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特集(季節のテーマ)

夏が来る前に知っておきたい食中毒対策

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監修/小西良子先生(日本食品衛生学会 副会長)

気温や湿度が高くなってくると、心配なのが食中毒です。家庭内では、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。日常生活の中で心がけたい食中毒予防について、(公社)日本食品衛生学会 副会長の小西良子先生にお話を伺いました。

気温が上がる5月以降は要注意

食中毒は、有害な微生物(細菌やウイルス)に起因する健康被害です。食品や飲料を介して有害物質が体内に入ると、腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状が現れます。

食中毒の原因は、大きく分けると、次の4つです。

  • 細菌
  • ウイルス
  • 寄生虫
  • 自然毒(毒キノコなど)

中でも、暑くなる季節に気をつけたいのは細菌です。細菌性食中毒は1年を通じて発生しますが、特に食中毒を引き起こす細菌は30~40℃で最も増えやすくなります。

食中毒を引き起こす代表的な細菌には、次のようなものがあります。

■食中毒の原因となる代表的な細菌(厚生労働省食中毒統計資料より抜粋)

カンピロバクター

カンピロバクター
主な生息場所:ほとんどの動物の腸管
特に注意したい食材:食肉全般、特に鶏肉

黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌
主な生息場所:人や動物
特に注意したい食材:(調理する人の手から感染)

病原性大腸菌(O-157)

病原性大腸菌(O-157)
主な生息場所:牛などの家畜の腸管
特に注意したい食材:牛レバー

サルモネラ菌

サルモネラ菌
主な生息場所:自然界に広く生息
特に注意したい食材:生肉、特に鶏肉と卵

ウェルシュ菌

ウェルシュ菌
主な生息場所:動物の腸管、土、下水
特に注意したい食材:煮込み料理、煮付け

セレウス菌

セレウス菌
主な生息場所:土壌など自然界に広く生息
特に注意したい食材:米や小麦などの穀類

特に注意したい細菌と食材。
「加熱しても死なない」「冷蔵庫でも増える」細菌がいる

食中毒を引き起こす細菌は、それぞれ特徴が異なり、感染源となる食材もさまざまです。先述の細菌を含め、特に気をつけたい細菌と食材は次の通りです。

①カンピロバクター
近年、細菌性食中毒の中で最も発生件数が多いのが、カンピロバクターによる食中毒です。カンピロバクターは、鶏や牛などの家畜動物やペットなどの腸管内に生息している細菌です。食肉全般に付着していますが、中でも鶏肉に多くみられます。

カンピロバクターによる食中毒の症状は、下痢や嘔吐など、一般的な食中毒の症状です。また、カンピロバクター感染から数週間後に、ギラン・バレー症候群という末梢神経疾患を発症することがあります。手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などが生じる疾患で、食中毒の症状が軽かった場合でも発症する可能性があります。

カンピロバクターは乾燥に弱く、75℃で1分以上加熱処理すれば死滅するため、食材の中心部までしっかり火を通してから食べることが大切です。刺身やたたきなど、火が十分に通っていない状態の肉は避けましょう。

②ウェルシュ菌・セレウス菌
加熱処理しても死滅しない細菌もいます。ウェルシュ菌やセレウス菌は、60℃以上の環境下では増殖できませんが、芽胞と呼ばれる硬い殻に閉じこもって休眠し、生き延びています。100℃の高温で加熱調理しても、芽胞で守られているため菌は死滅しません。

芽胞に守られた休眠状態の菌は、体内に入っても休眠状態のまま排出されるため、調理後すぐに食べてしまえば害はありません。しかし、ウェルシュ菌やセレウス菌は50℃以下になると増殖しやすくなるため、調理後に室温で放置しておくと、時間の経過とともに料理が冷めて、菌が増えやすい温度になってしまいます。すると、芽胞に守られていた菌は瞬く間に増殖し、食中毒の原因となるのです。

ウェルシュ菌はカレーなどの煮込み料理、セレウス菌はチャーハンやパスタなどの米・小麦料理で注意が必要です。料理を鍋に入れたまま放置しないようにしましょう。作り置きしたいときには、小分けにして冷蔵庫に入れるなど、できるだけ速やかに冷やすようにすると、菌の繁殖を防ぐことができます。

