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女性が気になる症状

子宮筋腫とは?種類と症状、診断方法、治療法を解説

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監修/石川 博士先生(千葉大学医学部附属病院産科・婦人科診療准教授)

子宮の平滑筋(へいかつきん)という筋肉から発生する良性腫瘍である子宮筋腫。症状のない人も含めると、女性の3人に1人がかかるともいわれています。子宮筋腫はできる位置や大きさなどによって、過多月経や貧血などの症状が出ることがあるほか、不妊や流産への影響も考えられます。子宮筋腫の種類や症状、診断方法や治療法などについて、千葉大学医学部附属病院産科・婦人科診療准教授の石川博士先生に伺いました。

子宮筋腫とは?

子宮筋腫は、子宮を構成している「平滑筋」という筋肉から発生する良性の腫瘍です。1つだけできる場合もありますが、複数個できるケースも多くみられます。自覚症状がない場合もあり、妊娠や健診などをきっかけに偶然発見されるケースもあります。

子宮筋腫は、発生する場所によって、粘膜下(ねんまくか)筋腫、筋層内(きんそうない)筋腫、漿膜下(しょうまくか)筋腫の3種類に分けられます。そのほか、頻度は低いですが子宮頸部にできる頸部筋腫もあります。

粘膜下筋腫

子宮の内側(内膜面)にできる。

筋層内筋腫

子宮の筋肉の中にできる。

漿膜下筋腫

子宮の外側にできる。

粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫

子宮筋腫の症状と特徴

子宮筋腫の主な症状として、過多月経、貧血、下腹部痛、腹部の圧迫感などがあります。筋腫が大きくなると、膀胱や腸など周囲の臓器を圧迫して、頻尿、尿漏れ、便秘、腰痛といった症状が出る場合もあります。症状は筋腫のできる位置(種類)や大きさ、数などによって異なり、自覚症状がない場合もあります。筋腫の種類ごとに、以下のような特徴があります。

粘膜下筋腫

筋腫が小さくても過多月経や貧血を生じやすい。また、筋腫が子宮内腔に飛び出し、子宮内膜に影響するため、不妊や流産の原因になるともいわれている。

筋層内筋腫

筋腫が小さいうちは症状が出ないことも多いが、筋腫が大きくなると、子宮全体が大きくなり、過多月経や貧血を生じやすくなる。

漿膜下筋腫

子宮内膜に影響しない位置に発生するため、過多月経や貧血といった症状は出にくく、気づきにくい。一方、大きくなると膀胱や腸が圧迫されて、頻尿や尿漏れ、便秘などを生じることも多い。

過多月経が続くと鉄が不足して貧血(鉄欠乏性貧血)になりますが、貧血が少しずつ進むとその状態に体が慣れていくため、貧血になかなか気づかず、悪化してから体調が悪くなって気づくケースも多くあります。月経量が増えた、痛みが強くなったと感じる場合はもちろんのこと、健康診断で貧血を指摘された場合も、婦人科疾患が隠れている可能性があるため、婦人科を受診することをおすすめします。

また、子宮筋腫は30代以降に増加しますが、近年は女性の出産年齢が高くなっており、妊娠を希望するタイミングと子宮筋腫が増えるタイミングが重なるようになってきています。子宮筋腫は不妊や流産の原因になることもありますが、妊娠して初めて子宮筋腫があることを知るケースも多くなっています。将来子どもを持つことを考えている場合は、定期的に健診を受けておくとよいでしょう。最近は、将来の妊娠・出産に備えて全般的な健康管理に取り組む「プレコンセプションケア」を行っている医療機関もあります。

参考:千葉大学医学部附属病院 プレコンセプションケア外来(妊娠前相談外来)

子宮筋腫の原因

子宮筋腫は、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響で発生して大きくなると考えられています。そのため、閉経してこれらの女性ホルモンの分泌量が急激に減少すると、筋腫は自然と小さくなります。

子宮筋腫の診断方法

子宮筋腫が疑われる場合、通常は内診と超音波検査を行って診断します。必要に応じてMRI(磁気共鳴画像)検査を行うこともあります。MRI検査は、子宮筋腫と子宮肉腫の鑑別のために実施されることがあります。子宮肉腫は、発生頻度は低いものの子宮の筋肉から発生する悪性の腫瘍で、種類によっては、超音波検査では子宮筋腫との鑑別が難しい場合があります。また、子宮筋腫で手術が必要とされる場合にも、筋腫の位置や大きさなどを正確に把握するためにMRI検査を実施します。

