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自分のにおいを気にし過ぎ?においの原因と適切なセルフケア

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監修/高桑 康太先生(医療法人社団鉄結会 東京の粉瘤・ほくろ・できもの・赤ら顔・ワキガ治療 アイシークリニック治療責任者)

現代では、スメハラ(スメルハラスメント)といった表現にも象徴されるように、においへの関心が高まっています。近年は酷暑が続き、汗のにおいに敏感になる人も少なくありません。気になる体臭の原因、不快なにおいを防ぐためのセルフケアや受診を考えたい症状について、医療法人社団鉄結会 東京の粉瘤・ほくろ・できもの・赤ら顔・ワキガ治療 アイシークリニック治療責任者の高桑康太先生に伺いました。

体がにおう原因とは

5~6月頃から気温がぐっと上昇し、汗ばむような暑さを感じるようになります。健康状態が良好であれば、汗をかいてもほぼ無臭ですが、体から発生するにおいを強く感じることがあります。なぜなのでしょうか。

「生理的体臭」と「病的体臭」との違い

人の体から発散される独特のにおいのことを、一般的に体臭といいます。体臭は、主に皮膚表面の菌(常在菌)が汗や皮脂を分解する際に発生します。

人間の皮膚にはエクリン腺(せん)とアポクリン腺という2種類の汗腺(汗を分泌する器官)があります。エクリン腺は頭皮から足の裏まで全身にある汗腺です。そこから分泌される汗は主に水分で、それ自体がにおうことはほとんどありません。アポクリン腺はわきや耳の後ろ、陰部にある汗腺です。アポクリン腺から出る汗にはタンパク質や脂質が含まれ、特有のツンとするようなにおいを感じることがあります。

個人差はありますが、誰にでも生理的体臭はあります。思春期や加齢などで変化することがありますが、清潔な状態を習慣的に保ち、適切なケアをすることで、ある程度においをコントロールすることができます。

一方、人間の体臭には、口臭や内臓疾患によるにおいもあります。特定の疾患が原因で発生する病的な体臭は、通常のケアだけでは改善が難しいこともあります。特に、急激な体臭の変化を自身で感じたり、他の人から指摘されたりした場合には受診すべき病気が潜んでいるケースもあるので、「たかがにおい」と安易にやり過ごさないことが大切です。

体臭は病気のサインであることも……

気になる体臭として代表的なのが、わきのにおいです。わきに多いアポクリン腺から出る汗と、エクリン腺から出る汗のにおいが混じると不快さを感じることがあります。特に強いにおいや衣服の黄ばみがみられる疾患として腋臭症(わきが)があり、日本人の約10人に1人が腋臭症の体質を持つとみられています※1

また、糖尿病が進行して血糖値が高い状態が続くと体内でケトン体という物質が産生され、独特の甘酸っぱい口臭が発生することがあります。さらに症状が悪化すると、糖尿病性ケトアシドーシスという緊急性の高い糖尿病急性合併症となり、特有のにおいが顕著に感じられます。糖尿病が疑われる場合は、内科や糖尿病専門医を受診しましょう。

慢性腎臓病(CKD)など、腎機能障害によっても体臭の変化が起こることがあります。腎臓の機能が低下すると、アンモニア臭(尿のようなにおい)が体臭や口臭として感じられることがあります。その結果、体臭の変化として周りの人が気付くこともあります。また、慢性肝炎や肝硬変などにより肝機能が低下すると、体内の有害物質の処理が不十分な状態となり、独特なにおい(カビのようなにおい)が発生することがあります。

ニンニクなど、においの強い食品を多く食べた時に感じられる口臭はありますが、これは一時的なもので、消化して排泄されればにおいも消えるので心配いりません。ただ、消化器系の疾患(胃炎や胃潰瘍、腸内環境の悪化など)がある場合は、消化が不十分な食物が腸内で異常発酵して、においの原因物質が血液中に吸収され、汗や息となって排出されることがあります。

このほか、細菌や真菌が原因の皮膚感染症(水虫や陰部カンジダ症など)でも、患部から特有のにおいを発生することがあります。また、割合としては少ないものの、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)や遺伝性の代謝異常による魚臭症候群(トリメチルアミン尿症)でも体臭の異常を感じることがあります。

わきのにおいといった部位が明確な場合は、皮膚科や形成外科を受診するのがよいでしょう。一方で、体臭の変化の原因が分からない場合や急激な体臭の変化を自覚した場合、体臭以外に倦怠感、体重変化などがある場合は、内科や総合診療科を受診して相談してみましょう。体臭の原因となる、先に挙げたような疾患が隠れていないかを検査し、必要に応じて専門科への紹介も行います。

医療機関で適切な診断と治療を受けることで、においが改善されるケースは多いです。一人で抱え込まず、まずはかかりつけの内科などを受診することをおすすめします。

※1:日本形成外科学会,日本創傷外科学会,日本頭蓋顎顔面外科学会 編集「形成外科診療ガイドライン 1 2021年版 第2版 皮膚疾患/頭頸部・顔面疾患/体幹・四肢疾患」 2021, 金原出版, 341 に「腋臭症は臨床的に, 湿型耳垢を伴い家族性が多く, 優性遺伝することが報告されてきた。古い調査であるが, 1934年に東京帝国大が皮膚泌尿器科の長島が男女2,937人を対象に耳垢型と腋臭症の有無について調査しており, 湿型467名のうち腋臭を有する者は80%であった」との記載があります。湿型耳垢の80%は373.6人であり、調査対象者2,937人の12.7%となることから、約10人に1人程度が腋臭症の体質を有すると考えられています。

