頭痛・風邪・熱
群発頭痛の原因解明!生活習慣が引き金に
監修/飯ヶ谷 美峰先生(北里大学北里研究所病院 脳神経内科部長 病院長補佐(兼務))

頭痛にはさまざまなタイプがありますが、中でも周期的に激しい頭痛発作が起こり、仕事や生活に著しい影響を及ぼすのが群発頭痛です。群発頭痛に特徴的な発作の起こり方や症状、これまでの研究で分かりつつある誘発因子、予防と対策について北里大学北里研究所病院脳神経内科部長の飯ヶ谷美峰先生に伺いました。
概要・目次※クリックで移動できます。
群発頭痛とは何か
頭痛発作が群発することが名前の由来となっている群発頭痛。強い頭痛に加え、いくつものつらい症状がみられます。ここではその具体的な症状や、診断のためにどのような検査が必要になるのかをまとめました。
群発頭痛の特徴と症状
群発頭痛は三叉神経・自律神経性頭痛の一つで、片側の目の奥が激しく痛みます。発作の持続時間は15分~3時間で、群発期に入ると、だいたい決まった時間に、ほぼ毎日、1~2カ月にわたって頭痛が起こります。一度発症すると、以後は必ず同じ側にだけ痛みが生じるのも特徴です。
発作時は耐え難い強烈な痛みで、側頭部や下あご、歯などに広がることもあります。痛みで動けなくなるのが片頭痛だとすると、あまりの痛みでじっとしていられないのが群発頭痛です。
また、痛む側の目や鼻の症状を伴うケースも多くみられます。目の症状は涙や充血、まぶたのむくみ、眼瞼下垂、瞳孔の縮小などがあり、鼻の症状としては鼻水、鼻づまりなどがあります。
群発頭痛は20~30代に多くみられ、約85%は男性とされていましたが、最近の調査では性差が縮まってきており、女性の群発頭痛もまれではなくなりつつあります※1。ただ、片頭痛や緊張型頭痛を持つ人が相当数いるのに比べ、群発頭痛を発症する人自体は非常に少ないため、群発頭痛の認知度は低い傾向にあります。
※1:日本頭痛学会「群発頭痛」(https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_04.html別ウィンドウで開きます)を2025年1月6日に参照
群発頭痛の発症メカニズム
群発頭痛の原因やかかりやすい年齢、性差がなぜみられるのか、完全には明らかになっていませんが、ほぼ毎日、ほぼ同時刻に生じるという発作のパターンから脳の視床下部にある体内時計が、何らかの理由で乱れることで自律神経のバランスに影響を与えていると考えられています。
複数の研究で視床下部にさまざまな変化が認められたことから、視床下部が群発頭痛の発生元である可能性が指摘されています。また、群発期には痛みに関わる神経である三叉神経と三叉神経の血管系が活発化していることも明らかとなっています。
このように、群発頭痛の発症には血管系と神経系の複雑な相互作用が関与していると考えられていますが、未解明な部分も多いのが実情です。
群発頭痛の診断と検査
群発頭痛の診断には、特徴的な症状や発作パターンの詳細な聞き取り(問診)が重要になります。「国際頭痛分類第3版」では、片側の激しい頭痛発作が15~180分間持続し、発作頻度は1回/2日~8回/日であること、それに加えて前述のような目や鼻の症状を伴うことが診断の基準とされています※2。
必要に応じて脳のMRIやCT検査、血液検査などを行い、脳腫瘍や髄膜炎、くも膜下出血、脳卒中といった器質的疾患による二次性頭痛ではないと除外診断した後に、一次性頭痛を鑑別し、群発頭痛が診断されます。
※2:日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳「国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版」(https://www.jhsnet.net/kokusai_2019/1-3.pdf別ウィンドウで開きます)を2025年1月6日に参照
群発頭痛の原因と引き金
群発頭痛の発症にはどのような原因が考えられるのでしょうか。これまでの研究から明らかになりつつあるポイントについて解説します。
遺伝的要因と家族歴
群発頭痛の原因は、遺伝的要因が関与している可能性があると考えられています。海外研究を基にした統計分析によると、群発頭痛患者さんの中で家族内発症例の頻度は6.27%という数値が示されています※3。ただし、具体的にどの遺伝子が群発頭痛の原因か、もしくは発症リスクを高める遺伝子かは解明されていません。
