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カンタン健康生活習慣

研究で分かった!毎日のコーヒー習慣がもたらす健康メリット

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監修/森 勇磨先生(産業医・内科医/MEDU株式会社代表)

コーヒーを習慣的に飲んでいる人は多いでしょう。近年では、コーヒーが健康に良い影響をもたらすという研究結果が多数得られています。コーヒーを飲むとどのような効果が期待できるのでしょうか。また、習慣的に飲む場合の適正量や注意点はあるのでしょうか。産業医・内科医/MEDU株式会社代表の森勇磨先生に伺いました。

コーヒーが健康に与えるメリット

コーヒーが健康に与えるメリット

コーヒーと健康に関する研究は、国内外で多数行われており、コーヒーを習慣的に飲むことでさまざまなメリットがあると考えられています。まず、コーヒーによって糖尿病のリスクが低下するといわれています。海外の論文では、1日3〜4杯コーヒーを飲んでいる人は、コーヒーを飲まない人や2杯以下の人と比べて糖尿病のリスクが低下したことが示されています※1。日本でも、コーヒーを飲んでいる人のほうが、まったく/ほとんど飲まない人よりも糖尿病のリスクが低かったという研究結果があります※2

また、コーヒーによって子宮体がんや肝臓がんのリスクが低下する可能性も指摘されています※3。肝臓への影響に関しては、肝臓がんとも関連の深い肝硬変のリスクが、コーヒーによって低下する可能性があるという研究もあります※4

さらに、コーヒーを習慣的に飲んでいる人のほうが、死亡リスクが低いというデータもあります。日本人を対象に国立がん研究センターが実施した研究では、コーヒーを飲んでいる人では全死亡(原因を問わないすべての死亡)リスクや、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクが低下したことが分かり、いずれも1日3〜4杯までは、コーヒーの摂取量が増えるほどリスクが低くなっていました※5。海外の論文でも、1日3.5杯のコーヒー摂取で全死亡率が最も低くなったことが示されています※6

コーヒーにはさまざまな成分が含まれており、どの成分が健康効果を発揮しているのか、明確には分かっていません。しかし、一つ考えられるのは、コーヒーに含まれるポリフェノールの一種、クロロゲン酸の作用です。クロロゲン酸には、抗酸化作用や抗炎症作用、食後血糖値の上昇を抑える作用などがあるといわれています※7

※1 Huxley R, et al. Arch Intern Med. 2009 Dec 14;169(22):2053-63.
※2 Oba S, et al. Br J Nutr. 2010 Feb;103(3):453-9.
※3 Zhao LG, et al. BMC Cancer. 2020 Feb 5;20(1):101.
※4 Liu F, et al. PLOS One. 2015 Nov 10;10(11):e0142457.
※5 Saito E, et al. Am J Clin Nutr. 2015 May;101(5):1029-37.
※6 Kim Y, et al. Eur J Epidemiol. 2019 Aug;34(8):731-752.
※7 Santana-Gálvez J, et al. Molecules. 2017 Feb 26;22(3):358.

飲み過ぎには注意!コーヒーのデメリット

飲み過ぎには注意!コーヒーのデメリット

一方、コーヒーは飲み過ぎるとデメリットも生じます。まず、大量に飲むと胃が荒れやすくなる可能性があります。コーヒーは、消化に必要な胃酸の分泌を活発にすると考えられています。飲み過ぎると胃酸の分泌量が増え過ぎて胃の粘膜が刺激され、胸焼けや腹痛などが生じることがあります。

また、コーヒーに含まれるカフェインには眠気を覚ます作用がありますが、大量に摂取すると「元気の前借り」をすることになります。本来、体が疲れるとアデノシンという物質が作り出され、アデノシンがアデノシン受容体に結合することで眠気を感じる仕組みになっています。カフェインはこのアデノシンと構造が似た物質です。アデノシンがアデノシン受容体と結合するのを阻害し、代わりにカフェインがアデノシン受容体と結合することで、眠気を覚まします。本当は疲れているのにコーヒーを飲んで頑張ろうとすることは、休息が必要なのに「元気なのだ」と体に勘違いさせて無理をしている状態といえます。カフェインによって一時的に元気になったとしても、それは「元気の前借り」であり、反動で後から強い疲労を感じることがあります。

さらに、コーヒーの飲み過ぎによるカフェイン依存症の懸念もあります。大量のカフェイン摂取が習慣になっていると、カフェインを摂取しなくなることで頭痛、不安、吐き気、大量の発汗といった離脱症状が出ることがあります。

日本では、カフェインの摂取許容量は定められていませんが、海外では健康な成人で1日400mgが目安とされている国・地域が多くなっています※8。カフェインの含有量は製品ごとに異なりますが、400mgはだいたいコーヒー4〜5杯分に当たりますので、目安として知っておくとよいでしょう。とはいえ、カフェインの感受性には個人差があります。摂取量にかかわらず、前述の症状に心当たりがある場合は、コーヒーの摂取量を控えることを検討してみてください。カフェインはお茶やエナジードリンクにも含まれていますので、コーヒー以外の飲料も含めて摂り過ぎに気をつけましょう。また、カフェインは一部の医薬品にも含まれています。カフェインを含む飲み物と一緒に服用するとカフェインの過剰摂取になる可能性があるため、注意が必要です。

※8 農林水産省「カフェインの過剰摂取について」(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html)を2024年1月7日に参照

健康効果が得やすいコーヒーの飲み方を知ろう

健康効果が得やすいコーヒーの飲み方を知ろう

多くの研究で、1日3〜4杯程度のコーヒー摂取で高い健康効果がみられることから、この程度の量を習慣的に飲むのは健康に良いと考えられます。ただし、カフェインには覚醒効果があるため、夜遅い時間に飲むと、人によっては眠れなくなることがあるかもしれません。コーヒーの摂取は夕方ぐらいまでにするとよいでしょう。また、糖尿病のリスク低下に関しては、カフェインレスのコーヒーでも効果があったというデータがあります※1。前述のクロロゲン酸はカフェインレスコーヒーにも含まれますので、カフェインが苦手な場合でも一定の健康効果は期待できると考えられます。

砂糖をたっぷり入れたコーヒーは、砂糖の過剰摂取につながる可能性があるため、注意が必要です。健康効果という点ではブラックコーヒーが望ましいといえますが、砂糖を入れないと飲めない場合は、可能な限り控えめにしたいものです。糖分を多く含む清涼飲料水を飲む習慣がある人は、コーヒーに代えることで、コーヒーの健康効果を得られるうえに砂糖の摂取量も減らせるでしょう。

また、妊娠中のカフェイン摂取は控えめにしましょう。海外では、妊婦のカフェイン摂取許容量は200〜300mgとされています※8。カフェインを完全に断つ必要はありませんが、普段よりも少なめを心がけましょう。

監修者プロフィール
森 勇磨先生(産業医・内科医/MEDU株式会社代表)

【森勇磨(もり ゆうま)先生 プロフィール】

産業医・内科医/MEDU株式会社代表
神戸大学医学部医学科卒業。研修後、藤田医科大学病院救急総合内科に勤務。株式会社リコーの専属産業医として予防医学の実践を経験後、独立。予防医学のさらなる普及を目指し、Preventive Room株式会社(現・MEDU株式会社)を立ち上げる。2020 年、「すべての人に正しい予防医学を」という理念のもと、YouTubeチャンネル「予防医学ch /医師監修」をスタート。2022年、医療×IoTの実践を目指すオンラインクリニック「ウチカラクリニック」を開設。著書『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』(ダイヤモンド社)、『怖いけど面白い予防医学』(世界文化社)など。

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