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【食生活編】今日から実践!亜鉛を摂る食材選びと食生活改善のヒント

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監修/伊藤 大介先生(医療法人社団宗仁会 一之江駅前ひまわり医院 院長)

皮膚のトラブルや脱毛、味覚異常、性機能障害……全身のさまざまな不調の原因に亜鉛不足が考えられます。亜鉛は全身の健康維持に不可欠な微量ミネラルの一つで、体内では作れないため、食事などで摂取する必要があります。亜鉛をしっかり摂るためには、どのような食材やメニューを選べばよいでしょうか。総合診療医として亜鉛欠乏症治療や患者さんの生活指導に取り組んでいる一之江駅前ひまわり医院 院長の伊藤 大介先生に伺いました。

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なぜ亜鉛不足になる?

亜鉛は、体の成長や新陳代謝、免疫機能、タンパク質合成、ホルモン分泌などに関係し、全身の健康維持に必要な栄養素の一つです。人の体内にある300種類以上の酵素の働きには、この亜鉛が欠かせず、細胞の増殖やタンパク質の合成において重要な役割を担っています。亜鉛が不足すると、全身の細胞や臓器に影響が現れます。

近年、亜鉛欠乏の人が増えているという指摘があります。亜鉛不足の原因は大きく分けて、次の4つが考えられます。

  1. 1  亜鉛の摂取不足:亜鉛を摂る量が絶対的に足りない。主に小食もしくは偏食傾向の小児や女性にみられる
  2. 2  亜鉛の需要増大:必要とされる亜鉛の量が摂取量よりも多くなっているにもかかわらず摂取量が足りない。主に妊産婦にみられる
  3. 3  亜鉛の吸収不全:食事で亜鉛を摂っても、きちんと吸収されていない。主に食事量が少なく、加齢によって消化機能が低下する高齢者にみられる
  4. 4  亜鉛の過剰排泄:亜鉛が十分摂取・吸収されても、便や汗から排泄される。主に慢性的な炎症、吸収障害、腎機能低下などを伴う慢性疾患患者にみられる

このうち最も多いのが「亜鉛の摂取不足」です。

亜鉛は魚介類や肉類に多く含まれています。しかし、現代人の食生活は炭水化物に偏りがちで、肉を食べない、魚が苦手という人も少なくありません。小食で好き嫌いが多く、立ちくらみや爪の変形・脱毛を訴える女性を検査すると、血清亜鉛値(血中の亜鉛濃度)の低さが目立ちます。

亜鉛不足になる要因の一つに、食事の品目の少なさが挙げられます。節約や時短のために単品を選ぶ、パスタやラーメン、丼ものといった炭水化物が多めの食事に偏るなどです。男性でも食生活が偏っている人は多く、亜鉛欠乏症になることはあります。しかし、食事の絶対量が少なく、かつ偏りがちになるという点で、亜鉛欠乏症の患者さんは圧倒的に女性と子どもが多いというのが、診療現場の実感です。

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亜鉛不足…どんな症状になって現れる?

亜鉛が不足すると、全身の細胞や臓器に影響が出ます。亜鉛不足による代表的な症状としては、以下のようなものがあります。

  1. 1  皮膚炎・脱毛・爪の変形
  2. 2  味覚が変になる(味覚異常)・舌がピリピリする(舌痛症)
  3. 3  貧血
  4. 4  食欲不振・食欲低下
  5. 5  発育障害(特に子どもの低身長)
  6. 6  性機能不全
  7. 7  下痢
  8. 8  骨粗しょう症
  9. 9  傷の治りが遅い
  10. 10  易感染性(風邪などの感染症からの回復が遅い、罹患期間が長引く)

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このほか、情緒不安定や神経症状(しびれや立ちくらみ、転倒など)がみられることもあります。一方で、下記のような疾患に伴う亜鉛不足のケースもあるので、偏りのない食生活を送っているにもかかわらず亜鉛不足になっている人は、医療機関に相談してみましょう。

● 亜鉛が吸収されにくくなり、亜鉛不足になる疾患:慢性肝炎、炎症性腸疾患、短腸症候群、薬による亜鉛の吸収不全

● 亜鉛が排泄されやすくなり、亜鉛不足になる疾患:糖尿病、腎臓病(特に透析を受けている人)、肝臓病、薬による亜鉛の排泄増大

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亜鉛を摂る食生活へシフトチェンジ

体内で作ることができない亜鉛は、毎日の食事から摂るのが基本です。亜鉛はさまざまな食品に含まれています。食材やメニューを選ぶ際に意識してみましょう。

亜鉛摂取の推奨量

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1日の摂取量として成人男性は9.0~9.5mg、成人女性は7.0~8.0mgを推奨しています。さらに、妊婦では2mg、授乳婦では3mgの付加量が必要とされています※1。一方、令和元年の国民健康・栄養調査結果によると、20歳代以降の男女いずれにおいて、平均亜鉛摂取量は推奨量をやや下回っています。特に、妊婦や授乳婦では、必要量が増加するにもかかわらず、実際の摂取量は推奨量と比べて少なく、不足傾向がみられます※2

このほか、慢性的な炎症のある人やアスリート並みの激しい運動をする人では、体の維持に必要とされる亜鉛の量が摂取量よりも多くなるため、通常の摂取量では不足する可能性があります。

※1:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書:各論1エネルギー・栄養素(微量ミネラル)別ウィンドウで開きます」を2026年1月15日に参照

※2:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査別ウィンドウで開きます」を2026年2月16日に参照