※3:日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修「頭痛の診療ガイドライン2021」(https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf別ウィンドウで開きます)を2025年1月6日に参照
発作が起こる主な要因
過度の飲酒や喫煙習慣が発症の誘発因子および増悪因子となることが、複数の研究で明らかになっています※3。
また、群発期に発作の引き金となる要因として、飲酒が挙げられます。
ホルモンバランスの乱れ
群発頭痛の発症には、何らかのホルモン環境が関与しているという考え方もあります。例えば、群発頭痛は夜間から明け方の時間帯に起こりやすく、サーカディアンリズム(体温やホルモン分泌など身体の基本的な機能が約24時間周期で変化すること。概日リズムとも言う)に関係するメラトニンの関与が指摘されています。
群発期の対策
群発頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛と比べて患者さんの数は少ないものの、発作時のQOL(生活の質)低下や経済的損失は大きな問題になっています。
群発頭痛の予後
群発頭痛は年齢とともに軽快する傾向があり、発作間隔が延長し、発作頻度も減少して60歳以降は生じなくなることが多いとされます。しかしながら一部の人は慢性化することがあり、慢性群発頭痛に移行することがあります。
飲酒や喫煙が群発頭痛の発症に深く関与していることは前に述べた通りです。特に発作が起こった時には痛みがさらに増すリスクが高まるので、一切口にしないようにしましょう。
群発頭痛への適切な対処法
群発頭痛は市販の鎮痛薬はほぼ無効であり、改善は期待できません。また、群発頭痛に対する心理療法やサプリメント摂取などの非薬物療法は、残念ながら有効ではありません。
群発頭痛の発作が起きたら、できるだけ速やかに頭痛の専門医を受診し、適切な治療を受けましょう。医療機関では、発作時の群発頭痛の治療として、トリプタン製剤の皮下注射(1日6mgまで、保険適用)や高濃度酸素の酸素吸入(フェイスマスクで7Lの流量で15分間吸入、保険適用)を使用します※3。自宅で酸素吸入ができるように2018年から在宅酸素療法も保険適用となっています。また、群発期には予防療法が必須となります。群発発作はほとんど毎日、繰り返し起こり、1回の急性期治療薬だけでは十分な治療が困難だからです。
専門医への相談と支援団体
群発頭痛は、頭痛とともに歯の痛みや、眼、鼻の症状があることから、歯科や耳鼻咽喉科を受診することがありますが、的確な診断や治療を受けるためには、頭痛専門医のいる頭痛外来や脳神経内科、脳外科を受診しましょう。日本頭痛学会Webサイトの認定頭痛専門医一覧(https://www.jhsnet.net/ichiran.html別ウィンドウで開きます)も参考になります。専門医の視点から症状や生活習慣を詳しく聞き取り、適切な治療方針を提案してくれます。
可能であれば、頭痛ダイアリーや頭痛記録アプリなどを利用して、症状や生活習慣を記録してみましょう。自分の日常生活を客観的に振り返って改善点を見つけるきっかけになり、受診の際には医師とのコミュニケーションにも大いに役立ちます。ぜひ信頼できる専門医と協力して、適切な治療を受け、つらい痛みの軽減に役立ててください。
監修者プロフィール
飯ヶ谷 美峰先生(北里大学北里研究所病院 脳神経内科部長 病院長補佐(兼務))
【飯ヶ谷美峰(いいがや みほ)先生プロフィール】
北里大学北里研究所病院 脳神経内科部長 病院長補佐(兼務)
1993年北里大学医学部卒業。小田原市立病院神経内科、北里大学病院神経内科などを経て、2006年より北里大学医学部神経内科学講師。2007年より北里研究所病院神経内科、2016年より脳神経内科部長。2021年より現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本神経学会神経内科専門医・指導医・代議員、日本頭痛学会専門医・代議員、日本脳卒中学会専門医、日本医師会認定産業医。頭痛の生活支障度票MIDAS日本語版の開発、頭痛記録アプリ「頭痛Click®」の開発などを行い、頭痛の診療および研究に長年従事している。