頭痛・風邪・熱
鼻づまり解消!症状別の原因と対策
監修/市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)
風邪をひいた時、また、アレルギーの季節になると、鼻水・鼻づまりの症状がよくみられます。鼻をかんで解消する場合もありますが、鼻の通りが悪い状態が続いてしゃべりにくい、寝苦しいといった経験をした人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。なぜ鼻づまりが起こるのか、症状を和らげるセルフケアの方法、市販薬を選ぶ際の注意点、日ごろからできる鼻づまりの予防法について、「東京みみ・はな・のどサージクリニック」名誉院長の市村恵一先生に伺いました。
概要・目次※クリックで移動できます。
鼻づまりの原因を理解しよう
そもそも、鼻づまりはなぜ起こるのでしょうか。そのメカニズムと原因について解説します。
鼻づまりのメカニズム
鼻粘膜の内部には無数の血管が走っています。この血管は収縮・拡張を繰り返していますが、鼻づまりは、血管が拡張することで鼻腔が狭くなり、空気の通りが悪くなっている状態です。鼻には、数時間ごとに片側ずつ交互につまる現象がみられます。これは自律神経の働きによるもので、ネーザルサイクルと呼ばれています。鼻づまりのもう一つの原因は、炎症により細い血管から血液成分がしみ出し、粘膜の中がむくんだ状態(浮腫)になることです。
鼻粘膜に炎症が起こると、血管が拡張したり、むくみが生じることで粘膜が腫れ、鼻づまりになりますが、このサイクルがより強調され、鼻がつまっている感覚(鼻閉)を強く感じるようになります。
上気道感染症による鼻づまり
鼻づまりが起こる原因の一つに、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染があります。ウイルスに感染すると鼻粘膜が炎症を起こし、初期症状で鼻づまりや鼻水が増えます。これらは、1週間以内に治まることがほとんどです。
アレルギー性鼻炎による鼻づまり
アレルギー性鼻炎によっても鼻づまりが起こります。これは、花粉やハウスダストなどのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)に対する防御反応で起こるもので、季節性のアレルギー性鼻炎は、花粉が飛散する時期に症状が現れます。
ハウスダストやペットの毛が原因の通年性のアレルギー性鼻炎は、年間を通して鼻づまりの症状に悩まされるケースが多いです。いずれの場合も、アレルゲンを避けることが大切で、マスクの着用や部屋の換気、こまめな掃除といった日常生活の工夫が、症状の緩和につながります。
副鼻腔炎や鼻の構造的問題による鼻づまり
鼻と狭い通路を通じてつながる副鼻腔は、額や頬などの内側に存在しています。感染症やアレルギーによる炎症が起こると、進行して副鼻腔炎を発症することがあります。副鼻腔に粘り気のある鼻水が溜まり、それが鼻に排出され、鼻づまりに加えて頬の痛みや頭痛を伴うのが特徴です。副鼻腔炎による鼻づまりは、粘膜の腫れよりも鼻水が原因で起こることが多いですが、鼻茸(はなたけ)と呼ばれるポリープ状のできものによる閉塞が原因となることもあります。
鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)のように、構造的な鼻腔の狭さも鼻づまりの原因となります。鼻中隔弯曲症は、鼻の左右を分けている壁(鼻中隔)が曲がり、片側の鼻の断面積が狭くなる状態です。鼻づまりを訴える患者さんのほとんどは、アレルギー性鼻炎を合併しています。出産時の圧迫が原因で乳児期からみられることもありますが、多くは10代の成長期に発達の過程で鼻中隔に弯曲が生じるケースです。こうした構造的な問題による鼻づまりは自然に治らないので、手術治療が必要になります。
鼻づまりを解消するセルフケア方法
鼻づまりは呼吸や会話にも支障をきたし、QOL(生活の質)の低下につながりますので、症状を少しでも緩和させるセルフケアの方法を知っておきたいものです。
鼻づまりの緩和には「保湿」と「血行促進」
鼻づまりを緩和させる手軽な方法として、ワセリン塗布や蒸しタオルをおすすめします。ワセリンには保湿効果があるため、鼻の入り口に塗ることで鼻粘膜が保護され、鼻閉感を和らげるといわれています。
温かい蒸しタオルを鼻に当てると鼻粘膜の血行が促進され、鼻づまりを緩和させるのに効果的です。特に、加齢に伴う鼻粘膜の機能低下がみられる人にはおすすめです。
生理食塩水や市販薬を使用した「鼻うがい」は、粘り気のある鼻水が溜まる副鼻腔炎には効果が期待できますが、アレルギー性鼻炎の場合は薬が鼻粘膜への刺激を助長することもあるので、注意しましょう。
加湿器の使用と適切な室内環境の維持
鼻粘膜の保護には、加湿器の使用も効果的です。乾燥した空気は鼻粘膜を刺激し、腫れを引き起こすことがありますので、室内を適度な湿度(40〜60%)に維持することで、鼻粘膜の乾燥を防ぎ、鼻づまりの緩和も期待できます。
こまめな換気は、室内の温度を一定に保つと共にアレルゲンの排除にも効果的です。ただし、花粉飛散期には逆効果になります。適切な室内環境をつくり維持することで、症状の緩和にもつながるでしょう。
ツボ押しやストレッチ、メントールによる鼻づまりの改善
