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寝苦しさを撃退する10のポイント! 快眠のための寝具選びQ&A

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監修/水野一枝先生(和洋女子大学服飾造形学科 准教授)

暑くて寝苦しい夏が近づいています。快適に眠るためにはどうしたらよいのでしょうか。今回は寝具に注目して、心地よい睡眠にいざなう寝具の素材やパジャマの選び方などのアイデアをご紹介します。睡眠環境の専門家である和洋女子大学服飾造形学科 准教授の水野一枝先生に伺いました。

寝具選びのポイントは、熱を逃がし、通気性を確保すること

Q1夏の寝具選びで、最も重視したいことは何でしょうか?

A1 敷布団やマットレスなど、体の下に敷くものが大切です。

できるだけ通気性を確保し、保温性を下げることがポイントです。肌に密着しない硬めの素材のほうが涼しく感じます。逆に、寝たときに体が沈み込んでしまうような軟らかい素材や低反発素材は、体にまとわりついて暑く感じてしまう場合があります。

敷布団とマットレスを重ねて使用している場合は、一方を外して厚みを減らすと、熱が逃げやすくなります。マットレスの上に硬めのベッドパッドを敷くのも、涼しく感じやすくなる方法の一つです。

Q2夏用のシーツはどういった素材がよいでしょうか?

A2 ずっと肌に触れることになるシーツは、麻素材のものがお薦めです。

生地に張りがある麻素材は、肌触りは硬めですが、保温性が低く、通気性、吸水性がよく、速乾性もあるため、汗をかいても肌にまとわりつかず、暑さを和らげてくれます。洗濯にも強く丈夫なので、長く衛生的に使えます。

Q3「冷感」「涼感」をうたった寝具は、どの程度の効果が期待できますか?

A3 品質基準は、実は定められていません。

触ったときにひんやりとした触感が得られるとする「冷感」「涼感」には、「こういう素材を使って、何度以下にならなければならない」というような品質基準は定められていません。ひんやりとした感覚がどの程度持続するかは、素材によっても異なります。「冷感」「涼感」をうたう商品を使う場合は、表示を確認して、通気性、吸水性、透湿性の高い素材を選ぶとよいでしょう。

Q4夏でも掛け布団はあったほうがよいでしょうか?

A4 掛けるものを用意しておくと安心です。

掛け布団はいらないと思うような熱帯夜でも、明け方に気温が下がって肌寒さを感じることもあります。手の届くところにタオルケットや薄手の肌掛け布団などを用意しておくと安心です。

ただ、タオルケットに関する実験では、多くの人が寝ている間に自然と室温に応じた調整行動をとることが分かっています。暑いと感じたらタオルケットを蹴飛ばし、寒いと感じたら無意識にタオルケットを掛けているのです。涼しさという観点から考えれば、寝ている間に動かせないぶん、体の下に敷くもののほうが大切です。

枕やパジャマにも、夏だからこその役割が

Q5少しでも涼しさを感じられる枕の選び方について教えてください。

A5 硬めで通気性のあるタイプや冷却枕がよいでしょう。

夏の寝苦しさを緩和するという意味では、敷布団やマットレスと同様、頭が沈み込むような軟らかい枕や低反発枕は、まとわりついて暑いため避けたほうがいいでしょう。そば殻や細かいビーズが入っているような硬めで通気性のある枕が夏向きだといえます。

また、冷凍庫で冷やして使う冷却枕も効果的だと考えられます。冷却枕によって就寝時の汗の量が減るなどの効果が見られた研究もあります。ただ、使い方に工夫が必要です。冷えた枕に直接頭を乗せると、冷たさが刺激になり、かえって目が覚めてしまうこともあります。肌に直接触れないようにタオルを巻いて使用することで、適度な冷たさで心地良く眠ることができますし、枕が温まったときに水滴でシーツがぬれてしまうのを防ぐこともできます。

Q6寝るときにはパジャマを着たほうがよいのでしょうか?

