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頭痛・風邪・熱

頭痛タイプ別!自身で実践できるツボ押しテクニック

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監修/吉川 信先生(学校法人花田学園 日本鍼灸理療専門学校 附属鍼灸院 院長)

私たちの日常生活には、頭痛の“トリガー”となる無数の内的・外的要因があります。日本人の約4人に1人が何らかの頭痛を有すると報告されており、痛みとの付き合い方に悩む人が少なくありません。臨床では、日本頭痛学会が作成した『頭痛の診療ガイドライン2021』※1が活用されており、その中で薬物療法以外のアプローチ法として、鍼灸治療が「弱い推奨」に位置付けられています。痛みを和らげたいときに自身で実践できるツボ押しの方法について、学校法人花田学園 日本鍼灸理療専門学校 附属鍼灸院 院長の吉川信先生に伺いました。

※1:日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修・「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会編集 『頭痛の診療ガイドライン 2021』医学書院(2021)

頭痛のタイプと原因を理解しよう

頭痛とは、頭部の一部あるいは全体の痛みの総称で、後頭部と首(後頸部)の境界、目の奥の痛みも頭痛として扱います。頭痛の分類と診断は「国際頭痛分類第3版」※2に準拠して分類されます。ここでは日本人の有病率が特に高い片頭痛と緊張型頭痛を中心に説明します。

※2:日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会(訳)『国際頭痛分類第3版』医学書院(2018)

片頭痛の特徴と誘発因子

片頭痛は、頭の片側または両側のこめかみの辺りにズキンズキンと拍動性の痛みが繰り返し起こるのが特徴です。また、吐き気を伴う、光や音などの刺激に対し知覚過敏になることもあります。さらに、キラキラもしくはギザギザと瞬くような光の模様が視界に広がる「閃輝暗点(せんきあんてん)」が前兆として起こることもあります。

片頭痛の病態やメカニズムは十分には分かっていませんが、脳血管の異常な拡張や脳の過敏状態などが関与していると考えられています。痛みの誘発因子はさまざまで、アルコールやチョコレートの摂取のほか、ストレスや睡眠不足、疲労、女性の場合は月経も挙げられます。天候の変化や強い光の刺激、運動によっても引き起こされることがあります。

緊張型頭痛の特徴と誘発因子

緊張型頭痛は頭部をジワリと締めつけられるような鈍い痛みが続くのが特徴で、反復性(月に15日未満)と慢性(3カ月を超えて、平均して1カ月に15日以上)に分類されます。痛みは頭の両側で感じられ、圧迫感や締め付けられるような感覚を訴える人も多いです。ストレスや姿勢の悪さ、長時間同じ姿勢が続く状態から起こる筋肉の緊張が主な原因とみられています。痛みの誘発因子については確立されたものはなく、肥満や運動不足、喫煙がそれぞれ独立した危険因子とする研究報告もあります。

その他の頭痛タイプと原因

群発頭痛や薬物乱用頭痛などがあります。群発頭痛は三叉神経・自律神経性頭痛の代表格で、目の周囲や前頭部、側頭部にかけて激しい頭痛が数週間から数カ月間続くこともあります。睡眠中に頭痛発作が起こりやすく、発作時に興奮状態になる人が多いといった特徴があるなど、痛みで動けなくなる片頭痛とは対照的です。

鎮痛薬を長期的に使用すると、逆に頭痛の頻度が高まることがあります。これは薬の過剰使用が原因で起こる薬物乱用頭痛です。自己判断で急激に薬を減らすと悪化する悪循環に陥ることもあるので、専門医を受診して適切な治療を受けましょう。

このほか脳腫瘍や髄膜炎、くも膜下出血や脳卒中など、脳もしくは脳血管の病気の症状として生じる頭痛もあり、いずれも緊急の受診が必要な痛みのサインです。今まで経験したことのない激しい頭痛や、時間とともに痛みが増していくような頭痛は、重大な疾患が隠れている可能性もあるので、早めの受診と適切な治療が非常に大事です。

頭痛タイプ別の効果的なツボ押し

ここまでさまざまなタイプの頭痛について説明しました。本記事のテーマである、痛みを和らげたいときに自身で実践できるツボ押しの効果が期待できるのは、片頭痛や緊張型頭痛などのはっきりした原因や疾患のない一次性頭痛です。筋肉の張りの緩和と、押した部位の循環改善、そして痛みを感じにくくなること(疼痛閾値[とうつうしきいち]の上昇)が期待できます。

片頭痛に効果的なツボ押し

片頭痛に関係しているとみられる三叉神経の支配領域へ刺激を与え、片頭痛発作を抑制するのに効果的なツボとして、百会(ひゃくえ)、攅竹(さんちく)、囟会(しんえ)、目窓(もくそう)、下関(げかん)があります。頭蓋内の血流を良くするツボとして風池(ふうち)がありますが、逆に片頭痛を誘発することもあり、注意が必要です。

緊張型頭痛に効果的なツボ押し

生活習慣やストレスにより、肩や頭の血流が悪くなるのが主な原因と考えられている緊張型頭痛には、風池(ふうち)と天柱(てんちゅう)が有効です。これらのツボを押すことで、頸や肩背部の筋肉のこりを緩め、血行改善を促します。緊張型頭痛が起きた際、これら2つのツボを押すと心地よい痛み(または痛気持ちよさ)を感じることが多く、その反応を目安にして自身のツボの正しい位置を探ってみましょう。

緊張型頭痛の予防には、肩こりの解消も大事です。デスクワークで長時間同じ姿勢を続けて疲れを感じた時など、日頃からこまめに肩をさすって血行を良くしておくことも頭痛の予防につながります。