日常生活でできる適切なセルフケア方法

日常的なセルフケアの基本は、入浴による適切な清潔習慣です。特に汗を多くかく暑い時期は、きちんと汗や皮脂を洗い流し、清潔を保つようにしましょう。その際、せっけんやシャンプーで洗うのは、1日1回程度で十分です。1日に何度も洗ったり、ゴシゴシと強くこすり洗いをしたりすると、皮膚の表面が傷つき、必要な皮脂まで洗い流してしまいます。その結果、皮膚の潤いがなくなり本来持っているバリアー機能を低下させ、かえって体臭を悪化させることもあります。熱過ぎず、冷た過ぎない適温での入浴と、適度な洗浄を心がけましょう。手のひらや柔らかな布でせっけんをよく泡立て、やさしく体の表面を滑らせる程度でも洗浄効果はあります。

体臭が気になる人は、制汗剤やデオドラント製品を上手に取り入れるとよいでしょう。ただ、こうした製品に含まれているのは香料やアルコールもしくはエタノールで、皮膚への刺激となる成分も含まれています。汗拭きシートで皮膚を強くこすったり、直接塗るロールオンタイプの制汗剤を同じところに繰り返し塗ったりしないよう気をつけましょう。成分によっては、毛穴を塞ぐ作用があり、それによって炎症が起こっているケースもよくみられます。皮膚にかゆみや、かぶれたような湿疹が出た場合は、使うのをただちにやめて皮膚科や形成外科を受診してください。

十分な睡眠、バランスの取れた食事を大切にして、飲酒はほどほどにとどめましょう。ストレスや緊張状態にさらされると、よく「変な汗をかく」といいますが、医学的にみてもそれは本当で、わきや顔などに通常とは異なる発汗が起こり、それが体臭として感じられることもあります。自分なりのリラックス方法を見つけ、できるだけストレスを軽減しましょう。下着は吸湿性のよい綿などの天然繊維を選ぶ、汗をかいたらこまめに着替える、洗濯物はしっかり乾かして生乾き臭を防ぐといったことも大事です。

口臭ケアには、適切な歯磨きやマウスウオッシュが効果的です。タバコは、口臭や体臭に直結します。禁煙することで、体臭の改善だけでなく全身の健康そのものにもよい影響をもたらします。また、適度な水分補給も口臭や体臭を軽減するのに効果的です。目安として、1日に1.5〜2リットル程度の水分を摂取することをおすすめします。

自分でにおいを客観的にとらえる方法は?

においが気になる人は、1日着て過ごしたシャツや下着のわき・首回り・背中に黄ばみができていないかチェックしてみましょう。アポクリン腺から出る汗のにおいが強い人は、汗のシミが黄ばむ傾向があります。自身のにおいを客観的に確かめるのはなかなか難しいですが、この方法では視覚的に確認できるので、一度試してみてはいかがでしょうか。

悩む人も一定数、自臭症とは

人から指摘されたことはなくても、自分の体臭が非常に気になったり不安を感じたりする、そのせいで日常生活にも支障があるといった人が一定数います。通常、周りの人が気付かないようなにおいや、まったくにおいがないに等しいのに、本人は、においを感じる、ある種の幻覚を知覚しているような状態、思い込みが強く出ている状態である場合は、自臭症(自己臭症)や強迫性障害など心理的な要因によることも考えられます。

医療機関では、問診や身体診察に加え、血液や尿、汗、皮膚の細菌などの検査を行い、さまざまな疾患の疑いがないことを確認したうえで、心理的な要因である可能性を考えます。ただ、前の項で解説したような実際に体臭が症状として現れる疾患と比べると、割合としてはごく少数です。においに関する不安があるからと自己判断せず、まずは内科などを受診して正確な原因を知ることがとても重要です。

適切なケアと治療のすすめ

「スメハラ(スメルハラスメント)」といった言葉が象徴するように、現代社会では、においに対して敏感になっている人は多いのかもしれません。ただ、においをどう感じ、受け止めるかは人によって千差万別です。そうしたなか、においについてどうしても気になり、悩んでしまうというのは、重要なサインです。悩みつつ、長年セルフケアで対処しているという人は、一度受診して相談してみてはいかがでしょうか。治療によって、においの改善の道筋がつくだけでなく、金銭的、時間的、精神的な負担から解放され、QOL(生活の質)の向上も期待できます。においの悩みの多くは、治療できるということをぜひ知っておいてください。

監修者プロフィール
高桑 康太先生(医療法人社団鉄結会 東京の粉瘤・ほくろ・できもの・赤ら顔・ワキガ治療 アイシークリニック治療責任者)

【高桑 康太(たかくわ こうた)先生プロフィール】

医療法人社団鉄結会 東京の粉瘤・ほくろ・できもの・赤ら顔・ワキガ治療 アイシークリニック治療責任者

2009年、東京大学医学部医学科卒。東京逓信病院、東京警察病院、東京大学医学部附属病院を経て、2019年よりアイシークリニック治療責任者を務める。主な専門分野は皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科など。ミラドライ認定医。皮膚腫瘍・皮膚外科手術30,000件以上、腋臭症治療2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療1,000件以上の臨床実績を有する。

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