A6 パジャマ着用をお勧めします。

パジャマは汗を吸い取ってくれるため、寝具の衛生面という観点でも着用したほうがよいでしょう。気温が下がってくる明け方の寝冷え防止にもなります。

ただし、寝冷えを心配するあまり何枚も着込むことはおすすめできません。特に子どもの場合は寝相が悪いことも多く、パジャマがはだけておなかが出ないようにと下着を多めに着せる親御さんもいるようですが、汗でぬれた服を着続けることによって体を冷やしてしまいます。寝ている子どもの頭や背中を確認して、ぐっしょりとぬれているようなら、冷える前に着替えさせると安心でしょう。

Q7パジャマの素材やデザインの選び方を教えてください。

A7 さらっとした生地で、適度なゆとりのあるデザインがよいでしょう。

汗をかいても肌にまとわりつきにくい、さらっとした風合いの生地が夏のパジャマに最適です。サッカー(しじら織り)、リップル、楊柳ちりめんなど、表面に凹凸のある生地がよいでしょう。

サッカー生地(写真は水野先生ご提供)

デザインは、首周り、袖口、裾などがゆったりと広がったもののほうが、風通しが良く涼しさを感じやすくなります。ただ、ロングTシャツなど筒状に長くなっているものは、寝ている間に裾がまくれ上がってしまうことがあるので、気になるなら上下の分かれたパジャマをお薦めします。サイズが大きすぎるとかえって体にまとわりついてしまうので、適度なゆとりのあるサイズのものを選びましょう。

環境を工夫して、夏場でも快眠を手に入れる

Q8寝る前の準備として、夏場に特に気をつけたいことは何でしょうか?

A8 水分補給です。

睡眠中は汗をかくので、体の水分が失われやすくなります。夏は失われる水分量が増えるので、熱中症や脱水症を予防するためにも、寝る前にコップ一杯程度の水分を補給しておくと安心です。特に高齢者はのどの渇きに気づきにくいことが多いため、注意が必要です。

Q9快眠効果のあるグッズとして、手軽に利用できるものはありますか?

A9 リラックスできて、眠りにつきやすくなる香りがあります。

夏に限ったものではありませんが、ヒノキ科やスギ科の樹木の香りに含まれる「セドロール」という成分は、身体をリラックスさせる鎮静作用があるといわれています。特に更年期の女性において、睡眠改善に効果が見られたという報告もあります。ヒノキチップの入った枕やアロマオイルなどで、寝室に香りをプラスしてみてはいかがでしょうか。

Q10夏の睡眠を快適にするための最大のポイントは何ですか?

A10 何よりも室温調整です。

室温が29℃を超えると、寝具やパジャマの工夫だけで寝苦しさを解消するのは難しくなります。エアコンなどで室温を下げることを第一に考え、そのうえで夏用の寝具やパジャマの工夫を取り入れるようにしてください。設定温度は28℃程度を目安にしましょう。

一晩中エアコンを使っても問題ありません。逆に、エアコンをつけたり消したりするほうが、眠りが浅くなって体を十分に休めることができません。どうしても抵抗がある場合は、タイマーを有効活用しましょう。入眠時から睡眠前半にかけてエアコンを使い、後半で切れるようにします。タイマーの設定時間は最低でも睡眠時間の半分が目安で、例えば、8時間寝るのであれば4時間以上を目処に設定しましょう。冷えすぎないよう、エアコンの風は体に直接当たらないように注意してください。

監修者プロフィール
水野一枝先生(和洋女子大学服飾造形学科 准教授)

【水野一枝(みずの かずえ)先生プロフィール】

和洋女子大学服飾造形学科 准教授
東邦大学医学部生理学第一講座、獨協医科大学第一生理学教室、産業技術総合研究所NEDOフェロー、東北福祉大学感性福祉研究所特任研究員を経て、現職。博士(医学)。被服衛生学、睡眠温熱環境、睡眠時の体温調節を専門とし、寝室の暑さや寒さ、寝具や寝衣と睡眠に関する研究を行っている。日本生理人類学会評議委員、日本睡眠学会評議委員。NHK『サラメシ』、NHK BS『美と若さの新常識 カラダのヒミツ』、 NHK『あさイチ』などメディア出演、著書多数。

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