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頭痛・風邪・熱

風邪予防に効果的!室内環境と免疫力アップの方法

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監修/市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)

冬場だけでなく、いまや季節を問わず通年で気を付けたいのが風邪です。症状を引き起こすウイルスは数多くありますが、日ごろから免疫力を高め、さまざまな病原体に打ち勝つ強い身体づくりを心がけることが、風邪予防の基本です。風邪を寄せ付けない室内環境の整え方、免疫力アップのために日ごろから実践したい生活習慣について「東京みみ・はな・のどサージクリニック」名誉院長の市村恵一先生に伺いました。

風邪予防に効果的な室内環境づくり

呼吸器症状を引き起こすウイルスや細菌の多くは口もしくは鼻から侵入します。また、風邪やインフルエンザなどのウイルスは、乾燥した低温の環境を好みます。そのため、湿度と温度を管理し、室内環境を整えることが重要です。

適切な室内温度と湿度の維持

室内の湿度は、感染症対策として40%以上に保つことが推奨されています※1。冬場は、太平洋側は降水量が少なく、空気が乾燥し、エアコンや電気ストーブ、オイルヒーターなどの暖房器具を使うことで室内の湿度もさらに低くなります。一方、日本海側は雪により外気の湿度は高くなります。室内は暖房を効かせますが、石油ストーブがほかの暖房器具と比べてもパワフルなうえ、電気を使用しないなどの理由から、寒い地域での暖房器具の主流となっています。灯油やガスを燃やすと水が生じ、水蒸気の状態で空気中に放出されます。室温が上がると同時に空気中の水蒸気量もどんどん上がりますので、一定の湿度が保たれ、加湿器をつけているのと同じ状態になり、部屋の中が乾燥しにくいのです。

湿度が低い場合は、加湿器や濡れタオルを使用して室内の湿度を適切に保つことをおすすめします。床暖房やパネルヒーターは、エアコンやファンヒーターなどの温風が出る暖房に比べて空気が乾燥しにくいので、これらの活用もおすすめです。

冬場だけでなく、夏場の冷房を効かせた室内も湿度が低くなりがちです。近年は猛暑続きで、夏場も窓を閉め切り、冷房を長時間つける機会も多いことでしょう。そうした場合も、冬場と同様に室内の湿度を保つ対策をしたり、こまめに換気や水分補給をしたりして、乾燥を防ぐことが大切です。

※1:厚生労働省「寒冷な場面における感染防止対策の徹底等について 」(https://www.mhlw.go.jp/content/000695178.pdf別ウィンドウで開きます)を2025年1月15日に参照

換気の重要性と効果的な方法

風邪予防には部屋の換気を行うことも重要です。窓やドアを開けたり、サーキュレーターなどを使用して空気を循環させることで、室内に新鮮な空気を取り込むことができます。

換気は、ただ空気を循環させるだけでは不十分で、外から新鮮な空気を取り入れ、室内のよどんだ空気を追い出すことが重要です。部屋の構造にもよりますが、できれば2カ所以上の窓を開けて空気の流れをつくると、より換気効果が高まるとされています※2

※2:厚生労働省「感染拡大防止のための効果的な換気について」(https://www.mhlw.go.jp/content/001020788.pdf別ウィンドウで開きます)を2024年12月2日に参照

清潔な環境維持とウイルス対策

風邪の感染経路として、汚染されたドアノブや手すりを介して広がる間接接触感染があります。ウイルスの付着した手で口、鼻、目を触ることで病原体が体内に侵入します。そのため、日ごろからこまめな掃除や消毒が大切です。

ドアノブやスイッチ、リモコンなど複数の人が触れる場所は、アルコールスプレーや除菌シートなどで拭き取ることも効果的です。家庭内に風邪をひいた人がいる場合は、手洗いなどのタオルを共用しないことも大事です。

室内環境を整える際に、加湿器や空気清浄機を活用する場合は、こまめに洗浄やほこりの除去を行い、機器そのものを清潔にしておくことも忘れないように心がけましょう。

免疫力アップのための生活習慣

風邪をひかないためには、バリアー機能(免疫力)によっていかにウイルス感染を阻止できるかがポイントです。健康な身体は規則正しい生活習慣によってつくられます。睡眠不足や偏った食生活は風邪を長引かせ、時に悪化の原因にもなるので注意が必要です。

