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ウイルスって何だろう? 正しく知って感染症予防

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監修/忽那賢志先生(国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室 医長)

新型コロナウイルス感染症による影響で生活が一変しました。一人ひとりが感染拡大防止に取り組んでいくにあたり、そもそもウイルスとは何かといった基本情報を正しく知っておくことが、日々の予防対策に役立ちます。ウイルスの性質や混同されやすい細菌・真菌との違いなど、この機会に知っておきたい基礎知識について、国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室 医長の忽那賢志先生に伺いました。

ウイルス、細菌、真菌の違い

感染症を引き起こす主な病原微生物は、ウイルス、細菌、真菌(カビ)です。ウイルスと細菌・真菌には、大きく2つの違いがあります。

1 大きさ

ウイルスも細菌も真菌も非常に小さい微生物ですが、細菌や真菌は光学顕微鏡で見ることができるのに対し、ウイルスはさらに小さく、光学顕微鏡を使っても見えません。ウイルスを観察するには電子顕微鏡などの特殊な装置が必要になります。

■ウイルス・細菌・真菌の大きさのイメージ図

ウイルス:0.5μm未満 細菌:0.5~10μm未満 真菌:3~40μm未満

2 構造

ウイルスは「遺伝子とタンパク質の殻」という単純な構造の粒子です。一方、細菌や真菌は細胞で、細胞壁や細胞膜などの構造を持っています。細菌や真菌は自分で細胞分裂をして増えていくことができますが、ウイルスは単独では増えることができません。ヒトや動物など(宿主)の細胞に入り込み、機能を流用することで増殖していきます。

■主な病原微生物の特徴と感染症

主な病原微生物の特徴と感染症

ウイルスや細菌はどうやって体内に入ってくるのか

感染症は、ウイルスや細菌などの病原体が体内に入ることで生じます。病原体が体内に入ってくる経路を感染経路といい、主に接触(経口)感染、飛沫感染、空気感染などがあります。他に血液や蚊などを介した感染もあり、病原体の種類によっては複数の感染経路をとるものもあります。

接触(経口)感染

病原体が付いた手で鼻や口を触ったり、病原体の付いた食品を食べたりして、病原体が体内に入ることによって起こります。例えば、ノロウイルスや大腸菌は、汚染された食品や感染している人の汚物などを介して感染します。

飛沫感染

感染している人が咳やくしゃみ、会話をする際に、病原体が含まれた唾液が飛び散り(飛沫)、それを吸い込むことで感染が起こります。新型コロナウイルスは接触感染のほか、飛沫感染しますので、飛沫が届く範囲で感染するおそれがあります。

空気感染

空気中に浮遊する病原体を吸い込むことで起こります。麻疹ウイルスや結核菌などの場合は、感染している人の飛沫から水分が蒸発して乾燥した後も、感染性を保ったまま空気中を漂います。感染力が強く、ワクチンを打っていない集団で流行し始めると一気に広がってしまいます。新型コロナウイルスも、換気の悪い環境下ではエアロゾルという空気中に漂う微細な粒子となり、空気感染のような振る舞いをすることがあります。

感染経路を踏まえた予防策をとろう

日常生活で感染症を予防するには、感染経路に応じた対策をとることが重要になります。

■主な感染経路と対策

多くの感染症の予防に共通して役立つのは手洗いです。アルコール消毒も一部の病原微生物には有効ですが、流水で15秒以上かけて手洗いを行えば、手に付いたウイルスや細菌を物理的に洗い流すことができます。日頃からこまめな手洗いを心がけることが、さまざまな感染症のリスクを減らすことにつながります。

感染した場合の治療には適切な薬が必要

感染症の治療は、基本的にはウイルスには抗ウイルス薬、細菌には抗菌薬(抗生物質)、真菌には抗真菌薬を用い、個々のウイルスや菌の特性に応じた適切な薬を使用します。

例えば、風邪はウイルス感染ですから、抗生物質は効きません。効かないばかりか、抗生物質の乱用は薬の効かない菌(薬剤耐性菌)が増殖しやすい環境の助長につながりかねないので、適正使用に留めることが大切です。

また、抗ウイルス薬は一部のウイルスに対応したものしかありません。例えば、麻疹や風疹を治すための抗ウイルス薬はないため、発症した場合は、解熱剤など、症状に応じた薬を使って対症療法を行います。ワクチンがある感染症の場合は、医師に相談の上、あらかじめワクチンを接種して予防することが大切です。

「コロナ対策」も基本が大切

新型コロナウイルス感染症はまだわかっていないことが多数あります。発症する2日前の無症状の時期から感染性があり、会話でも咳で発生する飛沫に含まれるのと大きく変わらない量のウイルスを吐き出す、とする報告もあります。こまめに手を洗う、屋内では症状がなくてもマスクをつける、換気を行い3密を避けるといった基本の対策を丁寧に行いましょう。ただし、日本小児科医会は2020年5月25日に「2歳未満の子どもにはマスクは不要、むしろ窒息や熱中症のリスクが高まり、危険」との声明を発表しています。高齢者も、熱中症のリスクに十分注意してください。

感染症は自分だけの問題で終わるものではなく、相手に感染させる、広がるという特徴があります。噂や不確かな情報に振り回されることなく、基本的な対策を継続しましょう。なお、新型コロナウイルスに関する最新の情報は、厚生労働省のページで確認することをお勧めします。

監修者プロフィール
監修/忽那賢志先生(国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室 医長)

【忽那賢志(くつな さとし)先生プロフィール】

国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室 医長
感染症専門医。2004年に山口大学医学部を卒業し、2012年より国立国際医療研究センター 国際感染症センターに勤務。感染症全般を専門とするが、特に新興再興感染症、輸入感染症の診療に従事し、水際対策の最前線で診療にあたっている。

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