③リステリア菌
冷蔵庫に入れても増える菌があります。リステリア菌は冷蔵庫の中(4℃以下の低温)でも生存・増殖するため、加熱せずにそのまま食べる食品には注意が必要です。妊娠中に感染すると、お腹の赤ちゃんにも影響が出てしまう可能性があります。

特に気をつけたいのは、加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、スモークサーモン、生ハムなどです。リステリア菌による食中毒の事例は、国内では今のところ多くはありませんが、欧米では集団食中毒も発生しています。リステリア菌は加熱すれば死滅するため、十分に加熱してから食べることでリステリア菌による食中毒を防げます。

食中毒予防の三原則を守ろう

家庭で発生する食中毒は、食品の取り扱いの不注意から起こることがほとんどです。食中毒を予防するために、「付けない」「増やさない」「やっつける」という三原則を守りましょう。

①付けない(菌を他の食品に付着させない)

まず、食材を取り扱う前と後に、手指をしっかりと洗いましょう。手のひら、手の甲、指、爪、手首まで石けんを泡立てて洗い、流水で十分に洗い流すことが大切です。

また、肉や魚は、ポリ袋やラップでしっかり包んで冷蔵庫で保存しましょう。冷蔵庫の中で他の食材に触れたり、汁が漏れて他の食材を汚染したりすると、食中毒の原因になってしまいます。

キッチン用品にも気をつけましょう。例えば、まな板の上で肉を切った後、しっかり洗わずに生で食べる野菜を切ってしまうと、肉に付着した菌が野菜についてしまいます。野菜を切ってから肉を切るなど調理の順番を考えたり、生で食べる食品用と肉・魚用でまな板を分けるのも良い方法です。また、保存用ポリ袋やラップ等の再利用も避けましょう。

②増やさない(菌が増殖する環境に置かない)

冷蔵品や冷凍食品は、すぐに冷蔵庫・冷凍庫に入れましょう。また、冷蔵室に食品を詰め込みすぎると温度が高くなってしまいます。冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下に保ちましょう。

ただし、冷蔵庫に入れておいても細菌が死滅するわけではありません。長期間にわたる保存は避け、早めに使いきるようにしましょう。

③やっつける(殺菌・消毒して死滅させる)

多くの細菌は、75℃以上で1分以上加熱することで死滅します。そのため、十分に加熱調理すれば、大抵の食中毒は防ぐことができます。食材の中心部までしっかり火を通すようにしましょう。

そして、使用後の調理器具の殺菌には、塩素系漂白剤などに含まれる次亜塩素酸ナトリウムが有効です。ただし、食品カスなどが残っていると消毒力は途端に失われますので、調理器具を洗剤などでよく洗った後に使いましょう。

万一、食中毒が疑われる症状が出てしまったら、市販薬を自己判断で飲まずに病院を受診しましょう。下手に市販薬を飲むと重症化する場合もあります。下痢や嘔吐がある場合は、水分(経口補水液)を取ることも大切です。水を飲んでもすぐ吐いてしまう場合は、口を湿らせる程度で少量ずつ水分を取るとよいでしょう。

食中毒に関する情報は、厚生労働省食品安全委員会にも掲載されています。食中毒予防の三原則を守って、暑い季節にも安全においしく食事を楽しみましょう。

実はノロウイルスは冬だけでなく、乾燥した環境であれば夏でも発生することがあります。ノロウイルスの場合は「持ち込まない」「付けない」「やっつける」「拡げない」という四原則となります。ノロウイルスは食品中では増えませんが、汚物の処理などをおろそかにすると拡がって、人から人への感染が起こります。アルコールでは感染力を抑えることができませんので、消毒には次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤など)を使うようにしましょう。

監修者プロフィール
監修/小西良子先生(日本食品衛生学会 副会長)

【小西良子(こにしよしこ)先生プロフィール】

麻布獣医科大学獣医学部獣医学科卒業後、東京大学大学院農学系研究科で農学博士を取得。その後27年間にわたり、厚生労働省の国立予防衛生研究所、国立感染症研究所および国立医薬品食品衛生研究所で、食品衛生法に関する規格基準策定の科学的根拠に資する研究を行う。2013年4月~2020年3月、麻布大学 生命・環境科学部 食品生命科学科 食品安全科学研究室 教授。2020年4月より東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 教授、日本食品衛生学会 副会長、(株)イカリ環境事業グループ顧問を務めている。

サワイ健康推進課公式Twitter

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