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手軽に効果!運動・ボディケア

働き世代も要注意、骨盤底筋を鍛えて尿もれを解消!

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監修/半田 瞳先生(理学療法士・保健医療学博士、TRIGGER所属)

くしゃみをしたときなど、ふとした瞬間に思いがけず起きてしまう尿もれ。また女性の場合は、妊娠・出産も骨盤底筋が弱くなる一因にもなっています。人には相談しにくいため、一人で悩みを抱えているケースが少なくないようです。そんな尿もれの予防・改善に深く関わるのが骨盤底筋です。どのような働きを持つ筋肉なのか、骨盤底筋を鍛えるトレーニング方法などについて、理学療法士で保健医療学博士の半田瞳先生に伺いました。

骨盤底筋と尿もれの関係は

骨盤底筋と尿もれの関係は

骨盤底筋とは、骨盤の下部(底)に位置する筋肉の総称です。複数の筋肉の集合体であることから「骨盤底筋群」とも呼ばれています。

骨盤底筋は、体幹(胴体)を底支えする“縁の下の力持ち”のような役割を担うもので、主に次のような働きがあります。

  • 恥骨や尾骨、仙骨などの骨を支える
  • 骨盤内の膀胱や直腸、子宮などを正しい位置に保つ
  • 尿道を締めて、尿もれを防ぐ

■男女別骨盤底筋群の周りの構造

男女別骨盤底筋群の周りの構造

※半田先生の取材を基に作図

骨盤底筋の筋力が弱くなると、尿道を締める力が低下します。そこに咳やくしゃみ、重い物を持ち上げるなどの動作で腹部に力が入ると、腹圧性尿失禁と呼ばれる尿もれの原因となります。

加齢に伴い、全身の筋力は低下していきますが、もちろん骨盤底筋も例外ではありません。男女共に骨盤底筋の筋力が弱くなり、腹圧のコントロールがうまくいかなくなるため、尿もれが生じやすくなります。

特に、膀胱と直腸という2つの臓器を支えている男性の骨盤底筋に比べて、膀胱、直腸、子宮という3つの臓器を支えている女性の骨盤底筋は筋力が衰えやすい傾向にあります。また、尿道の長さも、男性は一般的に16~20cmくらいありますが、女性は約3~4cm程度です。女性の尿道は男性よりも短く、しかも直線的であるため、体の構造的にも腹圧がかかると尿道が緩みやすく、尿もれにつながりやすいと考えられます※1

※1 大森正志. 尿道のはたらきと尿道の疾患. 泌尿器ケア Volume 13, Issue 4, 366 – 372 (2008)

女性の場合、妊娠・出産も骨盤底筋の力が弱くなる要因となります。妊娠中は赤ちゃんの重みが骨盤底筋にかかり続け、経腟分娩で出産する場合は骨盤の限界まで筋肉が引き伸ばされるなど、大きな負担がかかるためです。

一方、男女問わず、日常的に重い物を持ち上げる動作が多い場合も骨盤底筋に負担がかかりやすくなります。力仕事の多い職業や、介護職、保育士などの方に、尿もれの悩みを持つケースが少なからず見受けられます。

「呼吸」が骨盤底筋強化のカギ

「呼吸」が骨盤底筋強化のカギ

尿もれを防ぐためには、骨盤底筋の筋力を強くし、腹圧をうまくコントロールできるようになることが大切です。そこでポイントとなるのが「呼吸」です。なぜなら、骨盤底筋は代表的な呼吸筋の1つである横隔膜と連動して働いているからです。

※参考:Sabina Tim, Agnieszka I Mazur-Bialy. The Most Common Functional Disorders and Factors Affecting Female Pelvic Floor. Life, 2021; 11:1397

息を吸うと横隔膜が収縮して位置が下がり、腹腔内の臓器が押し出されておなかがふくらみます。それに伴い、骨盤底筋も押し出されて位置が下がります。逆に、息を吐くと横隔膜が拡張して位置が上がり、骨盤底筋も一緒に上がります。呼吸が浅く、横隔膜をうまく動かすことができていないと、骨盤底筋の動きも悪くなり、筋力が低下する要因となります。

自分がうまく横隔膜を使えているかどうかは、次の方法でチェックできます。

1 両手を肋骨の脇に当て、鼻からゆっくり息を吸う。肋骨が左右に広がるかどうかをチェック。

2 1の状態のまま、口からゆっくり息を吐く。1で広がった肋骨が縮まるかどうかをチェック。

1で肋骨が左右に広がるなら、横隔膜が下がっているサイン、2で肋骨が縮まるなら、肋骨が上がっているサインです。ただし、このときに肩も一緒に上下している場合、横隔膜をうまく動かせていない可能性があるので注意しましょう。

