目・耳・鼻
イヤホンの長時間使用に注意!身近な耳の病気「外耳炎(外耳道炎)」とは
監修/大河原大次先生(耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック院長)
概要・目次※クリックで移動できます。
進行すると難聴や耳の中のカビを招く!?
■耳の構造
耳の入り口である耳介から、耳の奥の鼓膜までを結ぶ通り道を「外耳道」といいます。
外耳炎(外耳道炎)とは、何らかの物理的な刺激によって外耳道の皮膚が傷つき、そこから細菌が感染して炎症を起こす病気です。
主な症状は次のとおりです。
【初期段階での代表的な症状】
- かゆみ
- 軽い痛み
【進行した場合に起こり得る症状】
- 強い痛み
- 外耳道が赤くただれる
- 外耳道の腫れ
- 聞こえの悪さ
- 細菌の繁殖による外耳道や鼓膜のカビ
上記からも分かるように、進行するほど症状は深刻化する傾向にあります。
そもそも耳にかゆみを感じるということは、すでに炎症が起きているサインのひとつです。
かゆみが続くようならできるだけ速やかに耳鼻科などを受診しましょう。原因や症状にもよりますが、点耳薬などによる適切な治療を受ければ1週間程度で改善するのが一般的です。
フィットしすぎるイヤホンに要注意
外耳炎(外耳道炎)の引き金になるのは、冒頭でも触れた「物理的な刺激」です。
特に仕事中や移動中などにイヤホンを使う機会の多い若い世代やビジネスパーソンなどは、イヤホンによる外耳道への刺激に注意しましょう。
音がよく聞こえるからという理由で、外耳道にぴったりフィットするイヤホンを選んだり、イヤホンを耳の奥のほうまでぐっと押し込んで使ったりしている人は少なくないでしょう。
しかし、窮屈さを感じるほどフィットしすぎていたり、強くぐいぐい押し込むことを繰り返したりしていると、外耳道にとっては刺激になります。また、硬い素材が使われているイヤホンも外耳道の皮膚を傷つける要因になる場合があります。
イヤホンの使用中や使用後に耳のかゆみ・痛みを感じるなら、そのイヤホンが自分の耳には合っていないというサインです。よりサイズが小さく耳への密着度が弱いもの、やわらかい素材のものに変更するのがおすすめです。やむを得ず長時間使用する場合は、スピーカーやヘッドホンタイプを使用するのもよいでしょう。
さらに長時間連続して使用するのは避ける、細菌による感染予防のため、耳に直接触れる部分は常に清潔に保つといった対策も心がけましょう。
なお、好きな音楽などをイヤホンで聴く場合はつい音量を上げたり、何時間も続けて聴いたりすることが増えてしまう傾向にあります。
すると外耳だけでなく、内耳にもダメージが及び、徐々に聞こえが悪くなっていくことも。耳に痛みを感じるほどの大きさの音では聴かない、連続して聴く時間は1時間程度を超えないようにする、ということを守ることが大切です。聞こえの悪さや、耳鳴りなどに気づいた場合も早めの受診が肝心です。
入浴後の綿棒での耳掃除はNG!
イヤホン以上に、外耳炎(外耳道炎)の原因として目立つのが「耳掃除」です。お風呂上がりに綿棒で耳の中を掃除することが習慣になっている人は少なくないかもしれませんが、これが外耳道にとっては非常によくありません。
まず、綿棒自体の問題があります。
- 一般的に、市販の綿棒の先端は耳の穴より少し小さいくらいの大きさのものが多く、耳掃除に使うには太すぎる
- 綿棒という言葉からやわらかい素材をイメージしがちだが、実際は綿が幾重にも巻かれていて硬い
太くて硬い綿棒を耳に入れることで、逆に耳あかを奥へ奥へと押し込んでしまうことになるのです。
次にお風呂上がりの耳の中の状態の問題です。
入浴後の外耳道の皮膚はふやけて、耳あかもやわらかくなっています。そこに綿棒を入れると、さらに耳あかを奥へと押し込むことになります。
また、ふやけた皮膚を綿棒でこすることで傷がつき、そこから細菌が感染して炎症を引き起こす場合もあります。
「入浴後にきちんと耳の中の水分を取らないと、中耳炎になるのでは?」と心配する人もいますが、中耳炎は細菌が鼻やのどから耳管という管を通って、鼓膜の内側にある内耳に感染し、炎症を起こす病気です。外耳道に残った水分が原因になるわけではありませんし、そもそも皮膚の水分は時間とともに自然に蒸発するものです。入浴後に綿棒で耳掃除をする必要はない、耳のためにはむしろしないほうがよい、ということをぜひ覚えておきましょう。
とはいえ耳あかがたまるのが気になる、という声もよく聞かれます。しかし外耳道の皮膚は手足などの皮膚と同じように、ターンオーバー(新陳代謝)によって古い角質(あか)ははがれ落ち、新しい皮膚が再生されています。しょっちゅう耳掃除をしなくても、耳あかは自然に外へと排出されているのです。
耳掃除は基本的に必要ないものですが、掃除をする場合は綿棒ではなく竹の耳かきを使用し、回数は月1回程度にとどめましょう。
なお、外耳道にかゆみがあると、つい耳かきでかきたくなるものですが、これもNGです。強く耳かきをすることによって外耳道が傷つき、さらに炎症が起こりやすくなるからです。
先に述べたとおり、かゆみがあるということは炎症が起きているサインのひとつ。まずは受診することが大切です。
耳かきを使わなくとも、ストレスなどから指で耳を触ったりするクセがある人も外耳炎(外耳道炎)になりやすい傾向があります。耳の触りすぎには常日頃から十分に気をつけましょう。
監修者プロフィール
大河原大次先生(耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック院長)
【大河原大次(おおかわら だいじ)先生プロフィール】
耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック院長
1985年帝京大学医学部卒業。日本医科大学耳鼻咽喉科入局・助手、伊勢崎市民病院耳鼻咽喉科医長として経験を積み、神尾記念病院副院長を経て2006年に日本橋大河原クリニックを開業。日本耳鼻咽喉科学会専門医。医学博士。
テレワークやリモート会議などの普及とともに、イヤホンを使用する機会が増えたという人は少なくないでしょう。それに伴い、増加傾向にあるといわれているのが外耳炎(外耳道炎)。誰にでも起こり得る身近な耳の病気ですが、進行するとどうなるのか、予防のためにはどんなことに気をつけたらよいのかなど、基本的な知識について耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック院長の大河原大次先生にお聞きしました。