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頭痛・風邪・熱

頭痛の原因:あなたの頭痛タイプを見極める方法

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監修/市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)

頭痛の原因は、内的要因と外的要因によるものがあります。内的要因はストレスや疲れ、ホルモン異常、動脈硬化などで、外的要因はメガネや帽子による物理的な頭部の圧迫、冷たい物を食べた時の刺激やアルコール摂取後の二日酔い、気圧の変化などで、私たちの日常生活には頭痛の“トリガー”となる無数の要因があります。大事なのは、すみやかな受診が必要なケースを、自己判断で見過ごさないことです。
頭痛のメカニズムと種類の見分け方、セルフケアでできる頭痛への対処法について、「東京みみ・はな・のどサージクリニック」名誉院長の市村恵一先生に伺いました。

頭痛のメカニズムと主な種類

「頭痛」と一口にいっても、原因を正確に捉えるのは難しいものです。まずは頭痛が起こるメカニズムを正しく理解することが大切です。ここでは、頭痛が起こるメカニズムと、頭痛のタイプについて解説します。

頭痛が起こるメカニズム – 血管・神経・筋肉の関与

頭痛には、主に頭部の血管、神経(特に三叉神経)、そして頭蓋を覆う筋肉が深く関わっています。
頭部には大小無数の血管が走り、頭痛が起こるときは、何らかの原因で血管が拡張して周囲の神経を刺激すると考えられます。また、顔面や頭部の知覚に関連する三叉神経が過剰に反応すると、激しい頭痛が起きます。
物理的、精神的なストレスによって筋肉が緊張状態となった場合、その状況が一定時間持続すると筋肉組織周辺の血流が悪化したり、血管の収縮が繰り返されたりして頭痛が起こります。

一次性頭痛の種類 – 片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛

頭痛は二つのタイプに大別され、その一つが一次性頭痛です。このカテゴリに分類される主な頭痛として、片頭痛、緊張型頭痛、そして三叉神経・自律神経性頭痛が挙げられます。

片頭痛は、頭の片側または両側のこめかみの辺りにズキンズキンと拍動性の痛みが繰り返し起こるのが特徴です。その他に吐き気を伴ったり、光や音の刺激に対し知覚過敏になったりすることもあり、視界にキラキラもしくはギザギザと瞬くような光の模様が広がる「閃輝暗点(せんきあんてん)」という視覚性前兆の後に起こることもあります。

緊張型頭痛は、頭部をジワリと締めつけられるような鈍い痛みが続くのが特徴です。デスクワークで長時間同じ姿勢で過ごし、頭頸部から肩にかけての筋肉がガチガチに凝り固まることも多いのではないでしょうか。こうした筋肉の緊張状態が周辺組織の神経を刺激するとともに血流を低下させ、頭痛につながるとみられています。

三叉神経・自律神経性頭痛の代表となる群発頭痛は、片方の目の奥が激しく痛むのが特徴です。1回の頭痛発作の持続時間は15分~3時間ですが、数日から数週間にもわたって続くことがあります。先に述べた片頭痛や緊張型頭痛を持つ人が相当数いるのに比べ、群発頭痛を発症する人は非常に少ないとみられています。

二次性頭痛の原因 – 脳腫瘍、感染症、外傷など

もう一つのタイプが二次性頭痛です。併発する他の病気による頭痛を指し、例えば、発熱を含む全身症状、がんの既往、意識レベルの低下、突然の発症、50歳以降の発症、姿勢による変化のほか、くしゃみ、咳、運動による誘発、痛みや症状の進行、また外傷後の発症、鎮痛薬使用過多もしくは薬剤新規使用等がある時には疑われます。脳腫瘍や髄膜炎、くも膜下出血や脳卒中など、脳もしくは脳血管の病気の症状として生じる頭痛が最も問題になります。こうした重大な疾患以外では、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎で、炎症が三叉神経を刺激することで頭痛を引き起こすケースもあるほか、感染症による発熱を伴う頭痛や、頭部を強くぶつけた後の硬膜下血腫などの頭痛もあります。いずれにしても、今まで経験したことのない激しい頭痛や時間とともに痛みが増していくような頭痛は、重大な疾患が隠れている可能性もあるので、早めの受診と適切な治療が非常に大事です。

ライフスタイルと頭痛の関係

頭痛はライフスタイルと密接に関連します。ここでは、ストレスマネジメントや睡眠習慣に着目してみましょう。

ストレスマネジメントで頭痛を予防する方法

頭痛の大きな誘発因子であるストレスには、同じ姿勢や動作を長時間続けることにより体が緊張状態になる身体的ストレスと、仕事や人間関係、生活環境の変化などから生じるさまざまな精神的ストレスがあります。これらは、無意識のうちにも蓄積されます。頭痛というサインになって現れる前に、日頃からストレス解消法や自分なりのリフレッシュ方法を見つけ、ストレスをため込まないようセルフマネジメントすることが頭痛予防の第一歩となります。

睡眠習慣の改善が頭痛対策に効果的な理由

適切な時間で、質の良い睡眠を取ることは、頭痛予防に欠かせない大切な要素の一つです。寝不足も過剰な睡眠も共に頭痛の引き金になります。年齢やライフスタイルによっても異なりますが、理想的な睡眠時間の平均は7〜8時間が目安とされています。快適な睡眠環境を整えてリラックスしてぐっすり眠ることで、翌日には心身がすっきりリセットされて生活リズムの好循環が生まれ、頭痛のトリガーとなるストレスも軽減されます。