その他の頭痛タイプに対するツボ押しアプローチ

頭痛の原因はさまざまなので、まずは自分の頭痛タイプを把握することが大切です。精神的ストレスに伴う頭痛の場合は上天柱(じょうてんちゅう)や太衝(たいしょう)、目のトラブルでは攅竹(さんちく)、鼻では上星(じょうせい)や迎香(げいこう)、顎関節では下関(げかん)や承霊(しょうれい)などのツボが有効になります。月経周期に伴う頭痛にはすねの骨の前面にある蠡溝(れいこう)というツボを押すと痛みが和らぐでしょう。

●目、鼻、顎関節が原因の頭痛、片頭痛に効果的なツボ

目、鼻、顎関節が原因の頭痛、片頭痛に効果的なツボ

●緊張型頭痛に効果的なツボ

緊張型頭痛に効果的なツボ

●鼻、顎関節が原因の頭痛、片頭痛に効果的なツボ

鼻、顎関節が原因の頭痛、片頭痛に効果的なツボ

●精神的ストレスに伴う頭痛、緊張型頭痛に効果的なツボ

精神的ストレスに伴う頭痛、緊張型頭痛に効果的なツボ

●月経周期に伴う頭痛に効果的なツボ

月経周期に伴う頭痛に効果的なツボ

●精神的ストレスに伴う頭痛に効果的なツボ

精神的ストレスに伴う頭痛に効果的なツボ

(吉川先生への取材を基に作成)

ツボ押しの際の注意点と補助テクニック

ツボ押しは、慣れないうちは正しいツボの位置や力加減が分からず、難しさを感じるかもしれません。しかし何度か試しているうちに、自分なりのコツがつかめてくるものです。

ツボ押しの強さ、時間、頻度の目安

ツボ押しを始める前に、深呼吸をしたりツボ周辺を軽くさすったりして準備します。押す前にも軽く力を入れてツボ周辺をさすり、どれくらいの力加減で押すか見当をつけます。親指か中指(または人差し指)を使い、息を吐きながら3~5秒かけてゆっくり押しましょう。「痛気持ちいい」ところで手を止め、さらに息を吐き続けます。次に大きく息を吸いながら3~5秒かけてゆっくり力を抜いて離していきます。この一連の動きを3~5回を目安に繰り返します。入浴して体がほどよく温まり、リラックスした後にツボ押しを行うと、なお効果的です。逆に、食後すぐやアルコールを摂取したときには行わないようにしましょう。

頭痛の緩和に関連する頭頸部のツボは、自分では見えにくく押しづらい場所にある場合もあります。そうした場合には、市販のツボ刺激グッズを利用するのも有用です。

押す強さは「痛気持ちいい」感覚を目安とし、症状の変化に意識を向けながら調節しましょう。頭痛の痛みが強い場合は、まずは診断を受け、医師に相談してから行ってください。

ツボ押し以外の頭痛対策と医療機関受診の目安

頭痛のタイプが多岐にわたるのと同じように、その対策もさまざまです。セルフケアや生活習慣の改善と同時に、受診が必要なケースを自己判断で見過ごさないようにしましょう。

ストレス管理と生活習慣改善による頭痛予防

頭痛の予防には、日頃からのストレス管理と生活習慣の改善が不可欠です。頭痛のトリガーになるカフェインやアルコールは控え、十分な睡眠とバランスの取れた食事を摂る、規則正しい生活リズムを保つといった地道な積み重ねが頭痛予防につながります。リラックスできる趣味を持つ、ヨガや瞑想を取り入れるのも効果的です。

頭痛症状が改善しない場合の対処法

頭痛の改善において、鍼灸治療の効果が今後の臨床で期待されています。鍼治療は専門的な知識と技術が必要ですが、灸はやけどの危険性が少ない市販品も多く出ています。例えば足のかかとの中央にある失眠(しつみん)は、睡眠の改善に用いられるツボですが、片頭痛の時に灸を行うと効果がみられることがあります。

さまざまな対策をしてもなお症状が続く場合は、医療機関を受診しましょう。頭痛は重大な病気の兆候の場合もあるため、脳神経外科や頭痛外来で専門医のアドバイスを仰ぐことが重要です。

医療機関への受診が必要なケースと頭痛の危険信号

長引く頭痛や、激しい痛みを伴う場合は医療機関を受診しましょう。普段感じたことのない突然の激しい頭痛、発熱や吐き気を伴う頭痛、皮膚のしびれやめまいといった神経症状を伴う頭痛は、脳出血や髄膜炎などの重大な病気の兆候という可能性もあります。また、頭痛の頻度が増えたり、痛みの性質が変化したりした場合も注意が必要です。

ツボ押しによって痛みが改善する頭痛もありますが、自己判断でセルフケアにこだわったり、痛みを我慢したりせず、気になる症状があればためらわずに医師に相談してみてください。

監修者プロフィール
吉川 信先生(学校法人花田学園 日本鍼灸理療専門学校 附属鍼灸院 院長)

【吉川信(きっかわ まこと)先生プロフィール】

学校法人花田学園 日本鍼灸理療専門学校 附属鍼灸院 院長
一般財団法人 東洋医学研究所 主任研究員
1984年、はり師、きゅう師の国家資格を取得。公益財団法人日産厚生会玉川病院東洋医学内科、東京女子医科大学附属東洋医学研究所(開設準備室、同大学大学院看護研究科兼務)、早稲田大学人間科学部非常勤講師、秋田大学医学部非常勤講師などを経て、2014年4月より、学校法人花田学園 日本鍼灸理療専門学校にて勤務。2015年4月より現職。『気と血の流れが1日ごとに良くなるツボ押し健康手帳』(青春出版社)など著書多数。

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