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病気と医療の知って得する豆知識

大人の喘息

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喘息は子供の病気だと思っていませんか? 実は子供だけでなく、大人の喘息も少なくありません。大人の喘息にはどんな特徴があるのでしょうか。その原因や対策について、東邦大学医学部教授で吸器内科学が専門の松瀬厚人先生に伺いました。

原因と症状

小児喘息と大人の喘息がある

喘息は大きく2つに分けられます。ひとつは概ね15歳までに発症する小児喘息、もうひとつは成人してから症状が現れる大人の喘息です。さらに大人の喘息は小児喘息が治りきらず、大人になってから再発するタイプと、中高年以降、新たに喘息を発症するタイプに分かれます。喘息というと子供の病気だと思われがちですが、成人してから発症する大人の喘息も決して少なくないのです。

喘息の原因は気道の炎症

小児も大人も、喘息の原因は気道の炎症です。気道とは、鼻から肺に至るまでの空気の通り道のことを指します。この気道の粘膜が刺激に弱く、常に炎症があることが、喘息の根本的な原因です。
気道に炎症があると、健常者にとっては何の問題もないことでも激しく反応し、発作などを起こしてしまいます。たとえば、冷たい空気や特定の匂いといったものに反応し、発作が起きることもあります。発作がないときでも、気道は常に炎症を起こしているため、気道の内部がむくみ、痰が増えるなどの症状が現れます。

非アレルギー性のものが多い

喘息には、アレルギー性と非アレルギー性のものがあります。小児喘息のほとんどは、ダニや花粉などのアレルゲン(アレルギーを引き起こすもの)がきっかけとなって気道に炎症が起こるアレルギー性です。一方、大人の喘息はアレルゲンが特定できない非アレルギー性のものが多く見られます。これはアレルゲンがあっても特定できないのか、それとも特定のアレルゲンがないのか、明確には判断できません。そのため大人の喘息の場合、ストレスを感じたときに発作が出るなど、どんな状況で症状が出るのか、普段から自分を観察することが大事です。

いろんなものが引き金となる

花粉やハウスダストなどのアレルゲン以外でも、喘息の発症のきっかけになるものはたくさんあります。もっとも注意したいのは気道の炎症を引き起こす風邪やインフルエンザなどの感染症です。気道の粘膜を刺激する喫煙や大気汚染、冷たい空気に急激に触れるなどの気温の変化、ストレス、香水や化粧品の成分なども大敵となります。また、肥満は気道を圧迫し、脂肪細胞が炎症物質を産生するので、太り過ぎは改善すべきです。

呼吸困難が代表的な症状

小児・大人を問わず、喘息の発作で見られる代表的な症状は呼吸困難です。炎症によって気道が狭くなっているため、十分な呼吸ができません。この呼吸困難に伴って現れやすいのが、息がゼイゼイする喘鳴(ぜいめい)です。特徴としては、喉や胸から「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」という音がします。子供は気道が狭いので喘息以外の病気でも喘鳴が起こりますが、大人の場合は喘鳴があれば、喘息である可能性は非常に高いといえます。また激しい咳や痰も出ます。風邪の咳と間違えやすいのですが、数週間も続くようであれば、喘息を疑ってください。

治療法とセルフケア

吸入ステロイド薬が第一選択薬

治療では、重症度に合わせて薬を決めていきます。第一選択薬となるのは、発作を予防する吸入ステロイド薬です。個人差や症状にもよりますが、8割以上の方が吸入ステロイド薬で症状は緩和します。吸入後、しっかりとうがいをすれば口内炎などの副作用の心配はほぼありません。また、薬剤耐性によって効き目が落ちにくい薬です。吸入ステロイド薬で効果が見られなかった場合は気管支を拡張する薬や、ステロイドの内服薬を使います。それでも芳しくなければ、手術療法で気道を広くして空気の通りをよくします。

気道への刺激を防ぐ

セルフケアでは、気道を刺激しないことがポイントです。気道を刺激する原因となる花粉、ハウスダスト、ダニ、ペットの毛などに注意する必要があります。マメに掃除をして室内を清潔に保つようにしてください。風邪やインフルエンザは喘息の大敵なので、予防接種を受けることはもちろん、花粉の時期同様、外出する際はマスクを着用し、帰宅したら手洗いとうがいを励行します。喘息に限ったことではありませんが、喫煙は百害あって一利なし、です。喘息の症状があるなら、禁煙外来に通うなどして禁煙しましょう。また、ストレスもなるべく軽減する努力をしてください。

苦しいときは救急車を

喘息は発作がひどければ、最悪の場合、死に至る病気です。中には発作がひどくても我慢する方がいますが、それでは命を落としかねません。苦しいと感じたときは迷わず、救急車を呼んでください。また、主治医とのコミュニケーションも欠かさないことです。大人の喘息は完治が難しく、長く付き合い、上手にコントロールしていく病気です。困ったことや、疑問に思うことがあれば、主治医に気軽に相談しましょう。

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