・豚・鶏・羊、種類別の特徴は?

肉の栄養素は、種類や部位によって大きく異なります。身近で比較的手に入りやすい食肉として、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉の成分を見てみましょう。

牛肉:鉄や亜鉛が豊富で貧血予防にもおすすめ

牛肉には、鉄や亜鉛が豊富に含まれています。鉄は、赤血球のヘモグロビンに多く存在しており、不足すると貧血の原因となるため、月経のある女性は特に摂取したい成分です。亜鉛は、不足すると味覚障害の原因となるほか、男性ホルモンであるテストステロンの低下にも関係すると考えられています※1。いずれも脂身ではなく赤身の部分に多いため、ヒレ肉に多く含まれています。

※1:Nutrition. 1996 May;12(5):344-8.

牛肉の部位別成分一覧

牛肉の部位別成分一覧
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

豚肉:糖質やアルコールの代謝に活躍

豚肉には、ビタミンB群が豊富に含まれています。特に、脂身の少ないヒレ肉に含まれるビタミンB1の量は、他の肉と比べても突出しています。ビタミンB1は糖質やアルコールの代謝に必要な成分で※2、お酒を多く飲む人、ご飯やパン、麺類などの炭水化物が好きな人は、特に摂取したいビタミンです。

※2:国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報

豚肉の部位別成分一覧

豚肉の部位別成分一覧
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

鶏肉:脂質が少なめで低カロリー

鶏肉は、牛肉や豚肉に比べて脂質が少なく低カロリーの食材です。鶏ささみ肉や、皮をはいだ鶏むね肉は、特に、高たんぱく・低脂肪・低カロリーで、体の代謝を助けるビタミンB6※3などの含有量が他の部位よりも豊富です。疲労回復に効果的とされるイミダゾールジペプチド※4も、鶏むね肉に多く含まれていると考えられています。パントテン酸はビタミンB群の一種で、糖質や脂質の代謝を助けるほか、ストレスをやわらげる副腎皮質ホルモンの合成にも使われます※5

※3:厚生労働省 『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 eJIM
※4:日本補完代替医療学会誌 第 6 巻 第 3 号 2009 年 10 月:123–129
※5:化学と生物Vol.46 No.6 2008: 400-404

鶏肉の部位別成分一覧

鶏肉の部位別成分一覧
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

羊肉:脂質の代謝を助けるビタミンB群が豊富

羊肉は、生後1年未満の子羊肉を「ラム」、それ以上の成羊肉を「マトン」と呼んでいます。鉄や亜鉛の含有量が高いほか、脂質の代謝を助けるビタミンB群、中でもビタミンB12が多く含まれていることが特徴です。ビタミンB12は、血液細胞の形成に必要なビタミンで、不足すると悪性貧血や神経障害などの症状が出る場合があります※6

※6:厚生労働省 『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 eJIM

羊肉の部位別成分一覧

羊肉の部位別成分一覧
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

肉の成分は、部位によって大きく変わります。特に差が大きいのが脂質の含有量です。ヒレ肉のような脂肪の少ない赤身肉と、脂身の多いバラ肉とでは、エネルギー量に2倍以上の差が出るほか、脂質が多い分たんぱく質が少ない傾向にあります。鶏肉も、皮に脂質が多く含まれているので、皮つきと皮なしでエネルギーや脂質に差が出ます。

たんぱく質を摂取するつもりで肉を食べていたはずが、実は脂質を多く摂っていた、ということも考えられますので、部位選びには注意しましょう。

部位ごとの成分比較(生肉100gあたりの含有量)

部位ごとの成分比較(生肉100gあたりの含有量)
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

日頃の悩みを解消するお肉の選び方・食べ方

種類や部位によって栄養が異なるお肉。お悩み別に、おすすめの食べ方を紹介します。

お悩み1:自粛生活で太ってしまった!

