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睡眠・休息・メンタルケア

アナタの怒りの傾向と対策は?

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監修/安藤俊介氏(一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事)

うまくいかないことが続くとイライラして、人に八つ当たり。そうするとまた、イライラすることが起きて……。怒らなければもっとラクになれるのに。でもそんな方法、あるのかな?

「以前も軽くイラッとすることはあったけれど、こんなに自分は怒りっぽかったかな」。そんな声をよく聞くようになりました。コロナ禍で生活が一変し、体調やメンタルに影響が出ていることがその原因の一つともいわれます。なぜ怒ってしまうのか、怒りに振り回されずに済む方法はあるのか、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介氏にお聞きしました。

怒るのは悪いこと?

怒りは、身を守るために備わっている感情です。自分の生命や家族が危険にさらされたり、大切にしている価値観や立場が傷つけられたり、自分の思い通りにならなかったりしたときに、怒りという感情を使って、危険から大切なものを守ろうとするのです。誰にでもある自然な感情ですから、怒ること自体は悪いことではありません。

病気に例えるなら、怒りは免疫のようなもの。免疫があるから戦うわけで、それはいいのですが、病気の原因と戦っているつもりが、どんどんいい細胞まで壊してしまうようになると問題です。昨今感じるのは、本来の自然な方向に向くだけでなく、攻撃が無関係な範囲にまで広がっている状況だという点。いわば、免疫過剰の状態です。

怒りが生まれる仕組み

怒りがどのように生まれるかは、ライターの仕組みをイメージすると分かりやすいと思います。ライターは、発火石をカチッと回すと火花が飛び、ガスによって炎がつきます。炎を怒りだとすると、発火石はその火種。怒りの火種は、自分の「べき」が裏切られたときにバチッとつきます。

「べき」は、自分の価値観のことです。マナーを守るべき、自粛するべき、マスクをするべき……そういったものが侵害されていると感じたときに火花が散ります。もっとも、火花が散っただけでは炎になりません。燃料となるガスが必要です。そのガスに当たるのが、不安や孤独感、罪悪感といったネガティブな感情や、疲労感やストレス過多、睡眠不足などのマイナスな状態です。

以前なら軽くイラッとするぐらいだったのが、最近の自分は非常にイライラしている、どうしてこんなに怒りっぽくなったのだろう、などと戸惑っている人もいるでしょう。新型コロナウイルス感染症対策の中で、メンタル不全に陥る人が増えているといいます。怒りの火種となる「べき」は、以前も今もそうそう変わりませんが、火種を燃やすガスが多く、燃え上がりやすくなっているからではないでしょうか。

怒りに振り回されないためには

怒りをコントロールする方法は、3つあります。マイナスの状態を緩和するか、ネガティブな感情を小さくするか、自分の「べき」を整理することです。

■怒りに振り回されないようにするための3つの方法

  1. 1  マイナスな状態(疲労感、ストレス過多、睡眠不足、空腹、体調不良等)を緩和する
  2. 2  ネガティブな感情(不安、孤独感、罪悪感等)を小さくする
  3. 3  自分の「べき」(価値観)を整理する

平常時であれば、3の自分の「べき」の許容度を知り、許容度をちょっと広げることで怒りをコントロールしていく方法を考えていきます。しかし今は、1のマイナスの状態を減らすのが最優先。体の具合が悪いときはイライラしやすい、といった経験はないでしょうか。ゆっくり休んで、しっかり食べて、ぐっすり寝て、健康に気を付けることが、まず、すべきことなのです。

2のネガティブな感情。コロナ禍で孤独感や、将来に対する不安感といったネガティブな感情を強く抱いているかもしれません。孤独感をどうやって埋めればいいのかなどは、自分1人で取り組むのは難しいと思います。カウンセラーなど専門家の手を借りることも1つの方法です。

マイナスな状態やネガティブな感情に対処したうえで考えたいのは、3の「べき」対応です。「べき」が壊されたり、裏切られたりすると、自分の価値観を守るために怒りの感情が生まれます。そこで、自分の「べき」の許容度を知り、どう対応するかを考えておくのです。

