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【基礎知識編】もしかして私も?亜鉛欠乏症の症状と簡単チェックリスト

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監修/脇野 修先生(徳島大学大学院医歯薬学研究部 腎臓内科学分野 教授)

最近、抜け毛や肌荒れが気になる、傷の治りが遅い、何を食べてもおいしくない……こうした不調の原因として亜鉛欠乏症が考えられます。亜鉛は人間の体に不可欠な微量元素の一つです。亜鉛が不足すると、全身にどのような影響があるのか、徳島大学大学院医歯薬学研究部 腎臓内科学分野 教授の脇野 修先生に伺いました。

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亜鉛欠乏症とは?人間の体に重要な亜鉛の働きを知る

亜鉛は、体の成長や新陳代謝、免疫機能、タンパク質合成、ホルモン分泌などに関係し、全身の健康維持に必要な鉄や銅などと並ぶ、必須微量元素(栄養素の1つであるミネラル)です。体内にある300種類以上の酵素の働きに欠かせない存在で、細胞の増殖やタンパク質の合成において重要な役割を担います。亜鉛が不足すると、細胞の増殖やタンパク質の合成が低下し、全身の細胞や臓器に影響が現れます。

また、亜鉛は体内では作れないため、食事から摂取します。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」※1では、1日の摂取の推奨量は18~29歳の男性で9.0mg、30~64歳の男性で9.5mg、65歳以上の男性で9.0mg、18~29歳の女性で7.5mg、30~64歳の女性で8.0mg、65~74歳の女性で7.5mg、75歳以上の女性で7.0mgとなっています。

近年、亜鉛欠乏の人が増えているという指摘があります。国内では、特に症状がない潜在的なケースも含め、10~30%の人が亜鉛欠乏状態にあるとみられています※2。亜鉛欠乏の主な原因としては、亜鉛の摂取不足、吸収不全、需要増大、排泄増加が挙げられます。

主な原因

  • 摂取不足:絶対量が足りない。主に小食もしくは偏食傾向の小児や女性にみられる
  • 吸収不全:摂取しても十分に体内に吸収されない。主に食事量が少なく、加齢によって消化機能が低下する高齢者にみられる
  • 需要増大:妊娠や授乳などで必要量が増えているにもかかわらず摂取量が足りない。主に妊産婦にみられる
  • 排泄増加:必要以上に糞便とともに排泄する。主に慢性的な炎症、吸収障害、腎機能低下などを伴う慢性疾患患者にみられる

「亜鉛欠乏症」とあわせて「低亜鉛血症」という言葉を目にすることがあるでしょう。亜鉛欠乏症とは、亜鉛が不足することで実際にさまざまな症状が現れている状態を指します。一方、低亜鉛血症は、血中の亜鉛濃度が低下し、亜鉛が不足した状態のことを指します。

※1:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書:各論1エネルギー・栄養素(微量ミネラル)別ウィンドウで開きます」を2026年3月10日に参照

※2:一般社団法人 日本臨床栄養学会編「亜鉛欠乏症の診療指針2024別ウィンドウで開きます」を2026年3月10日に参照

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亜鉛が足りないとどうなる?亜鉛不足で生じるさまざまな全身症状

亜鉛が不足すると、全身の細胞や臓器に影響が現れることは前項で説明したとおりです。ここでは、亜鉛欠乏症の症状としていくつか主なものを挙げます。

● 皮膚症状(開口部、四肢、爪周囲、水疱性・膿疱[のうほう]性皮膚炎、びらん性皮膚炎、カンジダ感染)、口内炎、脱毛、傷の治りが遅い(創傷治癒遅延)、味覚異常、食欲不振・低下

亜鉛が不足すると、なぜこれらのような症状が起こるのでしょうか。それは、体の働きを支える酵素が関係しています。例えば、DNAポリメラーゼは、人間の体の最も基礎になる細胞増殖(細胞が成長、分裂することで細胞数が増える過程)に欠かせない酵素で、この酵素の働きには亜鉛が必要です。また、皮膚や粘膜、爪、毛根などは、新陳代謝が非常に活発な組織であり、多くの亜鉛を使って細胞増殖を促し、健康な状態を維持しています。そのため、亜鉛不足になると代謝が低下し、毛髪が抜けやすくなったり、皮膚の傷や口内炎・ニキビなど炎症の治りが悪くなったりしてしまうのです。

味覚異常も同様です。味を知覚するのは舌の表面にある味蕾(みらい)という細胞ですが、この細胞の新陳代謝にも亜鉛の働きが不可欠で、亜鉛が足りないと代謝が鈍くなり、味がしない、あるいは味が分からなくなるといった症状として現れるのです。その結果、食欲不振あるいは食欲低下を招くこともあります。