子宮筋腫の治療法

子宮筋腫は良性疾患であり、がんや肉腫のように命にかかわる病気ではないため、症状がなければ治療の必要はなく、経過観察を行います。子宮筋腫による症状がある場合は、筋腫の種類や大きさ、患者さんの年齢や閉経までの年数、妊娠希望の有無、治療に対する患者さんの希望などを踏まえて、治療法を選択します。

薬物療法

薬を使った治療には、子宮筋腫自体に対する治療(偽閉経療法)と、子宮筋腫に伴う症状に対する治療(対症療法)があります。

・偽閉経療法

卵巣の機能を抑制する薬(GnRHアゴニスト/アンタゴニスト)を使用して、子宮筋腫を小さくする治療法です。月経が止まるため、過多月経など月経に伴う症状がなくなり、貧血の改善も期待できます。一方、女性ホルモンの分泌が止まることにより、副作用として骨密度の低下がみられることがあるため、原則として最長6カ月間しか使用できません。また、薬をやめると筋腫が元の大きさに戻ることが多く、その場合は筋腫に伴う症状も再発します。そのため、偽閉経療法は、手術前に筋腫を小さくして侵襲性の低い手術を行えるようにしたり、手術時間を短縮したりするために行うのが基本です。また、間もなく閉経すると考えられる患者さんに対して、症状を抑えた状態で自然に閉経に持ち込む「逃げ込み療法」として使用することもあります。

・対症療法

月経時の症状(月経困難症)を緩和するために、月経困難症治療剤(低用量ピル)を使用することがあります。また、子宮内にホルモンを放出して過多月経や月経痛を改善する装置(子宮内黄体ホルモン放出システム)を挿入することもありますが、筋腫によって子宮が変形していると、自然脱落する可能性が高くなります。どちらも子宮筋腫自体に作用する薬ではなく、子宮内膜を薄くすることで、月経量の減少や月経痛の緩和が期待できます。月経量を減らすために止血剤を使用したり、貧血に対して鉄剤を処方したりすることもあります。

手術

子宮全体を摘出する手術か、子宮筋腫のみを摘出する手術を行います。また、手術方法も、開腹手術だけでなく、腹腔鏡手術やロボット支援下手術、腟式手術といった比較的負担の少ないものもあります。患者さんの希望も考慮しつつ、筋腫の場所、大きさ、数、妊娠希望の有無などによって、どのような手術を行うかを検討します。

・子宮全摘術

妊娠の希望がなく、子宮を温存する必要がない場合は、子宮全体を摘出する手術が検討されます。開腹手術のほか、お腹に数カ所穴を開けて行う腹腔鏡手術、お腹に傷をつけずに腟から子宮を摘出する腟式手術があります。最近は、腟から内視鏡を入れて子宮を摘出するvNOTES(経腟的内視鏡手術)も行われており、従来の腟式手術よりも安全性が高くなっています。医療用ロボットを使ったロボット支援下手術も適応となっており、こちらも開腹手術より傷が小さい手術です。

・子宮筋腫核出術

妊娠の可能性を残したい場合に、子宮筋腫のみを取り除く方法です。開腹手術か腹腔鏡手術が行われます。腹腔鏡手術のほうが傷が小さくて済みますが、筋腫の数が多い場合など、開腹手術のほうがメリットが大きい場合もあります。子宮の内腔に飛び出した粘膜下筋腫に対しては、腟から子宮鏡を入れて筋腫を切除する子宮鏡下手術が行える場合もあります。

この他、子宮動脈塞栓術(UAE)という血管内治療もあります。太ももの付け根から血管内にカテーテルを挿入し、子宮につながる大きな血管(子宮動脈)をふさいで血流を遮断することで、子宮筋腫を小さくする方法です。手術ではないため体の負担が少ない治療法ですが、治療後、筋腫が小さくなっていく際に痛みが出る場合があります。また、筋腫だけでなく子宮自体も小さくなるため、妊娠の希望がない場合の選択肢となります。

監修者プロフィール
石川 博士先生(千葉大学医学部附属病院産科・婦人科診療准教授)

【石川博士(いしかわ ひろし)先生プロフィール】

千葉大学医学部附属病院産科・婦人科診療准教授
医学博士。1995年金沢大学医学部卒業。富山県立中央病院、金沢大学附属病院、国立金沢病院(現・金沢医療センター)、石川県立中央病院、Northwestern University留学を経て、2009年千葉大学大学院医学研究院助教。2016年千葉徳洲会病院婦人科部長、2017年千葉大学大学院医学研究院助教、2020年千葉大学産科・婦人科医局長・診療講師・千葉大学大学院医学研究院講師、2021年より現職。生殖内分泌学、内視鏡手術、ロボット支援下手術、生殖補助医療を専門とし、特に子宮筋腫、子宮腺筋症の病態解明の研究に取り組んでいる。

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