バランスの取れた規則正しい食生活が免疫力アップの基本

免疫力アップの基本は、栄養面で偏りのないバランスの取れた食生活です。忙しい時でも食事を抜いたりせず、3食を決めた時間に摂るようにしましょう。献立やメニュー選びの際には、できれば1日の食事の中で5大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)をバランスよく食べることも心がけましょう。胃腸を整えるヨーグルトや納豆などの発酵食品や、食物繊維を日ごろから摂ることもおすすめです。

習慣として取り入れたいのが、こまめな水分補給です。水分補給には、のどの粘膜を潤す目的と、唾液腺を刺激し唾液の分泌を促す目的があります。唾液は口の中の乾燥を防ぐのに重要な役割を担っています。出汁などのうまみ成分を多く含む食品によって唾液の分泌が促進されるのでおすすめです。昆布茶や出汁の効いた味噌汁などは、少量であっても唾液の分泌が促され、のどの粘膜を潤します。

十分な睡眠と規則正しい生活リズム

質の良い睡眠も大切です。身体を休めることで疲れが取れ、体力が回復するのはもちろんですが、十分な睡眠は免疫力を増強させることも、さまざまな研究で明らかになっています。

適度な温度や湿度を保った寝室で、自身が一番リラックスして眠れる環境を整えてみましょう。生活リズムの基礎となる睡眠は、ライフステージや人によって最適な時間はさまざまです。大切なのは、一度決めたらできるだけ同じ時間に寝起きするよう努めることです。

適度な運動とストレス管理

日ごろからの運動習慣も、病気への抵抗力向上につながるだけでなく、筋力の維持など身体基盤を整えるうえで有効です。ウォーキングや軽いジョギングで身体を適度に動かすと血行が良くなり、体温が上がって免疫機能の向上も期待できます。

ストレスや疲労は免疫力を低下させ、それによって細菌やウイルスの体内への侵入を許し、炎症を起こしやすくなります。自分なりのストレス解消法を見つけ、心身の健康を保つ工夫も大事です。何か没頭できる趣味の時間を持つことも良いでしょう。深呼吸やヨガ、瞑想などのリラクゼーションは、ストレスの解消や緊張状態の緩和に有用な面もあります。短時間でも良いのでセルフケアに取り入れてみてはいかがでしょうか。

風邪予防、ひき始めのセルフケア

風邪の予防やひき始めには、食事からの栄養補給と心身の休養がポイントになります。

ビタミンとミネラルを食事でしっかり摂る

風邪予防という観点から積極的に摂りたいのは、ビタミンや亜鉛などのミネラルです。これらは免疫機能を正常に保ち、身体の抵抗力を高めるのに役立ちます。こうした栄養素を、できればサプリメントではなく、食事として摂ることをおすすめします。毎日の食生活の中で、さまざまな栄養素をバランスよく摂り、その習慣を積み重ねることが大切です。

風邪予防に効果的な生薬

生薬とは天然に存在する薬効を持つ産物を、そこから有効成分を精製することなく、体質の改善を目的として用いる薬のことです。

風邪予防やひき始めのセルフケアに、生薬としても有用な食品を活用することもおすすめです。プロポリスやハチミツなどの天然成分は、のどを潤すのに効果的で、風邪ののどの痛みに対するセルフメディケーションにも使われています。生姜やシソ、ニンニクも日ごろから手軽に使える食品で、生薬としても用いられます。生姜は抗炎症作用、シソには殺菌作用、ニンニクには血行促進や疲労回復の作用があるといわれています。

風邪予防のために、特別な対策をする必要はありません。食事や睡眠の質を高めると共に、基礎体力を維持する適度な運動習慣と、疲れやストレスをためないことが「風邪知らず」の健康な毎日につながるのです。

監修者プロフィール
市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)

【市村恵一(いちむら けいいち)先生プロフィール】

東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授
1973年、東京大学医学部医学科卒業。同大学医学部附属病院耳鼻咽喉科、浜松医科大学耳鼻咽喉科を経て、1982年より米アトランタ市エモリー大学留学。帰国後、東京都立府中病院耳鼻咽喉科医長、東京大学医学部耳鼻咽喉科講師その後助教授、自治医科大学耳鼻咽喉科学教授、副学長、石橋総合病院院長などを経て、2019年より現職。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医、補聴器適合判定医(厚生労働省)。小児耳鼻咽喉科学会初代理事長。オスラー病鼻出血治療の第一人者。現在は主に補聴診療を担当。

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