頭痛・風邪・熱
鼻水の色で分かる原因と対処法!透明・黄色・緑色の違いは?
監修/市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)
1日に分泌される量は約1.5Lともいわれている鼻水。しかし、これは健康な状態の場合で、風邪やアレルギー症状になると、鼻水の量が急激に増えます。鼻水は、色や状態によって病気の種類や進行度を推測する手がかりになります。さまざまな鼻水の原因とその対処法、症状が続いた場合の注意点について「東京みみ・はな・のどサージクリニック」名誉院長の市村恵一先生に伺いました。
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鼻水の色や粘り気で原因を推測する
鼻粘膜には、杯細胞(はいさいぼう)と鼻腺(びせん)と呼ばれる粘膜腺があります。これらがつくる粘液が鼻粘膜の表面を覆うとともに、吸い込む空気を加湿しています。風邪やアレルギー症状が起こると、鼻粘膜の知覚神経を介して副交感神経が刺激され、鼻腺がより多量の粘液をつくり出し、鼻水の量が増えます。ここでは、色や状態から考えられるさまざまな鼻水の原因について解説します。
透明な鼻水の原因
透明な鼻水は、風邪の初期症状やアレルギー性鼻炎の場合に多くみられます。風邪の場合、最初のサラサラとした水っぽい鼻水から、粘り気のある性状に変わります。一方、アレルギー性鼻炎では、花粉などのアレルゲンに反応して水っぽい鼻水が出ます。発作時以外では、粘り気のある鼻水がたまります。鼻づまりやくしゃみ、目のかゆみといった症状を伴うことも多いです。
黄色や緑色の粘り気のある鼻水の原因
黄色や緑色の粘り気のある鼻水が出る場合、副鼻腔炎の可能性が疑われます。ただし、鼻水に色がついているから細菌による副鼻腔炎というわけではありません。炎症により白血球が集まり、しばらくしてその役目を終えると化学物質や酵素が放出され、鼻水が黄色くなるのです。そのため、ウイルス性の鼻炎(鼻風邪)でも初期以外には同じような性状の鼻水がみられることがあります。鼻水の色が濃くなるほど炎症が進行している可能性があります。
1つの目安として、鼻水をはじめとする風邪症状が10日以上続く場合は、細菌性副鼻腔炎を疑うという考え方(10day-mark)があります。こうした時は自己判断せずに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
血が混じった鼻水の原因
血が混じった鼻水は、鼻のかみすぎや、乾燥によって鼻粘膜が傷つき出血したことが原因と考えられます。子どもの場合は、小さなおもちゃなどの異物を鼻の穴に入れて、それによって傷つき血が混じるケースも多くみられます。
このほか、鼻腔内の腫瘍やカビによる炎症、オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症)といわれる全身の血管に異常が起こる難病なども原因として考えられます。血が混じる量が多く、頻繁に出血する場合は、耳鼻咽喉科を受診して詳しい検査を受けてみましょう。
鼻水の原因別の対処法
鼻水が出る原因はさまざまですが、どのように対処したらよいでしょうか。セルフケアでできること、医療機関を受診した際の治療薬について、原因ごとに解説します。
ウイルスや細菌による感染症の場合の対処法
ウイルスや細菌による感染症では、まずは体を温めて十分な睡眠と休養、栄養のある食事を摂ることが大切です。鼻水・鼻づまりと共に高熱やのどの痛み、頬の痛みといった症状がある場合は、受診して痛み止めや抗菌薬を処方してもらいましょう。
マスクの着用やこまめな手洗いは、ウイルスや細菌からご自身を守るだけでなく、感染した時にほかの人にうつさないためにも大切な対策です。感染予防や重症化予防という点において、インフルエンザウイルスやRSウイルス、コロナウイルスは予防ワクチンという選択肢もあります。
アレルギーが原因の場合の対処法
アレルギーが原因の場合、まずは原因となる物質(アレルゲン)を避けることが重要です。季節性の花粉症では、まず外出を控え、出る場合はマスクやメガネなどを着用して、鼻や目、のどの粘膜を保護します。外出先から帰ったら、頭髪や衣服に付着した花粉を室内に持ち込まないよう、よくはらったり、掃除を徹底したりして、花粉の吸入を防ぐようにしましょう。
鼻水が出る際、蒸しタオルを鼻に当てると鼻粘膜の血行が促進され、症状を緩和させるのに効果的です。特に、加齢に伴う鼻粘膜の機能低下がみられる人にはおすすめです。