● 風邪などの感染症からの回復が遅い、罹患期間が長引く(易感染性)

風邪などの感染症からの回復が遅れたり、症状が長引いたりする易感染性(いかんせんせい)も、亜鉛欠乏症の特徴です。誤解されやすいのですが、免疫力が著しく低下してさまざまな感染症にかかりやすくなる「免疫不全状態」を意味するわけではありません。風邪は誰でもひきますが、かかった後の治りが悪い状態だと考えるとよいでしょう。風邪の症状がいつまでも続く、なかなか治らないといった場合、その背景として亜鉛不足の可能性が考えられるということです。特に、新型コロナウイルス感染症に関して、亜鉛欠乏症の人では治りが悪くなることがさまざまな研究で指摘されました※3

※3:Jothimani D, et al. Int J Infect Dis. 2020 Nov:100:343-349. 、Yasui Y, et al. Int J Infect Dis. 2020 Nov:100:230-236. 、Wu JY, et al. Int J Infect. 2023 Oct;87(4):e63-e67

● 子どもの低身長、体重増加不良

子どもの発育障害がなぜ亜鉛と関連するのかというと、骨の形成に関わる骨芽細胞(こつがさいぼう)に含まれるアルカリフォスファターゼという酵素が十分に働くためには亜鉛が不可欠だからです。さらに、細胞の増殖にも亜鉛が非常に重要な働きをしています。成長期の子どもは骨をどんどん作る過程にあり、細胞の分裂・増殖を促進させる亜鉛が不可欠なうえ、必要量も多くなるのです。

この他にも、以下のような症状がみられることがあります。

  • 性腺機能障害(二次性徴[思春期に現れる身体的変化]の障害、性機能障害、早期閉経、不妊症など)
  • 情緒不安定
  • 運動失調(ふらつき、手の震え、むせやせき込み、ろれつが回らない、転倒など)
  • 貧血

このように亜鉛は体のさまざまな損傷、不調、トラブルの修復、治癒に密接に関わっていて、亜鉛が不足しているとこれらが進まなくなり、さまざまな症状として現れると考えられています。

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亜鉛足りていますか?簡単チェックリストで確認

医師が亜鉛欠乏症の診断を行う際に基準としている症状がいくつかあります。ご自身の自覚症状として下記のような症状に心当たりがある人は要注意です。

<亜鉛欠乏症チェック項目>

  • 食事がおいしくない
  • 傷が治りにくい
  • 風邪などの感染症にかかり、治りにくい
  • 抜け毛が多い
  • 肌が荒れる
  • 体がだるい
  • 身長の伸びが悪い(小児に関して)

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もちろん上記の症状のみで判断することはできません。亜鉛欠乏症は、日本臨床栄養学会が2025年度に新たに策定した診断基準に基づいて、診断が行われます※2。具体的には、(1)上記のような亜鉛欠乏症に特徴的な症状があり、そのうち一つでも当てはまる(2)他にその症状を説明するような疾患がない(3)血清亜鉛値(血中の亜鉛濃度)を測定して正常以下(60μg/dL未満)である、といったことが明らかになると、まずは「亜鉛欠乏症の疑い」となります。亜鉛欠乏によって生じる症状は多岐にわたるため、実際に亜鉛を投与してみてその症状が改善して、初めて亜鉛欠乏症であるとはっきり診断がつきます。スタートの時点では、あくまでも「疑い」であることが亜鉛欠乏症の治療なのです。

上記のような自覚症状がある場合は、医療機関を受診して血清亜鉛値を測定してもらいましょう。数値が低ければ薬剤(内服)で亜鉛を補充する治療で症状の改善を目指します。皮膚症状については、2~3カ月で改善がみられることが多いとされています。一方で、亜鉛を補充しても改善がなかなかみられない場合、亜鉛欠乏がその症状の原因ではない可能性があります。服薬治療の期間中も症状の変化の有無をご自身でチェックする、そして必ず再受診して医師に経過をフォローしてもらうことが重要です。

亜鉛欠乏症チェックリスト

監修者プロフィール
脇野 修先生(徳島大学大学院医歯薬学研究部 腎臓内科学分野 教授)

【脇野 修(わきの しゅう)先生プロフィール】

徳島大学大学院医歯薬学研究部 腎臓内科学分野 教授、徳島大学病院腎臓内科 診療科長

1990年、慶應義塾大学医学部卒業。1999年、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA) 医学部留学、2015年、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科准教授を経て、2021年より現職。主な専門分野は腎疾患全般、透析、内分泌・代謝、高血圧。「亜鉛欠乏症の診療指針2024」作成委員長。

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