亜鉛が多い食べ物

亜鉛が多く含まれている食べ物としては、魚介類や肉類、豆類、種実(ナッツ)類、野菜類、乳製品や卵などがあります。

● 亜鉛が豊富に含まれる食品例

食品群 食品名 100gあたりの亜鉛量
(mg)
食品の目安重量
魚介類 かき
養殖 生
14.0 1個(むき身) 15g
かたくちいわし
田作り
7.9 1食分 20g
しらす干し
半乾燥品
3.0 大さじ1杯 5g
うなぎ
かば焼き
2.7 1串 100g
まさば
1.1 1尾 500g
まあじ
皮つき 生
1.1 1尾 160g
肉類 ぶた 肝臓(レバー)
6.9 1人前 100g
うし [交雑牛肉] もも 赤肉 生 4.8 1枚 200g
にわとり[若どり] もも 皮つき 生 1.6 1枚 200g
藻類 あまのり
焼きのり
3.6 1枚 2g
わかめ
カットわかめ 乾
2.8 1人前 10g
野菜類 切り干しだいこん
2.1 1食分 10g
えだまめ
1.4 10さや(さやつき)
30g
たけのこ
若茎 生
1.3 1本 1kg
豆類 糸引き納豆 1.9 1個 30~50g
焼き豆腐 0.8 1丁 300~400g
種実(ナッツ)類 かぼちゃ
いり 味付け
7.7 大さじ1杯 10g
ごま
いり
5.9 大さじ1杯 9g
アーモンド
3.6 10粒 14g
くるみ
いり
2.6 1粒 5g
らっかせい
乾 大粒種・小粒種
2.3 殻付き10粒 25g
乳製品 プロセスチーズ 3.2
卵黄 生 3.6

出典:食品の目安量 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット:亜鉛の働きと1日の摂取量別ウィンドウで開きますを2026年2月27日参照

食品名・100gあたりの亜鉛量 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年別ウィンドウで開きます」を2026年3月10日参照

ただし、亜鉛摂取だけを意識して、上記の食物をたくさん食べればよいというわけではありません。亜鉛欠乏による症状に悩む患者さんが受診した際には、「魚介類には比較的多く亜鉛が含まれているので、この中から好きなものを食べてみてください」といった具合に、特定の食材ではなく、本人がそのカテゴリから自由に選択できるように説明しています。なぜなら、亜鉛が不足している人は、ビタミンB12、鉄などの亜鉛以外のミネラルも同様に不足していることが多いので、それらを補うことも必要なのです。大事なのは、偏りのないバランスの取れた食生活です。

手軽に補う手段として、口さみしいときやおやつに、アーモンドなどのナッツ類から始めてみることも一手です。コンビニエンスストアでも手に入ります。かぼちゃの種やいりごまは亜鉛を豊富に含むので、朝食のシリアルに”ちょい足し”する、料理に振りかけるといった工夫で摂取するとよいでしょう。1日10mg程度の摂取でも習慣化すれば意識的な亜鉛補充として有用です。そういった日常の積み重ねで肌荒れや脱毛といった外見に関わる症状が目に見えて改善すれば、心理的にも大きな効果を得られるのではないでしょうか。

外食やコンビニ食が多い人は…

多くの人に共通しているのが動物性たんぱく質の不足です。まずは肉や魚を意識して摂るようにしましょう。手軽に食べられるサラダチキンなど、コンビニエンスストアでもバリエーション豊富に揃っています。肉や魚が苦手という場合は、チーズなどの乳製品や切り干し大根などの野菜、海藻類からでも亜鉛摂取は可能です。

亜鉛サプリメントは有用?

亜鉛補充のサプリメントについては、食事で十分に摂取できない人にとっては有効な方法の一つといえます。ただ、サプリメントの場合は食事から摂取するより効率的であるがゆえに、長期間にわたって服用し続けることで、逆に亜鉛の摂り過ぎの危険性があるので注意が必要です。亜鉛の摂り過ぎによる症状として、胃の不快感や吐き気、めまいといった中毒症状や、免疫機能の低下がみられる場合があります。また、亜鉛を摂り過ぎると、同じく体に必要な微量ミネラルである銅の吸収が阻害され、銅が欠乏する可能性があります。亜鉛サプリメントを使用する場合は、決められた用法・用量を必ず守るようにしましょう。

そして、長期服用される際には、定期的に血液検査で亜鉛や銅の数値を確認するようにしてください。

国内で製造されている亜鉛サプリメントは、1日10mgなど、もともと低用量に設定されている商品が多くみられます。しかし海外製品の中には、薬物療法で1日に補充する量に匹敵する50mg程度含まれるものもあります。ネット通販などでも手軽に入手でき、国内製造品よりも安価なものも少なくないので、そうした製品を選ぶ人もいるでしょう。サプリメントを服用しているのに不調が改善しないといった場合には、かかりつけの内科などを受診して血清亜鉛値をチェックしてみましょう。

亜鉛欠乏症チェックリスト

監修者プロフィール
伊藤 大介先生(医療法人社団宗仁会 一之江駅前ひまわり医院 院長)

【伊藤 大介(いとう だいすけ)先生プロフィール】

医療法人社団宗仁会 一之江駅前ひまわり医院 院長

東京大学医学部医学科卒業。同大学院外科博士課程修了。日本赤十字社医療センター、公立昭和病院、東京大学医学部附属病院、埼玉県立がんセンターなどに勤務後、2020年に一之江ひまわり医院院長を務め現在に至る。近著に『総合診療医が徹底解読 健康診断でここまでわかる』(2025年10月発行、文春新書)。

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