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カンタン健康生活習慣

二日酔いでもう苦しまない!

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監修/加藤眞三先生(慶應義塾大学 看護医療学部教授)

飲んで帰った時は楽しい気分で元気だったのに、翌朝起きたら、体はぐったり、頭はガンガン、胃はムカムカ……。二日酔いでつらい朝はどうしたらいいのか、そもそもどうすれば二日酔いになりにくくなるのか。二日酔いの原因や対処法、予防法について、慶應義塾大学看護医療学部教授の加藤眞三先生にお聞きしました。

二日酔いの症状と原因

たくさんのお酒を飲んだ後、翌日に残っているさまざまな症状を二日酔いと呼びます。疲労感、脱力感、のどの渇き、頭痛、吐き気、胃痛など、一つひとつはそれほど重いものではなく、大体24時間以内に修復されます。

つらい症状がなぜ出るのかは十分解明されておらず、何が二日酔いなのかという明確な定義もありません。分かっているのは、お酒の飲みすぎが二日酔いの原因であるという点です。

お酒を飲むと、アルコールは胃や小腸で吸収され、血液に溶け込んで肝臓に送られ、分解されます。分解の過程でまずアセトアルデヒドという有害物質に変わり、次に酢酸に分解され、最終的には炭酸ガスと水になって、体外に排出されます。

アルコールの分解

二日酔いの症状が出る原因は、たまったアセトアルデヒドのせいだといわれることがありますが、必ずしもそうではありません。アルコールやアセトアルデヒドの血中濃度が低くても、二日酔いの症状は出るのです。例えば、「お酒に強い」「お酒に弱い」という表現があります。いわゆるお酒に弱い人とは、アセトアルデヒドの分解能力が弱く、たまりやすい人を指します。お酒を飲むと血液中のアセトアルデヒドの濃度が高くなり、皮膚が赤くなったり、頭痛、動悸(どうき)、吐き気が出たりします。二日酔いの症状にも、頭痛や吐き気などがあるので、ここから翌日にたまったアセトアルデヒドが二日酔いの原因、という誤解が広まったのだと考えられます。

「飲む前・飲む時」「飲んだ後」のちょこっとケアで大きな差

二日酔いの症状を軽減するには、「飲む前」「飲む時」「飲んだ後」それぞれのタイミングでポイントがあります。予防策から見ていきましょう。

<飲む前><飲む時>
おなかに食べ物を入れておく
胃が空っぽのところにいきなりアルコールが入ると、胃がただれたり赤くなったりして、胃炎や胃痛の原因になります。

また、空腹時はアルコールの分解スピードが遅くなります。肝臓の細胞にはアルコールを分解するときに使われるNADという酵素がありますが、空腹時はこれが不足している状態です。食事をするとNADが増え、アルコールの分解もよくなります。

飲む前・飲む時に食べるものは何でも構いませんが、フライドチキンやポテトチップスのように油の多いものよりは、野菜や炭水化物をお勧めします。例えば前の晩にラーメンや肉料理を食べると、翌朝にも残っていることはありませんか。肉類やこってりしたものは胃にとどまる時間が長い食べ物です。胃にとどまっているということは、それに刺激されて胃酸がどんどん出る状況でもあります。胃酸がどんどん出る状況が続いてしまうと胃の粘膜が荒れて負担がかかってしまうのです。

<飲む時>
水分を十分に摂る
洋酒では「チェイサー」、日本酒や焼酎なら「やわらぎ水」といいますが、お酒を飲みながら水も併せて飲むことで、飲酒量を減らすことに役立ち、胃内のアルコール濃度を下げる働きも期待できます。

<飲む時>
飲みすぎない
二日酔い予防に限らず、健康のためにも適量が大切です。飲酒の影響は、”飲んだお酒の量”ではなく、摂取したアルコールの量を基準にします。厚生労働省が推進する「健康日本21(第2次)」*では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を、1日当たりのアルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上と定義しています。お酒好きの男性も1日のアルコール摂取量が40gを超えないように考えましょう。純アルコール量は、次の計算式で確かめられます。
*健康日本21(第2次)

度数(または%)÷100×0.8×酒の量(mlまたはcc)=純アルコール量(g)

純アルコール量20g程度の目安

<飲んだ後>
しっかり休む
横になってしっかり休みましょう。睡眠不足になると疲労感が増します。寝る時は、体の右側を下にして横になる姿勢がお勧めです。胃の出口が下を向くので、消化されたものが胃から出ていきやすくなります。

<飲んだ後><二日酔いの朝>
夜の入浴は厳禁。翌朝のシャワーはお好みで
お風呂ですっきりしたいと思う人もいるかもしれませんが、お酒を飲んで酔った夜は、寝る前の入浴は絶対に避けましょう。不整脈や血圧の変動を起こすことがあるほか、溺死や転倒事故の危険性もあります。飲んだ翌朝のシャワーは問題ありません。

水分を摂る
のどの渇きがあれば水分を摂ります。白湯(さゆ)や常温の水など、冷たすぎず、熱すぎない飲み物で。炭酸水は胃酸を増やす場合もあるので避けたほうがよいと思いますが、炭酸水を飲むことですっきりするのであれば飲んでもよいでしょう。もちろん、翌朝の迎え酒はNGです。食べられるようならおかゆやうどんなど、消化の良いものを食べるのは問題ありませんが、無理に食べると吐いてしまうこともありますから、食べたくない場合は水分補給だけで十分です。

鎮痛剤の服用
二日酔いになると胃がムカムカして気持ちが悪くなるという人は、胃酸を抑えるH2ブロッカーという薬を飲んでから休むと胃炎を起こしにくくなる可能性があります。頭痛などで市販の鎮痛剤を服用することもあると思いますが、その際、同時に胃痛がある場合はNSAIDSと呼ばれる非ステロイド性消炎鎮痛剤は避けましょう。胃痛や胃炎を悪化させる可能性があります。いずれにしても、薬は必ず用量・用法を守って服用してください。

二日酔いにならないために大切なこと

二日酔い予防に一番大切なのは、やはり飲みすぎないことです。お酒に強い人は、自分はたくさん飲めるのだから、自分の「適量」は多いはず、と思い込んでしまう場合があります。体調によって体への影響は変わりますが、前述したように、純アルコールの摂取量は1日当たり20g以下が節度ある適量といわれています。お酒と上手に付き合うためにも、お酒に強い人ほどこのことを知っておいていただければと思います。

ちょっとしたコツで二日酔いは防げるのね。
今年の飲み会シーズンは、さわやかに乗り切れそう♪

監修者プロフィール
加藤眞三先生(慶應義塾大学 看護医療学部教授)

【加藤眞三(かとう しんぞう)先生プロフィール】】

医学博士。1980年慶應義塾大学医学部卒業。米国マウントサイナイ医学部研究員、 東京都立広尾病院内科医長、慶應義塾大学医学部内科専任講師(消化器内科)などを経て、 2005年より現職。『肝臓専門医が教える病気になる飲み方、ならない飲み方』(ビジネス社)、『肝臓病教室のすすめ』(メディカルレビュー社)、『患者の生き方』『患者の力』(ともに春秋社)など著書多数。

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