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脱水症・熱中症・熱射病を予防するには

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これからの季節、ニュースなどでも耳にすることが多くなる脱水症・熱中症・熱射病。2023年の場合、5月~9月の期間に熱中症で救急搬送された方は、91,467人※1。高温の日数が多い年や、異常に高い気温の日がある年は発生が増加する傾向があり、特に2010年以降大きく増加しています。脱水症・熱中症・熱射病は日々の予防から。正しい予防法についてノザキクリニックの野崎 豊先生にお話を伺いました。

※1 総務省:令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況PDFで開きますを2025年9月12日に参照

原因と症状

水分と塩分の不足が原因

夏は、気温とともに体温も上昇するので、体は発汗によって体温を下げようとします。その汗には、水分だけでなく塩分も含まれており、この両方が失われることで脱水症に。脱水症を放っておくと、熱中症、熱射病へと症状が移行していきます。

●脱水症
水と電解質(塩分が水に溶けると電解質になります)で構成される体液が汗で失われ、その補給ができていない場合に生じます。脱水症になると、血液の量が減り、血圧が低下。必要な栄養素が体に行き渡らなくなり、不要な老廃物を排泄する力も低下します。また、食欲不振などの原因にもなります。さらに、骨や筋肉から電解質が失われることで、脚がつったり、しびれが起こることもあります。脱水症が、熱中症のさまざまな症状を誘発します。

●熱中症
熱中症とは気温の高い環境で生じる健康障害の総称です。体内の水分や塩分などのバランスが崩れ、体温の調節機能が働かなくなり、体温上昇、めまい、倦怠感、けいれんや意識障害などの症状が起こります。

熱中症の分類と治療法

重症度Ⅰ度 めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)、意識障害を認めない

<治療法>通常は現場で対応可能→Passive cooling、不十分ならActive Cooling、経口的に水分と電解質の補給

重症度Ⅱ度 頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下(JCS≦1)

<治療法>
医療機関での診察が必要→Passive cooling、不十分ならActive Cooling、十分な水分と電解質の補給(経口摂取が困難な時は点滴にて)

重症度Ⅲ度 下記の3つのうちいずれかを含む

・中枢神経症状(意識障害JCS≧2、小脳症状、けいれん発作)
・肝、腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害)
・血液凝固異常(急性期DIC診断基準[日本救急医学会]にてDICと診断)
<治療法>入院治療の上、Active Coolingを含めた集学的治療を考慮する

重症度Ⅳ度 深部体温40.0℃以上かつGCS≦8

<治療法>Active Coolingを含めた早急な集学的治療

用語・略語
Active Cooling:何らかの方法で、熱中症患者の身体を冷却すること。「体温管理」「体内冷却」「体外冷却」「血管内冷却」「従来の冷却法(氷囊、蒸散冷却、水冷式ブランケット)」「ゲルパッド法( Arctic Sun® ,Medivance)」「ラップ法(水冷式 冷却マットで体幹および四肢を被覆する;Gaymer Medi-Therm® , Gaymar)」などを含む。Passive Coolingは含まない。

Passive Cooling:冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することや、クーラーや日陰の涼しい部屋で休憩すること

JCS:Japan coma scale 日本で使用されている意識障害レベルの評価指標
DIC:Disseminated intravascular coagulation
GCS:Glasgow coma scale 海外でも広く使用されている意識障害レベルの評価指標

日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2024PDFで開きますを2025年8月29日に参照

●熱射病
熱中症のひとつ。脱水症がすすみ、体温を調節する働きが追いつかなくなることで40℃を超える高体温になり、脳の体温調節中枢機能が麻痺して起こります。意識障害やショック状態になることも。熱射病がもっとも危険で、死亡することもまれではありません。

熱中症は炎天下だけではない

熱中症は炎天下特有のものではなく、湿気の多い時期や曇りの日、日中だけでなく夜間、屋内でも起こる可能性があります。温度が高い、ムシムシする、日差しがきつい、風がない、急に暑くなったなど、体内の熱を体外にうまく放出できず体を冷やせない状況にあるときは、どんな時、どんな場所でも注意が必要です。

カリウムが不足すると細胞内が脱水症状に

汗をかくことでカリウムも失われています。カリウムは細胞内液に多く含まれており、失われると細胞内が脱水症状に。細胞内脱水は熱中症になってしまった際の回復に影響を与えます。ナトリウムを排出する働きのあるカリウムですが、汗をかいた時は実は意識して摂りたい栄養素のひとつなのです。海草類や果物、豆類などに多く含まれています。

治療法とセルフケア

涼しい環境と冷却がポイント

室内では無理はせず、扇風機やクーラーを活用し、適度な気温、湿度を保ちましょう。もし外出先などで体調に異常を感じたら、風通しのよい日陰や、クーラーが効いている室内へ。きついベルトやネクタイはゆるめ風通しを良くし、体からの熱の放散を助けます。皮膚に水をかけ、うちわや扇風機などであおぎ、体を冷やすのも方法の一つです。いかに早く体温を下げることができるかが悪化させないポイントです。

水だけでなく塩分も補給

一度に大量の水を摂取すると、かえって体内の電解質のバランスが崩れ体調不良を引き起こすことも。水分補給をする時には、あわせて塩分の補給も行いましょう。水分と塩分を同時に補給できるスポーツドリンクや経口補水液、また水や麦茶には、塩や梅干しなどを足して塩分も補給しましょう。緑茶やウーロン茶に含まれるカフェインは利尿作用があるため要注意です。

日頃からこまめな水分補給を

のどが渇いていないから、汗をかいていないから大丈夫と思いがちですが、すでに体液が減少している場合も。いつもより尿の色が濃く、量が少ない場合はすでに体内の水分不足が起こっています。のどが渇く前からのこまめな水分、塩分補給が脱水症、熱中症予防には大切です。熱中症の発生は、当日の水分、塩分不足だけではなく、数日前からの不足が原因で発生します。常日頃から水分と塩分の補給を心がけましょう。

健康状況を毎日チェック

睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取等は、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあります。毎日の健康管理も、熱中症予防には大切なことです。

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