このチェック法は、横隔膜の動きを良くして、骨盤底筋を強化する呼吸法でもあります。
毎日の生活の中で意識的に行うことがおすすめです。

骨盤底筋をまず「緩める」

骨盤底筋をまず「緩める」

骨盤底筋を鍛えるためには、筋肉を「緩める」「締める」という2つのトレーニングが重要です。筋トレというと「締める」ことに意識が向きやすくなりますが、緩めることができないと締めることもできません。また、骨盤底筋の場合は緩むことで排尿や排便が起こるので、そういった点でも筋肉の柔軟性を高めておくことが大切です。

骨盤底筋を緩めるためには、前述の呼吸法がやはり大事です。深い腹式呼吸は、いわば体の内側で行う骨盤底筋のストレッチです。特に骨盤底筋を緩ませるためには、息をしっかり吸うことを心がけましょう。

呼吸は1分間に10回程度を目安に、ゆっくり行います。5秒かけて吸って、5秒かけて吐く。あるいは4秒かけて吸って6秒かけて吐く、といったことを目安にするのもよいでしょう。

また、次のエクササイズも骨盤底筋を緩める効果が期待できます。

  1. 1  両手と両ひざを床について、四つんばいの姿勢になる。足は、ひざの間をこぶし一つ分開ける。
  2. 2  ゆっくり息を吸いながら、お尻を後ろに引く。坐骨の間が広がるのを感じながら行う。

骨盤底筋を「締める」

骨盤底筋を「締める」

呼吸法は骨盤底筋を「締める」上でも重要です。立った状態でも座った状態でも、しっかり息を吐きながら排尿をガマンするときのようにお尻の穴を締めましょう。この際に息を吸いながらお尻の穴を締めようとする人も見られますが、そうすると腹圧が下にかかり、骨盤底筋を締めにくくなります。「締める」トレーニングでは息を吐きながら行うことを忘れないようにしましょう。なお、女性の場合は膣や尿道、肛門など、どの部分でも自分が締めやすい、あるいは締めるイメージを持ちやすいところでOKです。

男性の場合は陰茎を引き上げる、亀頭をおなかの中に引き込むようなイメージで行うと骨盤底筋を締めやすいといわれています。

なお、骨盤底筋を締めるトレーニングを行っているときに、お尻全体がムキッと硬くなったり、おなかに力が入ったりするようでは、効果が得にくくなります。骨盤底筋以外はどこにも余計な力が入っていない状態がベストです。感覚がつかめるようになるまで、椅子の上などに両足をのせて行うとよいでしょう。そうするとおなか、お尻、足の力が抜けるため、骨盤底筋だけに力を入れやすくなります。その際に、おなかに手を当てて、呼吸を意識しながら行うのもおすすめです。

骨盤底筋を正しく動かすことができているか確認するためには、肛門の前あたりを下着の上から指で触れながら、締めたり緩めたりするのが効果的です。締めたときに指が下着から離れ、緩めたときに指が戻ってくる感覚があれば、正しく動かせているサインです。

骨盤底筋を鍛えると姿勢も良くなる

骨盤底筋を鍛えると姿勢も良くなる

骨盤底筋の衰えは、尿もれだけでなく、女性の場合は骨盤内にある子宮や膀胱が下がり膣から出てくる骨盤臓器脱といった病気や、筋肉の過度の緊張による性交痛などを引き起こす要因となります。

男性の場合はED(勃起不全・勃起障害)などの性機能障害のリスクがあるほか、男女共に腰痛や便秘などを招く場合もあります。

骨盤底筋を鍛えると、こうしたさまざまな病気や不調の予防につながるのはもちろん、インナーユニット(体幹の核となる筋肉)が強化され、体幹が安定して姿勢が良くなるという効果も期待できます。さらに、女性の場合はウエストが細くなる可能性もあります。

なお、骨盤底筋の筋力をつけるためには、一般的に2カ月程度の期間を要する場合があります。就寝前や運動の前後など、普段の生活の中に骨盤底筋トレーニングを組み込んで、無理なく続けていきましょう。

監修者プロフィール
半田 瞳先生(理学療法士・保健医療学博士、TRIGGER所属)

【半田瞳(はんだ ひとみ)先生プロフィール】

理学療法⼠・保健医療学博士
筋膜マニピュレーション認定スペシャリスト。骨盤底筋ヨガトレーニング指導者。高崎健康福祉大学保健医療学部理学療法学科講師。株式会社TRIGGER所属 筋膜調整セラピスト(非常勤)。三枝産婦人科医院 産前・産後のボディケアセラピスト(非常勤)。高崎健康福祉大学スケート部 科学サポートスタッフ。骨盤底筋の機能と尿失禁に関する専門家として、多くの研究論文を発表。「中高年女性における腹圧性尿失禁症状とインナーユニット機能との関係性」では、世界で初めて、骨盤底筋群の機能から尿失禁のリスクを割り出す基準値を導き出した。尿失禁解消トレーニング「きゅきゅっと体操®」を考案し、尿失禁ケアセラピストの養成も行う。

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