体重が気になる場合は、部位選びがポイントになります。前述のように、脂質の量は脂身や皮があると増えるため、脂身の少ない部位を選んだり、鶏肉は皮をはいだりして使いましょう。

また、肉と一緒に食物繊維を摂ることで、コレステロールの排出促進や、腸内環境の改善が期待できます。野菜、海藻、きのこ、大豆製品などを一緒に摂るとよいでしょう。ごはんに雑穀を入れるのも一案です。

お悩み2:在宅ワーク続きで、心も体も疲れぎみ……。

疲労回復におすすめなのは、エネルギー代謝を促進するビタミンB群の多いお肉です。豚肉に多く含まれていますが、中でも脂身の少ないヒレ肉はビタミンB群の含有量が多くなっています。

鶏むね肉もおすすめです。一過性の疲労感を軽減するとされるイミダゾールジペプチドが豊富に含まれると考えられています。また、心に抱えたストレスを緩和するには、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促すことが効果的とされます※7が、そのためには、材料として必須アミノ酸のトリプトファンおよびビタミンB6をはじめとしたビタミンB群が必要になります※8、9。鶏むね肉にはトリプトファンもビタミンB群も含まれています。ブロッコリーやほうれん草、小松菜など、葉酸を含む食品と一緒に摂取すると、より効果が高まることが期待されます※9、10

なお、ビタミンB群やイミダゾールジペプチドは水溶性の成分です。ゆでたり、煮たりする場合は、スープごといただくとよいでしょう。

※7:厚生労働省e-ヘルスネット「セロトニン」
※8:A・キャサリン・ロス他編『ロス 医療栄養科学大事典 健康と病気のしくみがわかる』(西村書店)
※9:山形県立米沢栄養大学『紀要』第5号、2018年12月:15-24
※10:Psychiatry Res. 2012 Dec 30;200(2-3):349-53.

お悩み3:貧血ぎみなのが気になる……。

貧血が気になる場合、鉄が豊富に含まれる牛の赤身肉や羊肉がおすすめです。また、豚や鶏のレバーにも鉄が多く含まれています。

食品中に含まれる鉄には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があります。肉に含まれるのは吸収率が高い「ヘム鉄」ですが、それでも摂取した鉄がすべて吸収されるわけではありません。ビタミンCを一緒に摂ると吸収されやすくなります※11。ほうれん草やブロッコリー、かぼちゃを合わせたり、デザートにみかんやイチゴ、柿など、ビタミンCの多い果物を加えたりするのもよいでしょう。また、お酢やレモンの搾り汁など酸味の多いものは胃酸の分泌を助けて、ミネラルの吸収も助けます。

※11:厚生労働省e-ヘルスネット「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」

お肉は大切な栄養源です。赤肉(脂肪の少ない「赤身肉」ではなく、牛・羊・豚などの「赤い肉」)や加工肉(ハム、ソーセージなど)には大腸がんのリスクがあるとの国際的な研究結果※12もありますが、日本人はそもそも他国と比べて赤肉・加工肉の摂取量が少ないため、平均的な摂取量であればリスクは小さいといえます※13。食べすぎに気をつけながら、効果的に摂取したいものです。

※12:IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat
※13:国立研究開発法人 国立がん研究センター「赤肉・加工肉のがんリスクについて」

監修者プロフィール
岸村康代さん(フードプランナー/管理栄養士/野菜ソムリエ上級プロ/一般社団法人大人のダイエット研究所 代表理事)

【岸村康代(きしむら やすよ)さんプロフィール】

フードプランナー/管理栄養士/野菜ソムリエ上級プロ/一般社団法人大人のダイエット研究所 代表理事。
大妻女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻を卒業後、商品開発や病院での指導を経て独立。メタボリックシンドローム指導から得た経験を生かし、健康的なダイエットのサポートや、 「繊活」「ズボラ部」など、忙しい大人のための食の提案を行う。『新装版 いつもの料理にかけるだけ おからパウダーダイエット』(扶桑社)、『落とした脂肪は合計10トン!伝説のダイエット・アドバイザーが教える最強のやせ方』(東洋経済新報社)、『きれいにやせる食材&食べ方図鑑』(家の光協会)など著書多数。

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