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病気と医療の知って得する豆知識

認知症と似た病気

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「最近、物忘れがひどくなった」「家族が突然、取り乱すようになった」など、つい認知症を疑ってしまう症状があります。しかし、認知症と似ているものの違う病気ということも。 認知症と似た病気について、品川駅前メンタルクリニック院長の有馬秀晃先生に伺いました。

原因と症状

認知症とうつ病の物忘れの違い

認知症と似た病気としてまずあげられるのが、うつ病です。もの忘れはうつ病でもあらわれますが、認知症の記憶障害とは異なります。うつ病の物忘れは、記銘力(新たな事柄を覚えること)の低下です。たとえば、新聞を読んでもなかなか頭に入らず、時間をかけて読んだのに内容を覚えていなかったり、仕事で打ち合わせをしたのに聞いたことが頭に入らず、結局覚えていなかったりします。一方、認知症の場合は既知の事柄の記憶そのものが抜け落ちてしまいます。例えば、朝食で何を食べたかを思い出せないだけではなく、食事をとったこと自体を全く覚えていません。
うつ病の原因はさまざまですが、ストレスが誘因となることは少なくありません。ストレスの中でも、うつ病の引き金になりやすいのが、大切な人やものを失う喪失感、環境の変化、人間関係のトラブル、健康面や経済的な不安などです。ストレスを感じると、落ち込んだりイライラしたりしますが、集中力も低下し、もの忘れを起こすことがあります。真面目で几帳面、責任感が強い人ほど、ストレスを感じやすく、うつ病になるリスクが高いといえます。

認知症と見分けが難しいせん妄

せん妄も認知症と間違われやすいといえます。せん妄とは、主に高齢者に見られる意識障害の一種です。症状としては、意識が曖昧な状態で興奮したり、怒ったりして不穏な様子になります。実際にないものが見えたりすることもあります。高齢者の場合、たとえば入院などで生活環境が突然変わった際にせん妄状態になることがあります。症状は急に出現して日内変動も大きいですが、あくまでも一時的なものです。認知症では、こうした症状は緩徐に出現して持続的で徐々に悪化しますが、ただのせん妄の場合は数日以内に改善し、また、元の生活に戻ればそのような意識障害は通常起きません。ただ、認知症の周辺症状としてせん妄が併存していることもよくあり、見分けるには専門医の診断をあおぐのが賢明です。
認知症ではないただのせん妄症状は、突然の環境の変化が誘因となることが多いです。一般に、高齢者は環境の変化への適応力が下がるため、現実検討力が低下し、脳が一時的に混乱しやすくなります。また、飲んでいる薬の組み合わせによってはせん妄が誘発されることもあります。

ただの物忘れなら自覚できる

病気ではありませんが、正常範囲の物忘れも、認知症と間違われることがあります。年齢を重ねていけば、誰でも記憶力は低下します。たとえば、人の名前がなかなか出てこなかったり、物を置いた場所がわからなくなったりするなどです。でも、こうした物忘れはほとんどが後で言われれば「そうだった、忘れてた」と思い出しますし、忘れたことの自覚も普通はあります。一方、認知症による記憶障害は物事を忘れていることの自覚さえなく、人から指摘されると取り繕うような答え方をします。さらに、財布の場所がわからないといったときに、「隣の人が勝手に入ってきて盗んだに違いない」などと訴えることもあります。忘れていたことを自覚できているかどうかは、ただの物忘れと認知症を区別する大きなポイントです。

治療法とセルフケア

うつ病はカウンセリングも必要

記銘力障害などを伴ううつ病の治療は、薬物療法とカウンセリングが基本です。うつ病の背景には脳科学的な病理がありますので、それを治すには抗うつ薬などで脳神経を修復する必要があります。個人差はありますが、1〜2週間で効果があらわれてきます。さらに、うつ病には「必要以上に悲観的になる」「白か黒かでしか考えられなくなる」などの心理的病理も伴うため、カウンセリングによってこうした認知の歪みを修正する必要もあります。カウンセリングは臨床心理士や公認心理師などの専門家にしてもらうべきでしょう。

複数の趣味でストレスを発散

また、うつ病のセルフケアは、気晴らしと適度な運動が大切です。ストレスを溜め込まないためには、趣味などの気晴らしで発散します。趣味も一つだけでなく、体を使うことと、頭を使うこと、一人でやることと、誰かと一緒にやることなど、バリエーションがあるのが理想です。たとえば、テニスやゴルフ、ジョギングなどの有酸素運動と読書、おしゃべり、食べ歩きなど、興味のある趣味を組み合わせて楽しむといいでしょう。

せん妄は家族も一緒に対応を

前述のように高齢者は環境の変化への適応力が下がるため、一時的なせん妄症状を起こしやすいです。根本的な対策はありませんが、生活環境の変化が予想されるときは本人と家族が「高齢で適応力が下がっているので、意識が不穏になるリスクがある」と認識しておくべきでしょう。また、一般に高齢者は持病などで複数の薬を服用していることが多いため、薬剤によるせん妄の誘発は常に頭に入れておき、かかりつけ医にきちんと相談するのがよいでしょう。

物忘れはあまり気にしない

物忘れ対策には、メモが役立ちます。重要なことはすぐにメモをとる習慣をつければ、物忘れを減らすことができます。予定などは書き込み欄のあるカレンダーや、手帳にすぐ書くようにします。また、年をとれば、誰でも忘れっぽくなるので、ただの物忘れであれば必要以上に心配して気に病まないことも大切です。

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