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その「ゲップ」、病気のサイン?生活の中で気をつけたいこと

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監修/藤原 靖弘先生(大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学教授)

ゲップは胃や食道の空気が排出される生理的な現象で、それ自体は問題ありません。しかし、何らかの病気の症状として頻繁にゲップが起こることもあります。最近は、うつや睡眠障害との関連も指摘されています。ゲップの予防法や対処法について、大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学教授の藤原靖弘先生に伺いました。

「ゲップ」はなぜ起こる?

ゲップは、胃や食道の空気が口の方へ逆流する現象です。一般的には、食事と一緒に飲み込んだ空気が溜まったときや、炭酸飲料を飲んだ後などにゲップが出やすくなります。飲み込んだ空気が胃に溜まると、胃の上部(胃底部)が広がり、胃と食道の間をつなぐ下部食道括約筋が開いて、空気が胃から食道に上がります。上がってきた空気によって食道が膨れて上部食道括約筋も開き、ゲップとして排出されるというメカニズムです。

<胃から出るゲップのメカニズム>

胃から出るゲップのメカニズム

また、20年ほど前から、食道から出るゲップもあることがわかってきました。横隔膜が変則的に動くことで、下部食道括約筋が閉じたまま上部食道括約筋が開き、食道に空気が入ります。この空気は胃には入らず、そのまま食道からゲップとして出されます。

<食道から出るゲップのメカニズム>

食道から出るゲップのメカニズム

近年、専門的な研究を行う大学病院などでは、食道の内圧測定や電気抵抗の波形をモニタリングする検査などで、ゲップの回数やパターンを調べられるようになっています。健康な人であっても、どちらのパターンのゲップも起こり得ますが、何らかの精神疾患が背景にある場合、食道から頻回にゲップが出る現象が多く見られるようです。

頻繁なゲップは病気のサインかも?

頻繁なゲップは病気のサインかも?

ゲップは誰にでも生じる生理的現象ですが、多く出る場合には病気の可能性も考えられます。代表的なのは、機能性ディスペプシアと逆流性食道炎です。

機能性ディスペプシアは、検査をしても炎症や潰瘍などの異常がないにもかかわらず、胃の働きが低下することによって胃痛や胃もたれ、腹部膨満感などの症状を起こす病気です。ゲップも症状の一つとしてよく見られ、ゲップが多い人ほど、この病気の頻度も高くなるという相関が見られます。

逆流性食道炎は、文字通り胃の内容物が逆流することで、食道に炎症が起こる病気です。空気が逆流してゲップが出やすくなりますが、ゲップが出てもゲップだと自覚しない人もいます。このとき胃液も一緒に逆流することから、胃酸によって食道の炎症が起きやすくなり、胸焼けなどの症状も起こるためです。

うつや睡眠障害、ストレスとゲップの関係

うつや睡眠障害、ストレスとゲップの関係

さらに、最近の疫学調査では、ゲップの多い人は不安やうつ、睡眠障害のレベルも高いことが明らかになりました。原因はわかっていませんが、機能性ディスペプシアや逆流性食道炎を含む機能性消化管疾患を持つ人は、外部からの刺激に過敏になって不安やうつを併発するケースが多いことが知られています。こうした疾患では、脳と消化管が相互に関連し、影響しあっていることも知られており、これも背景の一つと推測されます。

また、熟睡しているときにゲップは起こりませんので、中途覚醒するような睡眠の浅い人がゲップをすることによって中途覚醒してしまう、というような悪循環に陥っている可能性があります。

なお、無意識のうちに大量の空気を飲み込み、それがゲップや腹部膨満感などの不快感として現れる「空気嚥下症(呑気症:どんきしょう)」という病気もあります。胃や食道の病気ではなく、緊張や不安などの精神的ストレスが影響して空気を飲み込んでいる場合が多いようです。

煩わしいと感じたら消化器内科へ

煩わしいと感じたら消化器内科へ

ゲップは誰にでも起こる生理現象ですから、どのくらい出るようになったら医療機関を受診すべきかという判断は難しいものです。医学的には、1日14回以上のゲップが病的なものと定義されていますが、これにとらわれず、会話中にもゲップが出る、頻繁にゲップが出て外食できないなど、生活の質に影響があり、煩わしいと感じたら消化器内科を受診しましょう。

機能性ディスペプシアや逆流性食道炎と診断された場合は、胃酸を抑える薬や胃の動きを促す薬、漢方薬など症状に合わせた薬物治療を行います。食道からのゲップが多い場合は、薬物治療ではなかなかゲップが減らないケースも見受けられますが、腹式呼吸(息を吸ったときにお腹が膨らみ、吐いたときに凹む呼吸法)の訓練を行うことで改善することがあります。

日常生活でゲップが気になる場合は、ゆっくりよく噛んで食事をすることを心がけましょう。早食いだと飲み込む空気の量が多くなりがちで、ゲップが出やすくなります。炭酸飲料も控えめにするとよいでしょう。空気が溜まっているときに前かがみの姿勢で腹圧がかかると、空気が逆流しやすくなる可能性がありますので、よい姿勢を保つことも一つの方法です。

また、日常的に舌の先を上の歯の裏側あたりに当てて、噛みしめないようにすると、ゲップが出にくくなります。ただし、病気が関連している場合を除けば、ゲップは体の生理的な反応です。状況にもよりますが、過度に気にしたり我慢したりするよりも、「出せるときに出す」と考える方が、精神的ストレスも少なく、体も楽に過ごせるでしょう。

監修者プロフィール
藤原靖弘(ふじわら やすひろ)先生(大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学教授)

【藤原靖弘(ふじわら やすひろ)先生プロフィール】

大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学教授
1988年大阪市立大学医学部卒業、同第三内科入局(小林絢三先生教室)。1991年大阪市立大学大学院(荒川哲男先生に師事)、1992年カリフォルニア大学アーヴァイン校留学(Tarnawski教授に師事)後、2016年に大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学教授。2022年大阪府立大学との統合により、大阪公立大学に大学名変更。

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