また、睡眠時無呼吸症候群を指摘されたら、生活の改善や適切な治療を早期に行うことをおすすめします。睡眠時無呼吸症候群は良質な睡眠を妨げる大きな要因で、頭痛の発生にも関連します。

頭痛の適切な対処法

医療機関を受診する際の診療科の選び方、市販薬の選び方、セルフケアの種類をご説明します。

頭痛の症状に合わせた受診科の選び方

頭痛の症状は、原因やタイプによってそれぞれ異なるため、適切な受診科を選ぶことが大切です。強い頭の痛みに加えて吐き気やめまい、足のもつれなどを伴う急性期の場合は脳神経外科をできるだけすみやかに受診しましょう。数日間続く慢性的な頭痛なら神経内科へ。このほか、頭痛に伴うさまざまな部位の症状(目の痛み、鼻づまり、顎の痛みなど)によって、眼科や耳鼻咽喉科、歯科の受診も検討しましょう。

いわゆる「頭痛持ち」を自覚されている方も多くいらっしゃると思います。慢性的な頭痛を改善するためには、かなり詳細な問診が必要になります。可能であれば、頭痛ダイアリーをつけて症状や生活習慣を記録してみましょう。基本的な生活パターンや外出時間など、一日の行動を振り返ると、自身の体に意識を向けられ、医師とのコミュニケーションの中で治療方針を決める際にも大いに役立ちます。

頭痛薬の種類と正しい使用方法

頭痛薬には鎮痛薬や血管収縮薬などがあります。特に市販薬を使う場合には、薬局の薬剤師に相談するなどして、症状に合わせた適切な薬を選ぶことが大切です。使い方にも注意が必要です。例えば市販の鎮痛薬を長期的に使用すると、逆に頭痛の頻度が高まることがありますが、これは薬剤の使用過多による頭痛と考えられています。頭痛薬に頼りすぎず、生活習慣の改善やストレス管理といった根本的な対策も併せて行うことが重要です。

セルフケアで頭痛を和らげる – ツボ押しとリラクゼーション

ツボ押しやリラクゼーションで頭痛の症状が和らぐ場合もあります。ヒトの頭頸部は、全身の中でも特に多くのツボが集中しています。

耳の後ろ側にある「風池(ふうち)」や、後頭部の突出した骨の真下にある「天柱(てんちゅう)」は、緊張型頭痛を和らげるのに効果的とされています。また、足の小指と薬指の骨が合流する部分の「足臨泣(あしりんきゅう)」は片頭痛の痛みを鎮静する効果があるといわれています。

副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎による頭の痛みや重さを自覚する場合は、小鼻のすぐ横のくぼみにある「迎香(げいこう)」を押すと良いでしょう。

深呼吸や瞑想などのリラクゼーション技法は、医療的対処法ではありませんが、ストレスの解消や緊張状態の緩和に有用な面もあると思われますので、セルフケアに取り入れてみてはいかがでしょう。

頭痛予防のための生活習慣改善

頭痛の予防には、生活習慣の見直しも有効です。規則正しい食事や睡眠、適度な運動は心身のストレスを軽減して頭痛を予防するだけでなく、身体全般を健やかな状態に維持するための基本です。

規則正しい生活リズムを作るコツ

健康な身体をつくるために、規則正しい生活を送り、生活リズムを一定に維持しましょう。生活リズムのベースをつくる食事や睡眠も、ライフステージによって、最適な量やかけるべき時間は異なります。大切なのは、一度決めたらできるだけ同じ時間に食事を摂り、寝起きするよう努めること。こうした習慣の積み重ねが安定した健康状態、ひいては頭痛予防につながっていくのです。

運動習慣が頭痛予防に効果的な理由

運動習慣は、さまざまな病気に対処する免疫力アップにつながり、筋力の維持など、身体基盤を整えるために有効です。適度な運動は緊張状態にある身体をほぐして、血行を良くし、頭痛発生のトリガーとなるストレスの解消や血管の収縮を防ぐことが期待できます。

首の運動も大切です。加齢や肥満によってのどの周りの筋肉が衰えると、上気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群につながることがあります。この疾患が引き起こす頭痛の予防のためにも、日ごろから首や顎をしっかり動かしましょう。

ストレス対処法 – 自分に合ったリラックス方法を見つける

ストレスの対処法は人それぞれ異なり、自分に合ったリラックス方法を見つけることが大切です。

頭痛に悩んでいる方は日々の習慣の中に頭痛のトリガーとなる要因を見過ごしていないか、下記のチェック項目で、生活習慣を振り返りましょう。そして、日常の忙しさから少し離れて、心身ともにリフレッシュする時間をぜひ作ってみてください。

生活習慣チェック項目

監修者プロフィール
市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)

【市村恵一(いちむら けいいち)先生プロフィール】

東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授
1973年、東京大学医学部医学科卒業。同大学医学部附属病院耳鼻咽喉科、浜松医科大学耳鼻咽喉科を経て、1982年より米アトランタ市エモリー大学留学。帰国後、東京都立府中病院耳鼻咽喉科医長、東京大学医学部耳鼻咽喉科講師その後助教授、自治医科大学耳鼻咽喉科学教授、石橋総合病院院長などを経て、2019年より現職。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医、補聴器適合判定医(厚生労働省)。小児耳鼻咽喉科学会初代理事長。オスラー病鼻出血治療の第一人者。現在は主に補聴診療を担当。

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