ツボ押しやストレッチで鼻づまりの症状が和らぐこともあります。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎による鼻づまりや頭痛がある時は、小鼻の横のくぼみにある「迎香(げいこう)」を押すとよいでしょう。
首や肩のストレッチで筋肉の緊張をほぐすのも効果的です。血流を促すことで鼻粘膜の腫れが和らぎ、鼻づまりの緩和も期待できます。こうしたツボ押しやストレッチの効果には個人差があるため、無理せず自分に合う方法で行うことが大切です。
このほか、ハッカやペパーミントに含まれるメントールのひんやりとした香りは、鼻の中の空気の通りそのものを良くするわけではないものの、鼻が通る感覚を高めるのに効果的です。不快な鼻閉感を緩和するのに役立つでしょう。
鼻づまりに効果的な薬と受診のタイミング
鼻づまりを改善するための治療薬にはどのような種類があるのでしょうか。受診が必要なケースとあわせて解説します。
鼻づまりの治療薬
風邪などの感染症による鼻づまりには抗ヒスタミン薬や抗炎症薬が、アレルギー性鼻炎にはステロイド点鼻薬や抗ヒスタミン薬、または血管収縮薬が、副鼻腔炎による鼻づまりには抗菌薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などが処方されることがあります。
また、点鼻薬の使い方には注意が必要です。市販薬の多くは血管収縮薬の入ったもので、速やかな効果が得られますが、頻繁に使い続けると自律神経機能の働きが悪くなり、かえって鼻づまりを悪化させてしまう(薬物性鼻炎) 可能性があります。連続しての使用は避けましょう。
市販薬を選ぶ際には、自己判断せずに薬局薬剤師やかかりつけ医に相談してみるのもよいでしょう。そして使用する際は、用法・用量、使用期間を必ず守りましょう。
鼻づまりの症状が長引く場合の受診目安
ウイルス感染は、数日でピークを迎え、おおむね1週間で改善しますが、鼻づまりが10日以上続く場合は医療機関の受診を検討しましょう。特に、発熱や強い頭痛を伴う、膿のような鼻水が出る場合は細菌の二次感染(急性副鼻腔炎)が疑われます。鼻づまり以外の気になる諸症状がある場合は、自己判断せず、すみやかに受診することをおすすめします。
鼻づまりが原因で呼吸が苦しい、いびきをかくといった場合や、症状が1カ月以上改善しない場合は、慢性的な鼻の病気が隠れている可能性があります。適切な治療を受けることで、不快な鼻づまりの症状から解放され、快適な呼吸を取り戻すことが期待できます。
鼻づまりを予防するための生活習慣
鼻づまりは、感染症やアレルギーによって引き起こされる諸症状の一つです。日ごろから感染予防やアレルゲン対策を心がけ、発症しないようにすることが大切です。
手洗い習慣とマスク着用で感染予防
手洗いとマスク着用は、あらゆる感染症予防の基本です。外から帰ったら、石鹸やハンドソープを使い、指先と指の間を丁寧に洗うことを習慣にしましょう。鼻粘膜をウイルス感染や乾燥から守るために、マスクをするのも有用です。
こまめな手洗いとマスク着用は、ウイルスや細菌の侵入を防ぐことができ、鼻づまりの原因となる感染症の予防にもつながります。
アレルゲン対策と掃除で鼻づまりを予防
ハウスダストやペットの毛、花粉は、室内に溜まりやすいアレルゲンです。部屋の掃除が不十分だと、これらのアレルゲンに触れ続けている状態となり、鼻症状を引き起こす可能性が高まります。
こまめな換気と掃除を心がけ、ほこりやダニがつきやすい寝具やカーテン、ぬいぐるみなども定期的に洗濯し、アレルゲンを減らしましょう。これらの対策を習慣的に行うことで、鼻づまりの予防につながります。
花粉症の時期には外出を控え、外出した時は帰宅時に衣服をはたいて花粉を落とす、日中は窓や換気口を開けないようにしましょう。
鼻づまりを引き起こす生活習慣の改善
喫煙は鼻粘膜の炎症を引き起こす原因の一つです。タバコに含まれるニコチンやタールといったさまざまな有害物質が、上咽頭や副鼻腔の炎症および機能低下を引き起こす可能性があるとされています。喫煙習慣があり、鼻閉感を自覚している人は、喫煙量を減らす、もしくは禁煙することが望ましいです。
夜更かしや不規則な睡眠は自律神経のバランスを乱し、鼻の機能低下にもつながりやすくなります。規則正しい生活リズムを保って十分な睡眠を心がけましょう。適度な運動も血行促進に効果的です。正しい生活習慣が自律神経を整え、全身の健康状態、鼻の機能を正常に保つことにつながるのです。
監修者プロフィール
市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)
【市村恵一(いちむら けいいち)先生プロフィール】
東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授
1973年、東京大学医学部医学科卒業。同大学医学部附属病院耳鼻咽喉科、浜松医科大学耳鼻咽喉科を経て、1982年より米アトランタ市エモリー大学留学。帰国後、東京都立府中病院耳鼻咽喉科医長、東京大学医学部耳鼻咽喉科講師その後助教授、自治医科大学耳鼻咽喉科学教授、副学長、石橋総合病院院長などを経て、2019年より現職。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医、補聴器適合判定医(厚生労働省)。小児耳鼻咽喉科学会初代理事長。オスラー病鼻出血治療の第一人者。現在は主に補聴診療を担当。