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頭痛・風邪・熱

熱が出たら要チェック!風邪とインフルエンザの見分け方

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監修/市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)

人は体内にウイルスや細菌が侵入してきたり、けがをして皮膚や細胞組織が傷ついたり、さまざまな異変を感知すると、脳の中枢から体温を上昇(発熱)させる指令が出ます。これは病原体から体を守るために必要な防御反応です。発熱のメカニズムと、発熱の原因によって異なる対処法について、「東京みみ・はな・のどサージクリニック」名誉院長の市村恵一先生に伺いました。

発熱のメカニズムと風邪・インフルエンザの関係

体内に病原体が侵入したときに起こる発熱は、その病原体と戦っていることを示すサインですが、体内で何が起こっているのでしょうか。また、発熱を伴うことの多い風邪とインフルエンザにおける特徴や違いについて説明します。

発熱は体の防御反応である

細菌やウイルスに感染すると、そうした異物を排除しようと免疫細胞が活性化し、その結果さまざまな炎症反応が起こります。この炎症反応は、のどの痛みや鼻づまり、くしゃみといった局所的な症状として現れるほか、炎症物質が血流を通じて全身に広がることで発熱がみられます。免疫系の反応としての発熱は、ウイルスや細菌の感染に対する防御反応であり、体が病原体と戦っている証拠でもあります。ただ、高熱は体に負担をかけるため、適切な対処が必要です。

風邪とインフルエンザによる発熱の違い

ウイルスによる気道の炎症を総称して「風邪」と言います。この中で特にインフルエンザウイルスによる感染症を「インフルエンザ」と呼び、他の風邪と別に扱われます。コロナウイルス感染症も風邪のタイプとして分類されます。風邪とインフルエンザはいずれも発熱を伴いますが、特徴が異なります。風邪のときは37〜38度程度で、微熱から徐々に上昇し、数日で解熱するパターンが一般的です。一方、インフルエンザでは急激に38度以上となります。

このような発熱の特徴によって、自身で風邪かインフルエンザかを見極めることができるケースがあるかもしれませんが、個人差もあり、周囲にインフルエンザやコロナウイルス感染症が流行っている場合は医療機関で検査を受けるほうが確実でしょう。特に、高い熱が数日続く場合は早めの受診をおすすめします。

風邪とインフルエンザの症状の違い(発熱以外)

風邪は、のどの痛みや鼻水、くしゃみ、咳などの上気道症状が多くみられ、全身症状としては比較的軽いケースがほとんどです。

インフルエンザは、急激な高熱に加えて関節痛や筋肉痛、強い倦怠感などの全身症状が現れるケースが多いです。加えて、症状の急激な悪化や肺炎などの合併症リスクが高いため、抵抗力の弱い子どもや高齢者、免疫力の低下している方は特に注意が必要です。

発熱時の正しい対処法

発熱は体が病原体と戦っているサインとお伝えしましたが、熱が高い状態は体に大きな負担をかけています。適切な安静の方法や早期回復につながる対処法について説明します。

発熱時の体温管理と水分・栄養補給の重要性

発熱時には体温管理が重要になります。熱が高い場合、額や首筋に冷却シートや濡れタオルを当てて冷やすのは有効な方法です。また、熱の上がり始めは、体温が上昇しているにもかかわらず寒気を感じることがあります。その時は布団や着衣で体を温め、汗をかきましょう。汗が出ると、次第に体温が下がっていきます。状態に応じてこまめに調節してください。

発熱時は入浴を迷う人もいるでしょう。倦怠感や頭痛、関節や筋肉の痛みといった全身症状が強い場合は入浴を避け、入浴が可能であればぬるめの湯に浸かりましょう。汗をかくと体内の熱を逃がすことができ、体の痛みを和らげる効果も期待できます。ただし、発熱時は脱水症状になりやすいので、入浴前後には必ず水分補給を行ってください。

発熱による発汗では水分が失われるだけでなく、のどの痛みや鼻づまりなどの症状も加わって食欲が低下し、栄養バランスが崩れることもあります。こまめな水分補給や消化の良い食事を心がけましょう。通常の水分補給はお茶や水で十分ですが、下痢や嘔吐があり脱水症状が強く出ている場合には経口補水液を使いましょう。