加湿器を使用して室内を適度な湿度(40〜60%)に保つことで、鼻粘膜の乾燥を防ぎ、鼻水の症状を緩和することが期待できます。症状が強く出ている場合は、医師に相談することをおすすめします。
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血管運動性鼻炎の場合の対処法
血管運動性鼻炎は、鼻粘膜がさまざまな刺激に過敏に反応して起こる鼻炎の一種で、寒暖差アレルギーなどとも呼ばれます。症状はアレルギー性鼻炎と非常によく似ており、主に止まらない鼻水、鼻づまりなどがみられますが、アレルギー検査をしてもアレルゲンが不明であることが特徴です。原因はまだ解明されていませんが、物理的、科学的な刺激(急激な温度変化や気圧の変動、化学物質)、ストレスが引き金になることが多いようです。
対処法は、アレルギー性鼻炎と同様に、鼻粘膜の保湿や蒸しタオルで鼻を温めて血行を促すのが効果的です。また、ストレスの管理も重要です。深呼吸やストレッチ、ヨガなどで自律神経を整え、生活習慣を改善すると免疫力アップにつながり、鼻の症状の緩和も期待できます。
鼻水が続く場合の注意点
さまざまな原因で鼻水が出ますが、症状に合わせた適切な対処や薬の服用により、おおむね1週間程度で症状が改善します。しかし、長く症状が続く場合には別の病気が隠れている可能性もあります。また、誤った鼻のかみ方を続けると耳を傷めることがあるので注意が必要です。
長期間続く鼻水は鼻炎や副鼻腔炎の可能性
長期間鼻水が続く時は、慢性鼻炎や副鼻腔炎の可能性があります。例えば、花粉症のシーズンが終わっても鼻水・鼻づまり、くしゃみが止まらない場合は、季節性ではない何らかのアレルゲン(ダニ、ガ、ゴキブリなど)による鼻炎が考えられます。
ウイルス感染後、風邪の諸症状が治まっても鼻水・鼻づまりが続く場合は、細菌の二次感染による副鼻腔炎が疑われます。黄色や緑色が濃く粘り気が強い、ほかの症状も出て10日以上経過しても治まらないといった時は、耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。
正しい鼻のかみ方で中耳炎を予防
鼻水には感染したウイルスや細菌が含まれています。量がそれほど多くなければ、鼻の入り口を柔らかいティッシュやガーゼで優しく拭うとよいでしょう。鼻水の量が多い時は、口から息を吸い、ゆっくり片側ずつ鼻をかみます。力任せにかむと、鼻の粘膜を傷つける可能性があるので注意しましょう。
子どもが鼻をかむ際に中耳炎を心配されることが多いですが、鼻水をすすることも中耳炎につながることがあります。鼻水の症状があると、鼻粘膜全体に炎症を起こしており、耳管の入り口も腫れて狭くなります。鼻をすすることでさらに耳管が狭まり、こもったような聞こえの悪い状態になるほか、鼻水に含まれる細菌が中耳に侵入し、さらに炎症を起こすことがあります。「鼻水はすすらない」ということを覚えておきましょう。
鼻水とほかの症状が同時に起こる場合の対処法
鼻水と共に、咳やのどの痛みが出始めたら、ウイルス感染症と考えられます。体調不良を感じたら、まずは安静にして体を休めましょう。
急な発熱を伴う場合は、インフルエンザやアデノウイルスの可能性も考慮し、早めの受診をおすすめします。
鼻水が出ること、それ自体は病気ではありませんが、さまざまな病気の症状の1つです。鼻水の色や性状から原因や病気の進行が分かることもありますので、気になる症状がある時はためらわずに医療機関を受診し、適切な対策をとってください。
監修者プロフィール
市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)
【市村恵一(いちむら けいいち)先生プロフィール】
東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授
1973年、東京大学医学部医学科卒業。同大学医学部附属病院耳鼻咽喉科、浜松医科大学耳鼻咽喉科を経て、1982年より米アトランタ市エモリー大学留学。帰国後、東京都立府中病院耳鼻咽喉科医長、東京大学医学部耳鼻咽喉科講師その後助教授、自治医科大学耳鼻咽喉科学教授、副学長、石橋総合病院院長などを経て、2019年より現職。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医、補聴器適合判定医(厚生労働省)。小児耳鼻咽喉科学会初代理事長。オスラー病鼻出血治療の第一人者。現在は主に補聴診療を担当。