例えば、「マスクをするべき」という考え方に対して自分はどこまで許容するのか、誰もいないところで道を歩いていてもしなければいけないのか、こういう条件ならする、こうならしなくてもいいなど、その許容度を決めていきます。そして怒るとしたらどうするのかを考え、行動するのです。

自分の怒りを建設的に使う

怒りを感じたとき、あなたはどうしますか。次の中で当てはまるものはあるか考えてみてください。

実は、これらは全て、怒りを長引かせる原因になる悪手です。

怒りを静めたいなら、散歩でも昼寝でも読書でも何でもよいので、自分がリラックスできる方法を見つけることです。気持ちが熱くなることはしないほうがいいでしょう。そうではなく、どうしても怒る必要があることならば、その怒りを、建設的に使えないでしょうか。

自分を奮い立たせるエネルギーにしたり、あるいは相手との関係性を考え直したり、よりよい方向を探したりするといったことです。何かを壊したり、消費したりではなく、生み出す方向にエネルギーを使いたいもの。自分の怒りを消費に回すのか、それとも投資に回すのかは自分次第です。

怒る必要があるのかないのかを見分ける方法としては、専門用語で「ビッグクエスチョン」と呼ばれる考え方があります。自分やまわりにとって、長い目で見てそれが良ければ怒ればいいし、そうでなければ関わるのをやめればいい。その場では怒ってしまったとしても、次に同じことがあったときに、もう1回怒ることが正解なのか、それとも手を離すのがいいと思うのかを考えてみるのです。

怒る必要があるとき、戦わなければいけないときは戦ったほうがいい。ですが、戦わなくていいことは戦わなくていい、逃げるが勝ちです。見極めは難しいかもしれません。しかし、自分がどうしたいのか、自分の限られた人生で関わりたいことと関わらなくていいことは何か、正解は本人しか分かりません。

怒りで失敗しないための3つのポイント

誰でも怒りで失敗することはあるでしょう。失敗をゼロにすることは難しいでしょうが、できるだけ失敗しないために、予防線を張ることはできます。それが、「6秒かけてゆっくり深呼吸する」「人に見られていることを意識する」「怒りから距離をとる」方法です。

■6秒かけてゆっくり深呼吸する

諸説ありますが、感情が生まれてから理性が介入するまで数秒かかると考えられ、6秒あると理性が介入するというのが現在主流の見方です。6秒で怒りが消えるわけではありませんが、6秒あれば、理性が介入して、冷静に考え始めることができるという考え方です。6秒間の過ごし方はいろいろあります。手軽なのは深呼吸です。まず息を吐き切り、その後大きく息を吸います。6秒かけてゆっくりと深呼吸をしましょう。

■人に見られていることを意識する

人はやはり、他人の目があると理性が介入しやすくなります。世の中には、社会的な箍(たが)が外れたことで、何をしても平気になってしまう人が、残念ながらいらっしゃいます。外に自分を律するものを持つことは、社会性を保つ助けになるでしょう。地域、家族、友人、会社といったコミュニティに属することや人との交流が、社会的な箍の役割を果たすのです。

■怒りから距離をとる

怒りは伝染します。会社でも、家族でも、誰か1人イライラしていると、あっという間に移っていきますから、そこにはいないほうがいい。怒っている人には近づかない、怒りを感じるものには近寄らず、見たり、聞いたり、触れたりしないことが一番です。

繰り返しになりますが、ウィズコロナ、アフターコロナといわれている昨今、何よりも健康第一です。平常時ではない状況が続いていますから、自分に甘く、人に甘く、ゆるゆるくらいがちょうどいいのではないでしょうか。

監修者プロフィール
安藤俊介氏(一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事)

【安藤俊介(あんどう しゅんすけ)氏プロフィール】

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、アンガーマネジメントコンサルタント
日本におけるアンガーマネジメントの第一人者。米国のナショナルアンガーマネジメント協会で15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルに、アジア人としてただ1人選ばれている。著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日文庫)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、『あなたの怒りは武器になる』(河出新書)など多数。

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