女性が気になる症状
女性の4人に1人はかかる 子宮筋腫
30歳以上の女性の約4人に1人にできると言われる子宮筋腫は、子宮壁にできる良性の腫瘍です。悪性腫瘍に変化することはほとんどなく、症状の深刻度や治療の時期も人それぞれ異なります。しかし、妊娠を考えている女性には、子宮筋腫が不妊の原因になることもあります。
今回は子宮筋腫の種類や治療方法について、東京医科大学病院産婦人科の井坂恵一先生にお話を伺いました。
原因と症状
女性ホルモンによって筋腫は大きくなる
子宮筋腫は、子宮壁にできるこぶのような良性の腫瘍で、筋肉が異常増殖したものです。
なぜできるのか、その原因ははっきりしていませんが、卵巣から分泌される女性ホルモンが影響し、筋腫が発育すると考えられています。ですので、閉経後は自然と小さくなる傾向があります。
「貧血」「月経痛」「頻尿」「便秘」が強く表れる
人によって、筋腫が大きくなる、筋腫が増えるなど進行度合は異なります。症状がまったく出ない人も多く、貧血、頻尿、便秘、強い月経痛という症状が受診のきっかけになるようです。
こうした症状の表れ方は、子宮内のどの場所に筋腫ができるか、その大きさ、数によって異なります。
子宮筋腫の種類は以下の4つに大別されます。
● 筋層内筋腫
子宮壁を構成する平滑筋という筋層内にできる筋腫。子宮筋腫のうち、大きな割合をしめるタイプ。小さいものならほとんど症状が出ないが、大きくなると月経時の経血が増えたり、不妊の原因になる。
● 漿膜下(しょうまくか)筋腫
子宮壁の最も外側にでき、外に向かって大きくなっていき、子宮から突出してしまうケースもある。他の筋腫と違って、過多月経や貧血などの症状が出ないため、気がつきにくい。筋腫が大きくなると膀胱や直腸など他の臓器を圧迫し、頻尿や便秘をおこすこともある。
● 粘膜下筋腫
子宮の内側に向かって筋腫ができる。子宮内膜に筋腫の栄養血管が露出し、月経時などに大出血しやすくなる。また、過多月経になるので貧血が強く出ることが多く手術が選択される。受精卵が着床しにくくなり不妊症の原因になる。
● 頸部筋腫
子宮の腟側にできる筋腫。大きくなると過多月経になり、貧血状態が強く出る。その段階で手術が選択される。
治療法と手術法
治療法は年齢や筋腫の場所、大きさ、数で決まる
治療には、年に1度程度の検査で筋腫の変化を調べる「経過観察」、女性ホルモンの分泌を止める「薬物療法」、そして「手術療法」があります。
「薬物療法」とは、薬物によって女性ホルモンの分泌を止めて無月経の状態にするもので、「術前投与」と「逃げ込み投与」があります。
「術前投与」とは、手術の前に薬物を投与し筋腫の大きさを10cm以下にして、開腹手術ではなく内視鏡下手術ができるようにするために行われます。
「逃げ込み投与」は、閉経の近い人は、手術ではなく薬物療法を選択し、閉経までつなぐ方法です。
「手術療法」には筋腫だけを摘出する「筋腫核出手術」と子宮をすべて摘出する「子宮全摘出手術」があります。
「子宮全摘出手術」の場合は、妊娠を望まない人、年齢から出産が無理な人、子宮肉腫の疑いがある人になります。また、開腹手術になるのは、筋腫が10cm以上、筋腫が多発している場合です。
治療は、筋腫の場所や大きさ、数、年齢などを複合的に考えて選択。子宮を残すことを第一に考えられます。
体に優しい内視鏡下手術
近年、子宮筋腫の手術で圧倒的に多くなっているのが、「内視鏡下手術」です。
筋腫の大きさが10cm以内、または薬物投与でその程度まで小さくできれば内視鏡下手術が選択できます。これは、手術後の回復も早いので入院期間が短くすみ、術後の傷が目立たないといった体に優しい手術です。
内視鏡を使った手術には「腹腔鏡下手術」と「子宮鏡手術」があります。
腹腔鏡下手術はへその下に開けた孔から内視鏡を入れ、腹腔内をモニターで見ながら、他にあけた孔から手術器具を入れて行います。
この場合、腹腔にガスを入れてドーム状にするのが一般的ですが、ガスを使用しないで、より体に優しく傷が小さくすむ「皮下鋼線吊り上げ法」があります。
腹腔鏡下手術に向いているのは、漿膜下筋腫と筋層内筋腫です。
一方、子宮鏡を子宮から入れて行われる子宮鏡下手術は、50%以上子宮内に出てきている粘膜下筋腫に向いている方法です。
5cm以上の子宮筋腫は不妊の原因に
子宮筋腫は、初期の場合まったく症状が表れないことも多く、婦人科検診で発見されて気づくこともよくあります。自覚症状がないので、受診も治療もしないまま過ごしてしましてしまいうことが少なくありません。
しかし、子宮筋腫が原因で不妊や流産を繰り返すこともあります。妊娠を希望する場合、筋腫の小さい間に手術をして摘出することを考えてもいいでしょう。10cm以上になると子宮の形が変わり着床障害が起きやすくなります。
不妊の原因がないのに、妊娠を望んでから1~2年以上妊娠しない人は子宮筋腫の検査を。もし子宮筋腫があれば、摘出すると妊娠率は上がりやすくなります。
子宮筋腫をそのままにして体外受精などをしても、着床しにくいので、不妊治療の前に子宮環境を整えることをおすすめします。
不妊や流産を繰り返す場合は、ぜひ受診して医師と相談してみましょう。