発熱時の安静と活動レベルの調整

高熱時は、安静が何より大切です。熱が下がってきたら、体を適度に動かして少しずつ元の生活リズムに戻しましょう。熱が下がった直後は体力を消耗して疲れやすくなっているので、無理は禁物です。体力の回復度合いを見極めながら、自身のペースで安静と適度な活動をうまく組み合わせて過ごしましょう。

市販薬を使ったセルフケアの方法と注意点

市販の風邪薬は、総合感冒薬として発熱、頭痛、鼻水などさまざまな症状を全般的に和らげるのに役立ちます。使用時は用法・用量を守ることが大切です。普段から継続して服用している薬がある場合は、薬局の薬剤師に相談して飲み合わせによる副作用のリスクがないか確認しましょう。

市販薬で症状が改善しない場合は、医療機関を受診して症状に合った薬を処方してもらいましょう。セルフケアも大切ですが、症状に応じて適切に医療機関を利用することが早期回復につながります。

発熱が続く場合の対応

安静や解熱薬でも熱がなかなか下がらない場合には、風邪やインフルエンザとは異なる疾患の可能性も考慮する必要があり、注意しないといけません。どのくらいの体温および期間が目安となるのかを説明します。

発熱が続く場合に受診すべき目安となる体温と期間

38度以上の発熱が継続して3〜4日以上続いている、あるいは41度を超える場合は医療機関の受診をおすすめします。平熱よりもやや高い微熱が5日以上続く場合も注意が必要な目安と考えられます。乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方は、上記よりも早めに受診するほうがよいかもしれません。発熱は、全身のどこかに炎症もしくは別の病気が生じているサインです。「熱が出ているだけ」と軽く考えず、適切なタイミングで医療機関を受診しましょう。

風邪以外の病気による発熱の可能性と症状

発熱を引き起こす病気はさまざまなものがあり、風邪やインフルエンザのほか、上気道以外の感染、たとえば肺炎、腎盂腎炎なども考えられます。これらの病気では、発熱のほかに咳、呼吸困難、腰痛などの症状が現れることがあります。また微熱が長期間続く場合は、膠原病(こうげんびょう)やがんの可能性もあります。はじめは風邪と思っていても、その後の経過によっては別の病気と分かる可能性もあるため、体調変化を見逃さないようにすることが大事です。

子どもの発熱への対処法と注意点

体が小さく、抵抗力の弱い子どもの場合、発熱への対処において大人と異なる注意すべきポイントがいくつかあります。

子どもの発熱の特徴と注意すべき症状

特に乳幼児は体温調節機能が未発達なため、ウイルスや細菌に感染した場合、大人以上に炎症反応が激しく、急激に体温が上昇することがあります。言葉で説明できない年齢の子どもは、全身が明らかに熱い、機嫌が悪い、ぐったりしているなど、状態からの判断が必要になるので、普段と違う、または気になる様子を見逃さないようにしましょう。

子どもの発熱時の対処法と注意点

人は、体温が41.8度を超えると細胞内のタンパク質が変性しはじめ、臓器が機能不全に陥る危険性があります。42度になるときわめて危険ですので、すみやかに医療機関を受診しましょう。発熱のほか、発疹や意識レベルの低下(けいれんを伴うことも多い)、呼吸が速いといった症状がないか、全身の状態を注意深くチェックしてください。

子どもの発熱で特に注意すべきなのは髄膜炎(ずいまくえん)です。ウイルスや細菌によって感染し、脳に問題を引き起こす可能性があります。乳児の場合は、ぐずりや不機嫌、嘔吐、発疹、けいれんといった症状がみられます。幼児や小児は、多くの場合が風邪から始まり、頭痛や頸の痛みといった症状が現れます。

子どもの症状は変化しやすいので、注意すべき兆候を見落とさないことが何より大事です。不安に思うことがあれば、ためらわずに医療機関に相談しましょう。

監修者プロフィール
市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)

【市村恵一(いちむら けいいち)先生プロフィール】

東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授
1973年、東京大学医学部医学科卒業。同大学医学部附属病院耳鼻咽喉科、浜松医科大学耳鼻咽喉科を経て、1982年より米アトランタ市エモリー大学留学。帰国後、東京都立府中病院耳鼻咽喉科医長、東京大学医学部耳鼻咽喉科講師その後助教授、自治医科大学耳鼻咽喉科学教授、石橋総合病院院長などを経て、2019年より現職。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医、補聴器適合判定医(厚生労働省)。小児耳鼻咽喉科学会初代理事長。オスラー病鼻出血治療の第一人者。現在は主に補聴診療を担当。

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